(2)伝統的見解の否定
マネーの研究によるJohnの追跡調査では、Johnは8ヶ月の時、事故にあって外性器を失った。Johns Hopkins病院に相談したところ、女の子として育てるよう言われたため、その後はJoanとして育てた。マネーの追跡調査でも何の問題もなく女の子として育っていた。しかし、その後の再調査によると、7歳くらいから自分は男だと思うようになり、9歳くらいで自分は男だと確信し、自殺願望もあった。12歳になるとエストロゲン療法を拒否するようになり、14歳で父と対決した。Johns Hopkins病院の精神科では男の子にもどすべきだとし、アンドロゲン投与や形成手術行い、男の子として生きるようになった。
また、内部生殖器は男性だが、外部生殖器が女性化した5α-還元酵素欠損症のドミニカの18人の子は、女の子として厳しく育てられたが、そのうち17人は男という意識を持ち、16人は性転換までした。
以上のような事例から、伝統的見解は否定され、性の分化は胎児期に脳が分化し、12~22週の間に男性ホルモンにさらされるかどうかで決まると考えられている。
(3)友人関係について、子供の社会化にとっての働き
友人を求める傾向は、小学3,4年生から強まり、中学生・高校生ころが最も強い。子供にとっての友人関係の働きとして、1つ目は社会的文脈である。友人は社会化のエージェントであり、がまんする、耐える、目上の人をうやまうなど所属する集団に適合した行動様式や価値観などを子供同士から学び、習得していく過程である。2つ目は情報源であり、自分はどういう人間なのか、他人との比較や他人の評価により知ることができる。3つ目は社会的資源であり、保護機能として、学校や家庭に不適応なときに、友人がいると助けられ、援助してもらえる。友人の質が重要である。4つ目は後の対人関係の先駆けである。周りから嫌われている子は後の発達が悪いことが予測できる。
(4)男女の仲間集団の特徴
学童期の仲間集団は、同性同士で男女別に進行していくことが多い。女の子集団は対人志向であり、少人数で排他的で、親密さが強い。男の子集団は活動志向であり、多人数で出入りが多く、親密さが弱い。また、階層的になりやすい。全体として、女の子の方が対人能力が高い。男性は成人しても男同士仲が良い傾向があるが、これは集団的暴力が可能であり、成熟したオスは敵同士である他の生物(チンパンジーを除く)とは異なる。一般に生物は群れの中から若いオスを出すが、人間やチンパンジーは若いメスを出す。
(5)性淘汰について
青年期は第二次性徴が起こり、男女の特徴が明らかになってきて、男女差が大きくなる。これは性淘汰のせいであり、性淘汰とは雄間の雌をめぐる競争と、雌による雄の選り好みのことである。例えば、クジャクの雄の尾羽は、役に立たず、不利にさえなるが、これは雌に好まれるためである。雌は選り好みをするが、雄は子孫を多く残せるため雌に対して性淘汰が働かず、選り好みはしない。人間の男性の第二次性徴の特徴としては、声が低くなる、上半身が大きくなる、身長が高くなるなどがあるが、これも雌(女性)に好まれるためである。
(6)人間の配偶者を選ぶ基準
人間が配偶者を選ぶ人類共通のパターンを調べるため、できるだけ多くの37の文化圏で調査を行った。女性が男性を選ぶ共通の特徴として、経済力、社会的地位、年齢(自分より少し年上)があげられ、これは社会的資源の大きさの指標である。愛情や優しさ、誠実さは男性の持っている資源を女性にすすんで与える傾向とされている。また、男性が女性を選ぶ共通の特徴としては、若さと美しさがあげられた。美しさは若さと健康に関連し、幼形性で、目が大きい、まつ毛が長い、あごが小さい、色白など赤ちゃんの特徴を持った顔が好まれ、遺伝的な病気や胎児期の異常が顔に影響するとも考えられている。
◎青年期について
(1)青年期と才能について
青年期は職業に就く準備をする時期であり、職業において成功するのに必要なものとして、才能と努力があげられる。音楽の世界では昔から才能が重視されてきたが、本当に必要なのであろうか。そもそも才能とはあいまいな概念であり、①遺伝的基礎を持つ生まれつきのもの、②子供の時から能力を発揮、③それは後の能力を予測する、④才能は少数のものにしかない、⑤才能は特定の領域に限られる、と言われているが、「伝記」などは有名になってから書かれるもので、子供時代の話は信頼性が低い。
(2)才能に関する音楽家の研究
一流の音楽家は子供のとき、ふつう神童ではない。神童とされた子はほとんど一流の音楽家になっていない。Sosniakの研究によると、21人のアメリカで一流とされる30代のピアニストを調査したが、子供の頃はふつうであり、5~6年練習した後、ピアニストになれそうだと思った、という結果だった。音楽で成功した人の共通点として、一つ目は早いスタートがあげられ、4~6歳で始めた人が多い。二つ目は継続的な練習である。Ericssonたちの研究によると、ヴァイオリンを専攻している学生は、優秀な学生ほど練習時間も多いという結果が出た。三つ目は両親の支持や援助があることで、四つ目はレベルにあった指導者のもとで練習したことであった。また、1万人に1人の才能といわれた絶対音感に関しても、今では誰でも獲得できることがわかっている。
