倫理シケ対

Ⅰ.項目ごとに分けて文章を作ってみました。箇条書き程度ですが、自分で文章を作るときの参考にしていただけるとありがたいです。

Ⅱ.2004年度は小テストが2回ありました。その時に出題された問題に下線を引いてあります。本試験の方は先生に持っていかれたので何が出たか覚えていませんが、2回の小テストで出た内容が8割でした。あと、「~について説明し、それに対する自分の意見を述べなさい。」というのが結構ありました。自分の考えはまとめておきましょう。

Ⅲ.小テスト2回分については問題を残していますので、見たい方は目を通してください。

Ⅳ.このシケ対は個人用に使っていたものを手直ししただけのものです。新しい内容については自分自身で補足してください。また、自分勝手ですが「ここはテストに出ないだろう。」と思った所は省いていますのでそこは許してください。

1.倫理と法律の関係

 法律は明文化された規則であり、強制力がある。倫理(規範)は法律を作る際や法律を適用する時の根拠となる。たとえば、「公的良俗」に反する法的行為は無効になる。

2.功利主義について

 最大限の幸福を実現することを目指す。幸福を与えるもの=善い行い、不幸を与えるもの=悪い行いとみなす。ベンサムは「最大多数の最大幸福」や「快楽計算」を説いた。また、ミルは快楽には質的な差異があると強調した。

3.カントの義務論

 定言命法によるものである。定言命法では、自分の意思の格率がいつでも同時に普遍的立法の原理に合うように行為しなければならないとする。自分が行動する時の原則が全ての人が従うべきルールと同じでなければいけない。普遍化可能性が行為の善し悪しを決める。

4.自由主義

 消極的自由と積極的自由がある。消極的自由とは、強制から自由であり、個人が欲求の実現を妨害されないことである。積極的自由とは、欲求を抑制し、より高級で理性的な自我を実現することで、社会主義とつながる。また、自由主義では他者に危害を加えない限りは何をしても自由であるとする。保守主義やパターナリズムと相反する考えである。(※公正、平等、福祉の実現のために、個人的自由を制限する場合もある。)

5.他者危害原則・パターナリズム・愚行権

 他者危害原則とは、他者に危害を与えなければ何をしても良いという原則である。自由主義の立場を表現したものである。

 愚行権とは、他者危害原則を守っている限り、個人がどのような行為をとろうとも自由である、という権利のことである。

パターナリズムとは、知識や技術、権力のある人間がそれらを持たない人間に対しておせっかいな指示やアドバイスを行うことである。

6.よく生きるとは?

 ① 人間的な能力の発揮。理知的な生(アリストテレス)

 ② 快楽主義 → 感覚的な欲望からの解放、平静心の獲得 「隠れて生きよ」(エピクロス)

 ③ 禁欲主義 → 「自然に従って生きる」(ストア学派)

④ 快楽の最大化(ベンサム)

7.伝統的な医療倫理の特徴

 伝統的な医療倫理の特徴を示すものとして、ヒポクラテスの誓いがある。それは、

①知識の独占 

②無加害原則(自分がもっとも良いと思う方法を採用する)

 ③安楽死 人工妊娠中絶の禁止

 ④自分の専門外のことはやらない。

 ⑤医療における平等

である。また、パターナリズムも大きな特徴である。

8.現在の医療倫理の特徴

 ①人格の尊重(自己決定権の尊重)

 ②恩恵(被験者の利益がリスクを上回るようにする。)

 ③正義(人種差別、権力関係の利用の禁止)

9.現在の医療倫理が出てきた背景

疾病構造の変化

  主要な死因が感染症から慢性疾患へ変化した。感染症の治療は一時的であるが、慢性疾患の治療は継続的である。よって社会生活を送りながら疾病をコントロールしていく必要がある。そのため複数の選択肢が可能である。このことから、医療はパターナリズムからインフォームドコンセントへ変化していった。

10.インフォームドコンセントの意義・問題点

 意義

 患者の自己決定権を尊重することにより、以下の3つが可能になった。

① 不必要、不当な治療から患者を守る。

 ② 患者の価値観を尊重する。(治療拒否、尊厳死)

③ 医師と患者との信頼関係が築かれる。(対話としての医療)

