『Full House 』Wes Montgomery | すっぴんマスター

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『Full House』Wes Montgomery 1962年 バークレー、ツボにてライブ録音
Full House


最近、安室奈美恵の新作とこれしか聴いてない気がする。買ったのは半年くらい前かな…。ジャズに関していえばいちばん最近手に入れたものなんですが、たぶんそれだけじゃない。


ウエス・モンゴメリーというギタリストは、僕にとってチック・コリアと同じくらいつきあいの長いミュージシャンで、勘のいい人はわかるとおもうけど、島田荘司『異邦の騎士』で効果的なBGMとしてつかわれていたあの「エアジン」の演奏者です。あのアルバム、『インクレディブル・ジャズ・ギター』を買ったのはたしか生涯三枚目だったから、たぶん小学六年生くらいか。それからウエスの作品を集めてまわったというわけではないのだけど、やはりいまとは音楽に対する態度がちがったあのころ、呼吸もまばたきも鼓動も忘れて聞き込んだ彼のギターの音色はからだに染み付いていて、音楽性云々、テクニック云々をいう以前に、僕にとっては久しぶりに電話ごしに聞く高校時代の親友の声みたいに、たまらなく懐かしいものなのです。

とはいっても、どうでもいいようなミュージシャンならいくら背景に事情があってもこんな気分にはさせないもので、いま聴いてもやっぱりウエスの演奏はすばらしい。オクターブ奏法やコード奏法というような技術面も含め、ピックをつかわない彼の音色は非常な温かみを孕んでいて、なにより聴き心地がいい。スコア1「フル・ハウス」…。渋い…、しぶすぎるっ!テーマ部にあるジョニー・グリフィンとの、シンプルで大人っぽいユニゾンが、おそろしくダンディ。これ聴くとものすごいタバコ吸いたくなる(笑)

そして、これはもうあちこちで言われてることだろうけど、全体がとてもライブ録音とは思えないほど緊密でクールな響きの演奏に仕上がっている。「ブルーン・ブギ」に聴かれるジョニー・グリフィンのソロなんかは、入りかたからしていかにもライブらしいけど、この、相互に作用しあいながらも、緻密に安定した感じはなんなんだろう…。技術的なことはもちろんだろうけど、まず相性がいいんだろうなー。特にピアノとギター…とサックス…とベースとドラムス(笑)おしまいの4バースのところでウィントン・ケリーが間違えて出てしまうのもまた一興。

ドラムのジミー・コブも上手いなー。ライナーノーツによれば、マイルス・バンドの一員だったんですね。ウエスの魅力が多いに引き出されるラテン調の、彼作曲の「キャリバ」でも、各自見事なソロをとっていますが、これはドラムの働きが非常に大きいと思います。

そしてピアノのウィントン・ケリー…。僕はこのひとをハンク・モブレーの『ソウル・ステーション』で知ったんですが、僕のなかではカシダハンサムやランチみたいに、参加するだけで曲を成功させてしまうという印象のひとで、ここでもやはりマチガイナイ。ああ~、「フル・ハウス」の出だしかっこよすぎるよ。何回も聴いちゃうよ。