39.パーソン論

 人間は理性的な存在(意識を持った存在)とする。

尊厳死、人工妊娠中絶、胚の医療・研究利用の正当化

 パーソン論とカトリックは対立する。

40.環境保護

(1)保護protection:自然を脅威から守る

(2)保存preservation:人間の手が入らない聖域を作る(聖域 → サンクチュアリー)

(3)保全conservation:人間の手を介して(人間が利用しながら)自然を守る

41.捕鯨に関して

 捕鯨国  → 日本、ノルウェー、フィンランド、アイスランドなど

反捕鯨国 → アメリカ、フランス、ドイツなど

国際捕鯨委員会(IWC)は元々捕鯨国の集まりだが、今は反捕鯨国の勢力が強い。

 争いの原因は・・・

食文化・動物観の違いからくる文化摩擦?

 科学的根拠を無視した自然保護団体の感情的な批判?

捕鯨国の持論

 捕鯨を行うことにより、生態系を維持(クジラの増加 → イワシの減少)

 保全をやっているのである。

 商業捕鯨の再開を主張

 反捕鯨国の持論

 サンクチュアリーの拡大

 保存をやっているのである。

 調査捕鯨の禁止を主張

 現状:商業捕鯨は全面禁止。調査捕鯨の粋は認められている。

    IWCでは反捕鯨の決議案が採択されている。

42.過剰漁業

 今日の海洋環境にとって最大の脅威となっている

 漁船団は資源の許容範囲を超えて、海洋エコシステムに甚大な被害を与えている。既に何種類かの魚は過剰な漁業によって商業的絶滅の状態に追いやられてしまい、他の種も同じ道をたどりつつある。

43.里山保全

 里山 → コナラ、クヌギ、アカマツなどの雑木林(落葉樹)

    → 10年に1度伐採したり、落ち葉を集めたりして雑木林を維持する。こうすることで多様な生物が生活できる環境が保たれる。

 里山を伐採しないで放置すると、光の少ない環境で育つ常緑樹が繁茂し、自然林になる。

44.生物の多様性が必要な理由

 生物の多様性は生態圏の豊かさを示す

 持続可能な発展のため、自然を保全することが必要。

 バイオテクノロジーによる品種改良や医薬品の開発のための貴重な「生物資源」「遺伝子資源」

45.自然保護の関連条約

 ラムサール条約(特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約)

 ワシントン条約(絶滅のおそれがある野生動植物の国際取引に関する条約)

 生物多様性条約、気候変動枠組み条約がある。

46.リスク・・・アセスメント、マネジメント、コミュニケーション

 リスクアセスメント:評価(アナリシス・分析)

 リスクマネジメント:管理

 リスクコミュニケーション:情報の共有

 リスクアセスメント

① どれくらいのリスクがあるか(定量的評価)

 ② どういうリスクか(定量的評価)

 例 医療ミスによる死亡 投薬による副作用(死亡)

 リスクマネジメント

 ① リスクを減らす(対策)

 ② 事後対策

 リスクコミュニケーション

専門家、技術者がリスクにさらされる可能性がある人に情報を与える。(情報のアンバランスを解消)

 例 医療におけるインフォームドコンセント

リスクアセスメント → 研究者

 リスクマネジメントとリスクコミュニケーション → 現場

リスクマネジメントと倫理が使われる場所

 ① 専門家倫理(プロフェッショナリズムの倫理)

 ② 企業倫理

47.技術リスクの定義

 有害事象の生起確率 × 被害の大きさ で表す。

 例:原子炉の事故

   生起確率 → 1万年に1回

   被害の大きさ → 1回の事故で1万人死亡

   よって原子炉は1年につき1人死ぬというリスクを持つ。

48.ハインリッヒの法則・バードの法則

 ハインリッヒの法則

 志望や重傷をもたらした災害1件の背後には29件の軽傷を伴う災害と300件の障害を伴わない類似災害がある。

 バードの法則

 重大事故1件に対して軽傷10件、物損のみの災害30件、傷害も物損も無い事故600件がある。

これらの法則は、リスクマネジメントに活用される。

49.IRS(Incident Reporting System)

 大きな被害の発生した事故ではなく、事故に至らない事象(インシデント)に関する情報を収集、分析する制度。

 非安全状態、非安全行動などの危険因子を事前に発掘を施すことができる。また同時に、危険を見つけようとする姿勢が各個人の危険感受性を高めるという効用もある。

 日本では、インシデントは「ヒヤリハット」事例と言われることがある。

50.信頼リスクに関する非対称性原理

悪いニュースは良いニュースよりも目に付きやすく信用されやすい。また、信頼を得るための努力はなかなかその成果をあげられないが、信頼を得るための努力の欠如は大きな不信感を招くという原理のこと。