 問題点

どこまで詳しく説明するべきか。

患者の決定が社会規範と衝突した場合、どうするべきか。

③ 代理同意、または代理拒否をどの程度まで認めればよいのか。

 ④ 医療側の責任回避の手段になってしまわないか。

11.日本で臓器移植の実施が遅れた理由

 ① 宗教的、文化的背景

   欧米では身心二元論だが、日本は身心一元論である。よって身体と精神は同一のものという意識があった。

② 和田心臓移植の後遺症

   この心臓移植は、明確なルールが無いまま実施された。また、この移植に関する情報が公開されなかった。そのため心臓移植がレシピエントにとって最適な治療だったのか、ドナーは本当に脳死状態だったのかといったことがわからないままであった。そのため、臓器移植は人体実験だというイメージが広まった。

(2)伝統的見解の否定

 マネーの研究によるJohnの追跡調査では、Johnは8ヶ月の時、事故にあって外性器を失った。Johns Hopkins病院に相談したところ、女の子として育てるよう言われたため、その後はJoanとして育てた。マネーの追跡調査でも何の問題もなく女の子として育っていた。しかし、その後の再調査によると、7歳くらいから自分は男だと思うようになり、9歳くらいで自分は男だと確信し、自殺願望もあった。12歳になるとエストロゲン療法を拒否するようになり、14歳で父と対決した。Johns Hopkins病院の精神科では男の子にもどすべきだとし、アンドロゲン投与や形成手術行い、男の子として生きるようになった。

 また、内部生殖器は男性だが、外部生殖器が女性化した5α-還元酵素欠損症のドミニカの18人の子は、女の子として厳しく育てられたが、そのうち17人は男という意識を持ち、16人は性転換までした。

 以上のような事例から、伝統的見解は否定され、性の分化は胎児期に脳が分化し、1222週の間に男性ホルモンにさらされるかどうかで決まると考えられている。

(3)友人関係について、子供の社会化にとっての働き

 友人を求める傾向は、小学3,4年生から強まり、中学生・高校生ころが最も強い。子供にとっての友人関係の働きとして、1つ目は社会的文脈である。友人は社会化のエージェントであり、がまんする、耐える、目上の人をうやまうなど所属する集団に適合した行動様式や価値観などを子供同士から学び、習得していく過程である。2つ目は情報源であり、自分はどういう人間なのか、他人との比較や他人の評価により知ることができる。3つ目は社会的資源であり、保護機能として、学校や家庭に不適応なときに、友人がいると助けられ、援助してもらえる。友人の質が重要である。4つ目は後の対人関係の先駆けである。周りから嫌われている子は後の発達が悪いことが予測できる。

(4)男女の仲間集団の特徴

 学童期の仲間集団は、同性同士で男女別に進行していくことが多い。女の子集団は対人志向であり、少人数で排他的で、親密さが強い。男の子集団は活動志向であり、多人数で出入りが多く、親密さが弱い。また、階層的になりやすい。全体として、女の子の方が対人能力が高い。男性は成人しても男同士仲が良い傾向があるが、これは集団的暴力が可能であり、成熟したオスは敵同士である他の生物(チンパンジーを除く)とは異なる。一般に生物は群れの中から若いオスを出すが、人間やチンパンジーは若いメスを出す。

(5)性淘汰について

 青年期は第二次性徴が起こり、男女の特徴が明らかになってきて、男女差が大きくなる。これは性淘汰のせいであり、性淘汰とは雄間の雌をめぐる競争と、雌による雄の選り好みのことである。例えば、クジャクの雄の尾羽は、役に立たず、不利にさえなるが、これは雌に好まれるためである。雌は選り好みをするが、雄は子孫を多く残せるため雌に対して性淘汰が働かず、選り好みはしない。人間の男性の第二次性徴の特徴としては、声が低くなる、上半身が大きくなる、身長が高くなるなどがあるが、これも雌(女性)に好まれるためである。

(6)人間の配偶者を選ぶ基準

 人間が配偶者を選ぶ人類共通のパターンを調べるため、できるだけ多くの37の文化圏で調査を行った。女性が男性を選ぶ共通の特徴として、経済力、社会的地位、年齢(自分より少し年上)があげられ、これは社会的資源の大きさの指標である。愛情や優しさ、誠実さは男性の持っている資源を女性にすすんで与える傾向とされている。また、男性が女性を選ぶ共通の特徴としては、若さと美しさがあげられた。美しさは若さと健康に関連し、幼形性で、目が大きい、まつ毛が長い、あごが小さい、色白など赤ちゃんの特徴を持った顔が好まれ、遺伝的な病気や胎児期の異常が顔に影響するとも考えられている。

