『RELORD』GORE-TEX
インタビュアー:ベタな質問ですけど、自分のことを「ハードコア」なMCだと思います?
DELI:「うーん、難しいなー。あんま考えたことないですね。自分の奥のものを出してるのがハードコアだと思うし。ただ、売れないモノがハードコアっていうのは違うんじゃないかなって思うけど。そういう聞き方されることあるから。あ、ゴメン。『ハードコア』はゴア・テックス!!ゴア・テックスはねー、ホント真似しないほうが良いよっていうくらい真似出来ないから。ああいうMCがもっと増えてほしいね、タイプ的にって意味で。あいつはほんとレアですね。見たことない!」
これはDELIが『DELTA EXPRESS LIKE ILLUSION』を発表したときの、blast誌インタビュー記事からの引用です。
(本論からはずれるけど、こんなひとことからもDELIのプロ意識の高さがよくわかる。アメブロやってるDJ OASISさんなんかも、記事からはまず彼じしんの音楽についての自覚が伝わってくる。だからこそ、僕らは好みを超えて彼らの表現を共有できる)
人間的にも表現者を目指す者としてもリスペクトしているDELIが言ってるからって、それを錦の御旗にするつもりはないけど、言い得て妙、だと思います。この記事を読んだころ、「チル」とか「バイブス」の意味も知らないような、ヒップホップ初心者もいいところだった僕はいたく納得したものです。なるほど…ハードコアか…ってね。
ゴアテックスakaNICE G 13akaトラは、デリ同様ニトロの一員です。さんピン・キャンプにも参加してたんだっけ?「カラフルなフロウの八宝菜(byDABO)」、八人八色のニトロのなかでも、ゴアの「黒すぎる存在感」は際立つものがある。ビートを無視したような、しかし抜群のリズム感なしでは再現すら不可能な流動的にして堅固なフロウ。脈絡に欠けた、いっけん不条理な言葉の並びが作用しあって生み出す、彼の「世界の見えかた」。ひとことで音空間を掌握し、ゴア色=黒にしてしまう独特の声質。どれをとっても、文字通り他にないものだし、また真似するのが危険なくらいどぎついものです。
最初に聴いたのは、これもやはりムロのアルバムだったんだけど…どんな感想だったかな?なんか変なやついるなーぐらいだったかもしれない。だけど、ヒップホップが好きな人間なら誰でもわかることだし、いまさらとりあげて語ることでもないのだけど、この「変」具合こそが、まさに中毒性を呼ぶ。これに気付いちゃうと、もうダメ。やめられなくなる。「なんなのこのひと?!」という感想に含まれる「?!」が、ハートマークに変わってしまう。いや、変な意味じゃなくて。
このソロアルバム…ちょっとできすぎじゃないかって次回作が心配になるくらい、完璧。以前、はじめからおしまいまで通して聞かせるアルバムって案外少ない、みたいに勝手なことを書いたけど、これはそういう作品。一曲も、というか一音もムダがないです。いや、音楽的整合性っていう意味では、たぶんムダはいっぱいある。だけどゴアの音楽は最初からそんなもの求めてません。ラップ聴けばわかります。むしろそういう「律」みたいなものからはみ出たり足りなかったりするもろもろが、ごっちゃになって肉体的に迫ってくる。そしてこのような感触は、まさにファンクの原感覚。
なにしろトラックがいい。ムロやDJ VIBLAM、マッカチンなど、ゴアの深い理解者である彼らはもちろん、スペシャル・ゲストのLARGE PROFESSORも熱い…、ってごめんなさい。日本語ラップで手いっぱいな僕は、まだまだあっちのDJよく知りません。NASやA TRIBE CALLED QUESTのプロデュースなんかやってるひとだそうです。
ゲストMCも豪華。テンプテーションズをネタにしたマッカチンによる「DIVE VIBE NICE GUYZ」には、他にないっていう意味でゴアとタイプに近いものがあるK-BOMBとBUTCHERが参加。スピード感あふれるVIBLAMの真っ黒トラックに乗るたKASHI DA HANDSOME、LUNCH TIME SPEAX参加の「BROTHERS ON THE RUN」。ニトロ全員参加の「BLACK LIST」。生ける伝説、マイクロフォン・ペイジャーの「MIRROR BALL 2004」などなど。どれもこれも、なにかすべてが砂まみれにあるようなゴアのファンクネスがよく引き出された、すばらしいものです。
おしまいのチル・ソング、「SKYPIA」もいい。禁欲的な単語の積み重ね、言葉じたいが、連想から次の言葉を生み出していく感じが、すばらしく心地よい。フックあたりでトラックとラップが優しく混ざりあうのも…うーん、体の底から、ちからがわいてくる。これだよこれ。
