『HEAVY WEATHER』WEATHER REPORT 1976年10月スタジオ録音
ウェザーについてはもうくどいぐらいくりかえし書いているので、今日は純粋なアルバムの感想。
これは以前紹介した『ブラック・マーケット』の次の作品。『ブラック・マーケット』ではまだ交替要員的な位置だったジャコ・パストリアスが、アルフォンソ・ジョンソンが脱退したことで正式なウェザーのベーシストとなっている。もちろんジャコのちからがグループに与えた影響ははかりしれないし、一曲目の「バードランド」がバカ売れしたこともあって、これは全作品中もっとも有名なアルバムとなったのだけど、いや名盤です。
あたま三曲、「バードランド」、「お前のしるし」、「ティーン・タウン」はライブでは必ず演奏された彼らの代表曲で、これが収録されたことでウェザーリポート=ヘヴィ・ウェザーみたいになっている部分もあります。事実、これらはまちがいなく名曲です。「バードランド」の、ジョー・ザビヌル的に計算しつくされた構成力に依るキャッチーなメロディと、それじたいが迷いのない個性を生むショーターやジャコの音色は優しく調和していて、なにかあたたかいものの到来を告げるようだし、これまたジャコ特有の人肌のぬくみと芯の強さを含んだロング・トーンを使用した「お前のしるし」も秀逸。ベースでこんな豊かな旋律を奏でられるなんて、誰が想像したでしょう。毎回涙が出そうになる。出ないけど。ジャコは天才だったけど、エラそうな男ではなかった。野心に満ちた、ときには鼻持ちならないやつだったのかもしれないけど、基本的には素直で、ただ音楽が好きな人間だった。って伝記を読んだ限りではってことだけど。「たまたまベースが世界一上手かった、シンプルな遊
びが好きな、いち音楽青年」、それがジャコだったと、この美しい音色を聴くたびに思う。
ビートルズの「イエスタデイ」が名曲なのを誰もが認めるように、これらが名曲なのも言ってしまえば当然で、このアルバムがすごいのは他の曲も負けず劣らずすばらしいものだということです。僕が好きなのは「パラディアム」とラストの「ハヴォナ」。たぶん、前の三曲よりよく聴いていると思います。「パラディアム」の、出だしのスタティックな印象から、ブレイクを置いてはじまる、コンガとユニゾンするみたいなジャコの細かく立体的なフレーズに乗るショーターの主旋律が、むちゃくちゃかっこいい。途中に突然現れるジョーのシンセ・ベースもものすごいクールだし、おしまいあたりでこれまで展開してきたメロディが急に転がって、いきなり入ってくるスティールドラムの音色とともにうたうように変わるところも、毎回鳥肌ものですよ。
そして「ハヴォナ」…。ウェザーはどのアルバムでも、最後にいかにも「エンディング」的な曲をもってくるけど、これがどれもいいんですよね。『ブラック・マーケット』の「ヘランドヌ」も、ほんとう、アルバムがこれで終わってしまうのが残念でならないとこちらに感じさせるような、修学旅行の帰りのバス的な、さびしさと可能性が共存したもので、「ハヴォナ」もそういう曲です。これはまた、個人のソロがいい。ジョーのピアノ(たぶん生ではない)の音もいかにも70年代らしい、とんがったものだけど、フォーマルな感触はとてもきらきらしたものだし、ジャコは言わずもがな。ちょっともったいぶるような感じから、怒涛のエンディングへと突っ走るさまは、ほとんど神懸かり。最後の一音まで、マジで聞き逃せないです。
はあはあ…
熱くなりすぎたかな…。やっぱオレ、このグループ好きなんだなー。リアルタイムで聴きたかったです。そいで、ジョー+ショーター+ジャコ+アースキンのカルテットは、奇跡みたいだね、とか、友達と納得しあいたかった(笑)別にいまでもできるけど、聴いてる人間の絶対数が少ないから。というか僕のまわりにはひとりもいない。僕の生まれる七年も前の作品だもんなー。もう二十年はやく生まれてたら、YMOもリアルに聴いてただろうし、村上春樹や村上龍、高橋源一郎の登場も目にできたのになー。
…くだらねえ。