◎青年期について

(1)青年期と才能について

 青年期は職業に就く準備をする時期であり、職業において成功するのに必要なものとして、才能と努力があげられる。音楽の世界では昔から才能が重視されてきたが、本当に必要なのであろうか。そもそも才能とはあいまいな概念であり、①遺伝的基礎を持つ生まれつきのもの、②子供の時から能力を発揮、③それは後の能力を予測する、④才能は少数のものにしかない、⑤才能は特定の領域に限られる、と言われているが、「伝記」などは有名になってから書かれるもので、子供時代の話は信頼性が低い。

(2)才能に関する音楽家の研究

 一流の音楽家は子供のとき、ふつう神童ではない。神童とされた子はほとんど一流の音楽家になっていない。Sosniakの研究によると、21人のアメリカで一流とされる30代のピアニストを調査したが、子供の頃はふつうであり、5~6年練習した後、ピアニストになれそうだと思った、という結果だった。音楽で成功した人の共通点として、一つ目は早いスタートがあげられ、4~6歳で始めた人が多い。二つ目は継続的な練習である。Ericssonたちの研究によると、ヴァイオリンを専攻している学生は、優秀な学生ほど練習時間も多いという結果が出た。三つ目は両親の支持や援助があることで、四つ目はレベルにあった指導者のもとで練習したことであった。また、1万人に1人の才能といわれた絶対音感に関しても、今では誰でも獲得できることがわかっている。

◎成人期について

(1)成人期と身体的機能

 成人期は身体的機能がピークをむかえ、下降する時期である。スポーツの記録から、ピークは20代~30代前半だと考えられている。

 身体的機能の下降において、生殖系では男性は40代初め、女性は30代半ばからおとろえ、女性の不妊率も年齢と共に高くなる。また女性は50歳前後で閉経がおこる(早い人は30代から)。閉経は生殖器官の縮小であり、生殖の際の細菌侵入による感染症が原因の一つとされている。閉経による女性ホルモンの急激な低下で更年期障害もおこり、血液の流れが変動しやすくなり、不快、頭痛、ふるえ、睡眠不足などhot flushという症状が出やすい。更年期障害は個人差が大きく、伝統的には様々な精神症状を伴うとされてきたが、アメリカとスウェーデンでの大規模な研究の結果、閉経と精神状態は何の関係もなかった。

 骨はホルモンや圧力によって死んではまたつくられるが、女性では30代半ばからおとろえ、骨粗鬆症や関節痛は20代からも生じる。筋肉は50歳頃から特にfast fiberが減少してくるが、骨や筋肉は減少を防ぐ方法もある。

◎老化について

(1)老化の定義

 老化は定義するのがむずかしいが、①加齢が引き起こす内因性の過程、②全ての人に生じる普遍的なもの、③死に至る有害なもの、と定義される。病気によるものや外的要因によるものは老化とは言わない。皮膚の老化の多くはphoto aging(光線加齢)であり、早老症も老化ではない。その80%が日本人であると言われているウェルナー症候群は主に30代で発症している。

(2)老化の生じる原因

 老化の生じる原因として、昔からの説は、生命活動は生化学的に不完全であり、蓄積されるとしている。酸素呼吸の反応(酸素+グルコース→エネルギー+CO2H2O)の際に残った酸素がフリーラジカルとなり、体で酸化すること、呼吸に使われるグルコースが有害であることなどがあげられる。

 また、無性生殖のイソギンチャクが老化しないことなどから、遺伝子が原因とする説もある。老化させる遺伝子が種の中に広がることで老化がおこるとする考え方で、遺伝子の異常において、子供で発病する早老症が数百万人に一人であるのに対し、主に40代で発病するハンチントン病は、ヨーロッパでは1万5千人に一人である。つまり、生殖が終わってから異常を引き起こす遺伝子は淘汰されない。これはショウジョウバエで確認され、人為淘汰により、通常2週齢で生殖するが、6週齢以上のハエの卵だけ育てることを10世代くりかえしたところ、寿命が2倍となった。

