『HYBRID LINK 』SUIKEN×S-WORD | すっぴんマスター

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■『HYBRID LINK』SUIKEN×S-WORD


2005年夏にリリースされた、スイケン×スウォードというニトロ男前チームの、1stアルバム。同時期にMACKA-CHINとDABOによる「MABO」のアルバムも出ているから、比べるとおもしろいかも。


このコンビネーションはニトロを除いてもじつははじめてではなく、2002年発売のMUROによる『KING OF DIGGIN' presents...Sweeeet Baaad A*s Encounter』の「W STEAL」でも聴くことができます。他のニトロのメンバー同様、どぎつい男臭さはまちがいなくあるのだけど、加えて野性的なセクシーさとスタイリッシュなゴージャス感が、このふたりは強い。ブラット・ピットの、清潔とは言い難い、粗野な魅力に近いかな。ニトロのおもしろいところって、やっぱり八人がそれぞれ、まったく、全然かぶってない、八面体であることだとおもうのだけど、こっちの、セクシャルな男臭さについて、このふたりに負うぶぶんはかなり大きい。たとえば、サウンドの底に沈む、いたるところに砂が混じったようなファンクネスがGORE-TEXのものなら、いかにも多面体的な柔軟さとインテリジェンスはDABOのものだし、攻撃的な若さがBIG-Zのものなら、DELIのフロウはこれらに適度なヒップホップ的違和感を与えるものだろう。ほんとう、つくづく
、奇跡みたいな集まりだとおもう。



「MABO」みたいに特にユニット名がないのは、新しく組んだチームとかいうわけではないから、みたいなことを発売時になにかのインタビューで読んだ気がする。そういうことなら、これを1stと呼ぶのは微妙に意味がちがってきて、仮に新しいアルバムが完成したとしても、2ndということにはならないのかもしれないな。いずれにせよ、これ一枚で大満足みたいなところはたしかにある。つまり、すばらしい出来だとおもう。いちおう「STREET SIDE」と「PARTY SIDE」に分かれた二枚組なのだけど、内容は一枚にまとめられる程度の長さで、どっちかがインタビューで「CDを入れ替えるのもまた楽しみでしょ」みたいなことを言っていたように記憶しています。もちろんこれには意味があり、そのまま、「STREET SIDE」はMUROやDJ VIBLAM、D.Lといった黒めトラックでいかにもヒップホップらしくきめてきて、「PARTY SIDE」ではTINAやHi-D、MABO、FIREBALLといったミュージシャンを参加させ
たり、藤原ヒロシ(!)を入れてきたり、多角的に観察できる作品に仕上げているが、通して聴いた感じ、いろんなミュージシャンを呼んでいろいろなものをつくっているというよりは、むしろ主役のふたりを他ミュージシャンが味つけをするというふうで、このふたりの存在感の強さというものが再確認できる。


「STREET SIDE」③はDABOをフィーチャーした「TRIPLE THREAT‐三獣SHIT‐」。この三人による「さんじゅうし」というコンセプトは、ニトロ1stの「3 ON TREE(三銃SH*T)」にも通じるものですね。DABOの豊かなライミングがおそろしくタイト…。トラックはDJ VIBLAMですが、このひとのギターやベースといった弦楽器のつかいかたが個人的にはツボ。

④「RADIO SHOW!」にはBUTCHERとREILIが参加していますが、これ、最初はゲストを入れるつもりはなかったそうです(うろ覚え)。たまたまスタジオにいただけなんだそう。

⑨「TO ALL MY PEOPLE」は非常にメッセージ性の強い曲。明らかにリリックを聴かせにきていて、スイケンもかなり丁寧に発音しています。意識的に仕掛けられたYAKKOの深みのある壮大なトラックも見事。


「PARTY SIDE」も通して楽しく仕上がっています。ゲストありの曲はどれもすばらしいし、②「LET'S GET PARTY」はふたりのゴージャス力、パフォーマーとしての強さがよく出ているし、⑤「SUSW ONE」のプリミティブな感じなんか、ニトロのアルバムの中盤っぽいとおもう。いまにも他のメンバーの声が聞こえてきそう。