 例 三菱自動車

 良いことをした → ニュースにならない  悪いことをした → ニュースになる

51.リスクマネジメントとプロフェッションの倫理

 高度な技術を持った有資格者は技術の影響を受ける人に対する説明責任と注意義務を負う。

リスクコミュニケーションの倫理

 手術・投薬・等によるリスク情報の開示(インフォームド・コンセント)

 医療ミスに関する情報開示

52.組織内の不法行為に遭遇するリスク

 組織の不正行為(カルテ改ざん、クレーム隠し)は組織内で解決するよう努力する。例えば内部告発、社員による外部への通報がある。

 しかし、内部告発によって会社が無くなるのは組織や同僚に不利益であるだけでなく、告発者も不利益を受ける。そこで内部告発者を守るために公益通報者保護法が作られた。この法では内部告発者に対する報復行為(解雇や昇進差別など)を禁止している。

53.リスク・費用・便益分析

 費用便益分析

 技術の導入に要する費用と技術の導入によってもたらされるリスクとの比較

 費用効果分析

 同じ効果が得られる技術(方法)のうち、もっとも費用の安いものを選択

 リスク便益分析

 技術の導入によって生じる便益と技術の導入によって生じるリスクと比較

 リスク費用便益分析

 技術の導入に要する費用と技術の導入によって生じるリスクと便益との比較

54.最後につけたし

 (1)エコロジー思想の歴史

生態圏中心主義と人間中心主義が対立していた時、カーソンが著書『沈黙の春』を出版し、農薬の危険性を訴えた。この本が出版される以前は科学技術によって自然をコントロールするという考え方が広まっていたが、『沈黙の春』で科学技術一般のイメージが変化した。

    テクノロジーアセスメント → 技術が環境に与える影響の評価

    1970年代に米国で始まる。公共事業を行う場合や技術の規制を行う場合、環境影響評価書を提出することが義務付けられた。

 (2)自然、動植物を原告とする裁判(米国1970年代、日本90年代)

    この裁判は原告不適格で却下された。

    却下の理由

    当事者(原告)適格 → 人格権、財産権、営業権などを侵害された者のみに与えられる。

    この観点から、自然環境の破壊は当事者適格無しとされた。

23.遺伝子改良(デザイナー・ベビー)

 ドイツ → 胚保護法

 人為的に変更したヒト生殖細胞の受精への利用は禁止。ただし、体外で受精に利用されない生殖細胞を人的に変更するのは可能。また、治療に関する場合も適応されない。

 フランス → 生命倫理法

 あらゆる優生学的実践を禁止する。

 日本、アメリカ → 法規無し

 アメリカではどのような遺伝子を持つ子どもを産むかは親の生殖の自己決定権と子どもの教育権の範疇だという議論がある。

24.(近代)優生学(または優勢思想)

 能力の劣る人間の生殖を制限し、優秀な子孫を残そうとする思想。

 例:ナチスの断種法 日本のらい病予防

25.受精卵診断、遺伝子治療、遺伝子改良への批判の根拠

(1)優性思想の復活?(新優生学)

 (2)機会の平等に関する懸念

    社会的階級の差=遺伝子の差となる可能性がある。

 (3)宗教的理由

    人間の種の改変 → 神の領域を侵す

26.出生前診断、受精卵診断

 日本では・・・

出生前診断 → 障害者の生存権の否定

受精卵診断は法的には可能。しかし日本産科婦人科学会の審査が必要。治療と生の選択の間の線引きが難しい。

27.Wrongful life訴訟

 遺伝的障害を持った子どもの出生に対して医師の責任を問う

 (1)検査方法の存在を告げなかった

(2)検査の結果が間違いだった

原告は子ども自身。

医師のミスによって出生した → 生まれたことによって損害と考える。

28.日本の特許の対象と要件

 対象

① 自然法則を利用

② 産業利用できるもの

 要件

 ① 新規性(論文等で公開されていない)

 例 発明A → 発明者が論文を発表 → 特許権の対象外となる

② 先願主義(日本) ←→ 先発明者主義(アメリカ)

 ③ 非自明性(誰もが思いつくようなものではいけない)

④ 公序良俗(社会秩序・道徳心)に反しないもの

29.ゲノム情報と人権

 バイオテクノロジーの発明の法的保護に関する指令(EU)