(3)脳の老化

 脳はゆっくりと発達する。生後1年半くらいに大量のシナプスが作られ、ニューロンのネットワークができ、pruning(刈り込み)によって必要なものだけが残る。そこからゆっくりとネットワークづくりがすすみ、1315歳くらいで1度目のspurt17歳くらいで2回目のspurtがおこり、25歳くらいまで発達する。30代からは樹状突起が減少しはじめ、ニューロンのネットワークがこわれ、情報が伝わるのに回り道する必要があるため、情報処理速度が低下し、動作がゆっくりとなる。根拠は乏しいが、ニューロンは1日に10万個以上死ぬが、脳全体では微量である。ニューロンは増えないと考えられていたが、1999年に間違いであるとされた。また、情報処理能力だけではなく、ある種の記憶力、意識的に検索する能力も低下するが、原因はよくわかっていない。

(4)terminal drop

 知的能力について、Seattleで同じ人物を何年にもわたって調べる従断研究を行い、2588歳まで7年ごと調査をしたところ、60歳くらいまでは知的能力の大きな変化はなく、知的能力の低下と加齢はあまり関係がないとされた。そこで提案されるようになったのが、terminal drop説である。これは終末期の急落、つまり、知的能力の低下は死ぬまでに残された時間と関連していて、死が近づくと急激に低下していくという説である。

(また、関節炎や骨の病気、心臓病などの特定の病気により、運動しなくなることでの最大呼気流量の変化が知的能力の低下と関連することや、自己効力感の低い人は知的能力の低下が大きいことも言われている。)

※注意事項&アドバイス

・このシケ対は2004年度の講義に基づいて作ったシケ対です。その年度によって講義の内容が変わっていると思うので、注意してください。

・いろいろなシケ対があると思いますが、シケ対を丸写しした人は比較的点数が悪いようです。(再試の可能性アリ!)このシケ対は講義での板書された言葉をつなげて作りました。良い点数を取るには、自分で書いたノートの言葉を上手くつなげていくのが一番良いと思います。採点は減点式で(2004年度)、あるキーワードがないと減点されます。(余計なことを書いても減点される可能性アリ)そのキーワードはおそらく講義での板書の中にあるので、シケ対よりも自分のノート重視をオススメします。

・試験は書くのが大変で結構時間が足りなくなると思います。プリントに番号やタイトルを付ける、ノートの目次を作る、などの工夫をしておくと少しは楽になると思われます。

人間発達学Ⅰシケ対

① このシケ対は平成17年に試験を受けて高得点を取った人(R.Oさん)からもらったものです。

② R.Oさんは心理学概論のテストでも高得点を取った方なので、まとめ方そのものや文章の長さが高橋に合っていると考えられます。文章の流れ、結論の書き方は非常に参考になると思います。

③ このファイルの最後にも書いてありますが、キーワードは授業でやったことです。そしてそれはノートに書いてあります。授業ノートを何よりも大切にすることをお勧めします。

※シケ対(2004年度Ver.)

人間発達学(Ⅰ)

◎新生児について

(1)知 覚

 新生児の知覚では、主に経験によって少しずつ発達していくとする経験主義と、生まれたときにすでに発達しているとする生得主義がある。経験主義だとする例としてはオオカミ少女の話があげられる。オオカミに育てられた少女がオオカミみたいになったことにより、経験主義だとしているが、現実として人間がオオカミに育てられるのは不可能であることからも、知覚については生得主義が支持されている。

(2)視 覚

 大人の基準だと、新生児の視力はとても悪いが、生れた時から見えている。しかし、強い近視で明暗がよくわからず、よくは見えない。また、焦点距離が固定され、眼から21cmのところにある物のみがはっきりと焦点が合って知覚される。この固定化された焦点距離が21cmというのは、赤ちゃんが母親の腕に抱かれたときの赤ちゃんと母親の顔の平均距離と一致しており、母親の顔がよく見えていることになる。

(3)聴 覚

 特別製の乳首を用いた実験で、新生児にその乳首を吸わせ、ある一定の速度で吸うと母親の声が聞こえ、それ以外は他の女性の声が聞こえるようにした。すると、他の女性の声が聞こえたときは、がんばって吸い続け、母親の声を聞きたがった。このことから、母親と他の女性の声を区別できることがわかる。また、新生児は高い声がよく聞こえることもわかっている。