◎成人期について
(1)成人期と身体的機能
成人期は身体的機能がピークをむかえ、下降する時期である。スポーツの記録から、ピークは20代~30代前半だと考えられている。
身体的機能の下降において、生殖系では男性は40代初め、女性は30代半ばからおとろえ、女性の不妊率も年齢と共に高くなる。また女性は50歳前後で閉経がおこる(早い人は30代から)。閉経は生殖器官の縮小であり、生殖の際の細菌侵入による感染症が原因の一つとされている。閉経による女性ホルモンの急激な低下で更年期障害もおこり、血液の流れが変動しやすくなり、不快、頭痛、ふるえ、睡眠不足などhot flushという症状が出やすい。更年期障害は個人差が大きく、伝統的には様々な精神症状を伴うとされてきたが、アメリカとスウェーデンでの大規模な研究の結果、閉経と精神状態は何の関係もなかった。
骨はホルモンや圧力によって死んではまたつくられるが、女性では30代半ばからおとろえ、骨粗鬆症や関節痛は20代からも生じる。筋肉は50歳頃から特にfast fiberが減少してくるが、骨や筋肉は減少を防ぐ方法もある。
◎老化について
(1)老化の定義
老化は定義するのがむずかしいが、①加齢が引き起こす内因性の過程、②全ての人に生じる普遍的なもの、③死に至る有害なもの、と定義される。病気によるものや外的要因によるものは老化とは言わない。皮膚の老化の多くはphoto aging(光線加齢)であり、早老症も老化ではない。その80%が日本人であると言われているウェルナー症候群は主に30代で発症している。
(2)老化の生じる原因
老化の生じる原因として、昔からの説は、生命活動は生化学的に不完全であり、蓄積されるとしている。酸素呼吸の反応(酸素+グルコース→エネルギー+CO2+H2O)の際に残った酸素がフリーラジカルとなり、体で酸化すること、呼吸に使われるグルコースが有害であることなどがあげられる。
また、無性生殖のイソギンチャクが老化しないことなどから、遺伝子が原因とする説もある。老化させる遺伝子が種の中に広がることで老化がおこるとする考え方で、遺伝子の異常において、子供で発病する早老症が数百万人に一人であるのに対し、主に40代で発病するハンチントン病は、ヨーロッパでは1万5千人に一人である。つまり、生殖が終わってから異常を引き起こす遺伝子は淘汰されない。これはショウジョウバエで確認され、人為淘汰により、通常2週齢で生殖するが、6週齢以上のハエの卵だけ育てることを10世代くりかえしたところ、寿命が2倍となった。
(3)脳の老化
脳はゆっくりと発達する。生後1年半くらいに大量のシナプスが作られ、ニューロンのネットワークができ、pruning(刈り込み)によって必要なものだけが残る。そこからゆっくりとネットワークづくりがすすみ、13~15歳くらいで1度目のspurt、17歳くらいで2回目のspurtがおこり、25歳くらいまで発達する。30代からは樹状突起が減少しはじめ、ニューロンのネットワークがこわれ、情報が伝わるのに回り道する必要があるため、情報処理速度が低下し、動作がゆっくりとなる。根拠は乏しいが、ニューロンは1日に10万個以上死ぬが、脳全体では微量である。ニューロンは増えないと考えられていたが、1999年に間違いであるとされた。また、情報処理能力だけではなく、ある種の記憶力、意識的に検索する能力も低下するが、原因はよくわかっていない。
(4)terminal drop説
知的能力について、Seattleで同じ人物を何年にもわたって調べる従断研究を行い、25~88歳まで7年ごと調査をしたところ、60歳くらいまでは知的能力の大きな変化はなく、知的能力の低下と加齢はあまり関係がないとされた。そこで提案されるようになったのが、terminal drop説である。これは終末期の急落、つまり、知的能力の低下は死ぬまでに残された時間と関連していて、死が近づくと急激に低下していくという説である。
(また、関節炎や骨の病気、心臓病などの特定の病気により、運動しなくなることでの最大呼気流量の変化が知的能力の低下と関連することや、自己効力感の低い人は知的能力の低下が大きいことも言われている。)
※注意事項&アドバイス
・このシケ対は2004年度の講義に基づいて作ったシケ対です。その年度によって講義の内容が変わっていると思うので、注意してください。
・いろいろなシケ対があると思いますが、シケ対を丸写しした人は比較的点数が悪いようです。(再試の可能性アリ!)このシケ対は講義での板書された言葉をつなげて作りました。良い点数を取るには、自分で書いたノートの言葉を上手くつなげていくのが一番良いと思います。採点は減点式で(2004年度)、あるキーワードがないと減点されます。(余計なことを書いても減点される可能性アリ)そのキーワードはおそらく講義での板書の中にあるので、シケ対よりも自分のノート重視をオススメします。
・試験は書くのが大変で結構時間が足りなくなると思います。プリントに番号やタイトルを付ける、ノートの目次を作る、などの工夫をしておくと少しは楽になると思われます。