 人体から材料を提供するヒトに自由なインフォームド・コンセントの機会を与えなければならない。

 公序良俗に反するものは特許を受けることができない。特に以下のもの。

① ヒトクローニング法

② ヒトの生殖細胞の遺伝的同一性を変える方法

③ ヒトの胚の産業的、商業的利用

④ ヒトまたは動物に何も医学的利益も無く動物を苦しませる方法で遺伝的同一性を変える方法およびそれによって得られた動物

30.ヒトゲノム及び人権に関する世界宣言(ユネスコ)

 (1)ヒトゲノムは人類の遺産である

 (2)自然状態にあるヒトゲノムは財政的利益を生じさせてはならない。

 (3)ヒトゲノムに関して得られた利益は個人の尊厳と人権に十分な考慮を払って全ての人が利用しうるようにしなければならない。

31.遺伝子特許の審査基準

 日本、アメリカ、EUでDNAの塩基配列への特許付与に関する共通の審査基準がある。

(1)塩基配列を決定しただけのDNA断片には特許性はない。

(2)DNA断片自体が独自の有用性、例えば特定の病気の診断薬用などをもつ場合には特許性がある。

(3)試料の提供者に対するインフォームド・コンセントを実施し、プライバシーの保護に配慮する必要がある。

(4)公序良俗に反するものは不可。

32.遺伝子情報の利用に関する問題

 科学的事実は知的所有権の対象になりうるのか。

 人間のゲノム情報の商業利用は許されるのか。

33.ケアの倫理

 昔の医療における倫理観はパターナリズムが主であった。しかし現在では患者の自己決定権が尊重されている。よって医療では患者に治療法などを説明するインフォームド・コンセントが徹底されている。しかし、患者の自己決定権には限界がることが1つの問題になっている。

34.コールバーグの道徳発達論

 女性の道徳性を男性の道徳性よりも低く評価

 第一段階:罪と罰

 第二段階:取引としての人間関係

 第三段階:身近な他者への思いやり

第四段階:社会のルールを意識

 第五段階:国などの共同体

第六段階:普遍的な原理、正義

35.ギリガンのもう1つの声

 正義の倫理:普遍主義的、抽象的、原理主義的、公平性の原理から、自律した個人による自己決定

 ケアの倫理:具体的な他者への思いやり。具体的な状況の中でのケア。正義の倫理による補完

36.エコロジー思想の背景

 (1)米国西海岸におけるカウンター・カルチャー

    既成の文化価値、規範意識への反抗

(2)黒人の公民権運動

 (3)フェミニズム運動

 (4)大学における学生反乱

(2)~(4) → 既成の価値観を否定。自然の内在的価値の評価。

 (5)トーマス・クーン『科学革命の構造』

    「科学者集団」への注目

37.ディープエコロジー(確かこれが本試験に出たと思います)

 主張

(1)全体論的視点

    生命圏は本質的に固有の関係が網状に絡まり広がったもので、個々の生命はその網の結び目にあたるというイメージ

(2)生命圏平等主義( ←→ シャローエコロジー:人間の生活環境を守るため)

 (3)多様性と共生

(4)反階級制度

(5)環境汚染や資源枯渇に対する戦い

(6)複雑性

 (7)地域自治と分権化

38.動物解放論

 (1)能力至上主義:人間と動物の差は能力の差

 (2)QOL中心主義

  能力の差 → 個体差がある。個体差によって価値が定まる。

( 重度の障害者 < 正常なチンパンジー )

能力 → 苦しむ能力

→ 未来を考える能力(人間と一部の類人猿に特有)

(3)種中心主義、ユダヤ教キリスト教的人間観への批判

動物解放論の帰結

 ① QOLに応じた尊重

   知的能力、意識を持つか否か

 ② 胚利用に関しては肯定

   ※胚 → 人間の尊厳を持たない

動物解放論のスローガン

 科学における動物の利用の全面的廃止。商業的畜産の全面的解体。商業的及びスポーツとしての狩猟ならびにワナ猟の全面撤廃

12.臓器移植の意思表示の方式

 承諾意思表示方式(Opting in

 臓器提供の意思表示がある場合、臓器摘出可能。日本が採用している。

 反対意思表示方式(Opting out

 反対意思の表示が無ければ臓器摘出可能。遺族の承諾や反対の意思表示が無いことなどを条件とする場合が多い。ドイツやフランスが採用している。

13.日本の臓器移植法

 特徴

 書面による本人の承諾(ドナーカード)と家族の承諾が必要

 死の概念(判定方法)を個人が選択可能

 移植機会の公平性

 臓器売買の禁止

 腎臓と眼球に関しては例外的に本人の承諾無しで(家族の承諾だけで)移植可能。

 15歳未満の脳死者からの臓器移植は不可。

 問題点

 死の規定が個人による選択のため、あいまいである。

 意思確認の方法が厳しすぎる。

14.臓器移植法の改訂議論

 町野案

 (1)法律によって脳死を一律に人の死とする

 (2)反対意思表示方式を採用

 (3)15歳未満の脳死の子どもからも親族の承認により移植可能にする

 森岡案

 (1)脳死判定の選択性を維持

 (2)意思表示方式を維持

 (3)15歳未満の子どもにも意思表示方式を採用

 てるてる案

 脳死を人の死とはせずに、脳死者からの臓器提供を認める。脳死体からの移植を生体移植と見なし、医療行為ではないとする。(違法性阻却論)