◎愛着について

(1)ハーロウのサルの実験

 模型のリスザルを用いて、代理母のもとで生まれたばかりの赤ん坊ザルを育てた。ミルク付きのwire motherと身体的接触ができるcloth motherをおいたところ、cloth motherといつも一緒にいるようになった。このことから、接触の慰撫が愛着の誘因となっているといえる。

 また、このサルは成長後、異常なサルとなり、他のサルの無関心、攻撃的、自傷行為などがみられ、オスは性行為ができず、メスは育児をしなかった。このことから、初期の母子関係の重要性を示すとされたが、後にこのような異常なサルの治療として子ザルと一緒に遊ばせたところ改善され、小児期に決定されるわけではないと否定された。

(2)ボウルビィの愛着理論

 ボウルビィの理論では、愛着は進化の過程でそのメカニズムを獲得していった生得的なものであるとしている。カルガモは生後数十時間内に初めて見た比較的大きい動くものに愛着を示し、サルは抱きつくことができるものに愛着を示す。そして人間は周りに信号(生理的微笑、泣く、声を出すなど)を発した際に応答してくれる人に愛着を示すと主張した。また、第二次大戦後の孤児の発達についての研究で、孤児の発達が悪かったことからも、生後1年間の母子関係がその後の発達に重大な影響をもたらすと考えた。

(3)発達に初期経験は必要か?

 ハーローのサルの実験では、初めは初期経験の重要性を示すとされたが、異常になったサルを子ザルと一緒に遊ばせると改善したことから否定された。

 虐待された双子の男の子の調査では、出産後すぐに実母が亡くなり、1年間施設で、半年間おばの家で育った後、父親と義母の元で5年間地下室に閉じ込められ、病気だらけで話もできなかった子が、養子にいったところ、数年で正常の範囲まで発達が追いつき、普通の大人になった。

 ルーマニアの養子研究では、孤児院にいる発達の遅れている2歳未満の子をイギリス人のもとに養子に行ったところ、約4年でイギリスの子供と同レベルの発達となった。

 以上のことなどからも、初期経験がその後の発達に決定的な影響を及ぼすとは言えない。

◎言語について

(1)チョムスキーの説

チョムスキーは、子供は、言語獲得装置(LAD)と彼が呼ぶ生得的な、言語に特殊的なメカニズムを持っているから言語を獲得すると主張した。この装置は人間の脳にだけ存在し、言語発達のプログラムは誕生時に規定され、その進展には最小限の環境からの影響が必要であるとした。文法の知識は生得的なものであり、普遍文法に母国語の経験が合わさることで文法が発達するとの主張である。

(2)言語発達について

 昔の考え方では、言語は経験から学び、周囲の発話から文法を推論しなくてはいけないため、幼児には不可能だと考えられていた。しかし、ろうあ者の両親に育てられた子や、先天盲の子供も正常に発達することから、外界の影響はあまり受けないと考えられている。

(3)言語発達の臨界期について

 臨界期とは、最も発達に適した時期であり、この時期を逃すとそれ以降発達しにくくなるという側面も持っている。

 臨界期があるという証拠として、レナバーグの研究では、言語中枢のある左脳を損傷した子供は10歳までなら失語症の症状が(文法能力は劣るが)回復した。また、虐待されていたジーニーという子供は、父親によって13歳まで監禁されていたが、救出され、集中的リハビリや教育を受けた。その結果、めざましく回復したが、言語だけは進歩しなかった。しかし、6歳で救出された子供は2年で追いついた。他にも、ろうあ者の手話の獲得では、12歳以降にはじめるとうまく発達しないこと、移民の英語能力の発達では、10歳以前に移民した子はネイティブと同等にまで発達したことなどが証拠としてあげられる。

◎性について

(1)性同一性の伝統的見解

 性同一性とは、自分は男(又は女)であるという意識をもつことで、2歳頃成立すると考えられている。

 その成立についての伝統的見解では、性同一性は生後の経験や社会による型づけが重要であり、人間は心理的には中性で生まれてくる、外見が重要だとされていた。また、医学的にも、外性器が男女の中間形(半陰陽)の場合は女性とし、染色体による性や内性器による性が外性器による性と違う場合は外性器の性としていた。