15.脳死の三概念

① 全脳死説

  呼吸、循環などの生命現象をつかさどる脳幹を含む全脳機能の不可逆的停止(この考えが主流)

② 脳幹死説

  脳の内部の、呼吸といった生命現象の統合能力が集中する脳幹部の機能が不可逆的停止(イギリスが採用)

③ 大脳死説

  意識や感情をつかさどる高位中枢の死(極端な説)

※死の三大兆候:心拍停止、呼吸停止、瞳孔散大

16.胎児組織移植に関する世界医師宣言

 女性が妊娠中絶の決定をすることに胎児組織の移植が影響を及ぼす可能性を排除するために以下の3つを禁止する必要があるとした。

① 胎児組織を指名されたレシピエントに提供すること

② 胎児組織を売却すること

③ 中絶に関する最終決定を下す前に、移植用に組織を使用することについて同意を求めること

17.代理母をめぐる問題

 日本には人体の利用に関する包括法が無い。

 代理母の法的規制がない。(産科婦人科学会では禁止)

 法務省の見解では子どもを産んだ人が母親となる。よって生まれた子どもの戸籍がどうなるのかが問題になる。

多額の費用がかかる。よって人体が商業利用されてしまう可能性がある。

18.いろんな胚について

 キメラ胚(集合胚):複数の胚を混ぜ合わせたもの

 ヒトキメラ胚:人間同士の胚を混ぜる

動物・ヒトキメラ胚: 動物と人間の胚を混ぜる

ハイブリッド胚(融合胚):除核した卵子に体細胞の核を移植

19.ヒト・クローン胚に関する議論

 否定側

① 人間を手段として考え、人間の尊厳を損なう。

 ② 生殖の概念を変え、基本的な人間関係を変えてしまう。

③ 子どもの「未来を知らずにいる権利」を奪う。

④ 安全性が確立されていない。

 賛成側

① クローン人間は「年の違う双子」にすぎず、アイデンティティに関する問題はない。(細胞質遺伝、子宮環境の違いがある。)クローン人間が「コピー」であるというのも    

誤解である。なぜなら人間の性質は遺伝子だけで決まるわけではない。

② 生殖の自己決定権、幸福追求権は保護されるべき。

③ 安全性についてはやってみなければわからない。

20.クローン人間に関わる日本の法律について。あと国外

 日本ではヒト・クローン禁止法が試行されている。この法律では、ヒト・クローンを作成することは禁止されている。しかし再製医療に道を拓くために禁止は最小限にしている。ヒト・クローン胚、動物・ヒト・クローン胚、動物・ヒト・ハイブリッド胚の作成は禁止されておらず、これらの胚を子宮(人間、動物)への移植も禁止されていない。

 ドイツはクローン胚、キメラ胚、ハイブリッド胚の作成は禁止されている。フランスの大統領見解では、研究や実験目的での生体外でのヒトの胚作成を禁止している。

21.ES細胞と異種再生医学

 ES細胞

 受精卵 → 卵割 → 胚盤胞 → 内部細胞塊を取り出して培養 → ES細胞

→ 特定の条件で分化 → 再生医療に利用

 異種再生医療

 ① 動物の胚にヒトの胚性幹細胞を混ぜて培養し、子宮に移してヒトの臓器を持つ動物の個体を得る。

② ヒトの細胞を動物の卵に核移植して胚を作成し、そこから幹細胞を作って移植用に元のヒトと同じ遺伝的組成で拒絶反応が起こらない臓器や細胞を得る。

22.胚は人間か?

 カトリック教会

 受精の瞬間=生命の誕生

 体外受精、着床前診断、胚の研究利用に反対

 プロテスタント諸派

 人格は徐々に形成されるもの → 初期胚に人格はない

 胚の提供、遺伝子診断、研究利用など広範囲に認めうる(統一見解無し)

 ユダヤ教

 子宮に着床した時点で人となる。

 医療目的での受精卵遺伝子診断と胚の研究利用は認める。

 イスラム教

 受精後40日以降に人になる(魂が受肉する)

 医療目的での受精卵遺伝子診断と胚の研究利用は認める。