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真・プロレスラーは観客に何を見せているのか 30年やってわかったこと (徳間文庫)
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『真・プロレスラーは観客に何を見せているのか 30年やってわかったこと』
TAJIRI 著
(2024年3月15日 初刷)
(−A−)◎
今年2024年にデビュー30周年を迎える元WWEスーパースターにして現在は福岡を拠点とする『九州プロレス』に所属する "ジャパニーズバズソー" TAJIRIが、文字通り「プロレスラーは観客に何を見せているのか」を著した1冊☆
(−A−)TAJIRIと言えば…
プロレスラーとして活躍する傍ら、近年は興味深い著作を何冊も書き上げており…"文豪レスラー" なんて知的なニックネームもいつの間にか付いてる選手ですね♪
そんなTAJIRI選手の著書の1つに、'19年12月に発売された『プロレスラーは観客に何を見せているのか』という実に興味深い1冊がありまして。
発売から4年の歳月が流れ、時代は移り変わり、プロレス界もどんどん変わっていった、そしてこの間に全日本プロレスを退団して九州プロレスに移籍したTAJIRI自身も、考え方そのものが変化したり、新たに書きたい事が累積している。ならば…
「現在のプロレスに対する自分なりの考察と、さらには社会の映し鏡としてのプロレスの側面についてオレなりの見方を、完全に書き下ろすこととした」そうです。
(−A−)つまり…
評判の良かった書籍を文庫化するのは出版業界の慣例?かと思いますが…「あれ、売り上げも良かったので文庫化しましょう♪」という話を持ってったら、著者自身が「いや、今これをそのまま出すのは何か違う気がするので…全編書き下ろします!」と希望して完全新作執筆という話になったという、なかなか珍しいパターンで発売された1冊。という事です◎
オリジナル版はとても興味深く読ませてもらった良書でしたが、単なるその文庫化だったり、ちょっとばかしの加筆ぐらいであったなら、多分私は買ってなかったと思いますので…商売という意味でも正しい戦略だったんじゃないですかね?(笑)
(−A−)そんなわけで…
全編書き下ろしの完全新作となった本書、興味深い記述満載なんですが、内容に言及してたらキリが無いので、目次だけズラズラーッと書いときますね…目次書いてよし。にしてるのは、いつもの事ですが。(笑)
(−A−)以下、目次です。
はじめに −−− 4年の歳月がプロレスと社会を変えた
第1章 プロレス界を生き抜く条件
全日本プロレス若手に指導した「表現技法」
オレの「実の子」フランシスコ・アキラの成長
成功するための絶対法則とは
すべてはお金のために行う=プロ意識
「プロ意識」と「プレイヤー意識」
猪木&闘魂イメージ払拭と新日本の成功
斉藤兄弟が海外修行で得た「考える」生存戦略
多様化する価値観を持つために「海を渡れ」
プロレス海外修行の意味
「日本にいたい」としがみつく若者の心理
第2章 メジャーとインディーの壁はあるのか
越境を許さなかったメジャー団体
新日本プロレスは「おっかなかった」
真壁刀義に言われた「出て行ってもらえますか」
「某選手」に投げかけられた強烈な一撃
イラつくライガーが「こいつ潰すぞ!」
プロレスも一般社会もフラットになってしまった
第3章 技術論 −− プロレスラーの土台となるもの
「基礎体力」と「表現の仕方」を同時に鍛える
一般人とかけ離れたキャラクターであれ
デカい選手の速い動きはデカさという武器を殺す
前転後、最高にかっこいい決めポーズができるか
緩急をつければ速く動いているように見える
リング内の4本のライン上で攻防は行われる
「観客に何を見せるか」への考え方
技の前に「観客に手拍子を求める」のは最低だ
海外団体のビジネスとしての有料セミナー
体で覚える前に、頭で理解すべきこと
芸能人を怪我なくリングに上げる
第4章 プロレスの技は本当に進化しているのか
プロレスの技はデフレを起こしている
新規ファン獲得よりマニア向けにする罠
まったく効かない「エルボー合戦」の無意味
エンターテイナーか、アーティストか
相手を追い込んでいながら逆転される不思議
大谷晋二郎の怪我と「効かない技」の問題
ファンに媚びる「商人」になってはいけない
木谷高明氏の名言「すべてのジャンルはマニアが潰す」
エプロン攻防の日常化で「危険想像能力」が消える
第5章 道場論 −− プロレスラーの魂を鍛える場所
道場はコーチと仲間がいることで成立する
ルチャの稽古はアマレスの組み技が重点
肉体を追い込んだ向こうに魂の鍛錬は存在する
一人でやれる練習を道場でやるのはもったいない
日本が世界に誇る「寮」という生活システム
お金を貯めて「自腹」で海を渡る=修行
第6章 いまプロレスでカネは稼げるのか
月給10万円を超えなかったインディー時代
プロレスラーを目指す有形・無形の理由
大日本でやり続けていては、将来が……
ECW崩壊で胸に誓った「あること」
最高峰WWEのお金の仕組みを話そう
「人生変わった!」と思えたプロフェッショナル空間
グッズ売上5年分の不労所得で家族4人海外旅行3回
DSE時代のハッスルはバブリーだった!
「人生の武器」となるTAJIRIの言葉
第7章 コミュ力 −− プロレスラーに必須のスキル
幸福の「プロレス式コミュニケーション術」
九州のキリスト様・筑前理事長の得な性格
「クレームの来ないプロレス」が氾濫する
団体を去る理由、去れない理由
見切りをつける能力と、スパッとやめる実行力
WWEで学んだ「緊張」しない考え方
「あとX時間後にはこの光景が現実のものとなる」
いちばん好きなことを仕事にする決意=夢
ライバルが少ない、自分が目立てる道を選ぶ
自信があるならやればいい、それだけだ
会社はお前らの何を売り出せばいいのか?
「自分とはなんぞや⁉」キャラクターを考える
第8章 SNSとプロレスの歪んだ関係
プロレスの情報を入手するルートの激変
不確かな「らしい」で物語をつくれていた時代
「TAJIRIは選手と団体を洗脳する」説について
あの会社でTAJIRI体制つくってカネになるか!
プロは「火ダネとなる噂」をどうさばくのか
TAJIRIに「王道」がメチャクチャにされる
ネットによってすべてが身近になった悪影響
第9章 プロレスは中央から地方へ
九州プロレスにSMASHの世界観を見た
プロレスに対して「不感症」になっていた
集客に苦戦する団体もある中で「無料開催」
人生の残り時間から逆算して仕事を考え直す
東京と福岡 −− プロレスラーをめぐる違い
あらゆるものがありすぎる中央の弊害
九州で変わった「歩くスピード」
いまの自分にとって本質的に必要なものとは
第10章 達成感の最終回を探す旅へ
プロレスデビュー30周年に思うこと
天龍さんの技「53歳」を考える
50代がまっとうすべき役割とは何か
武藤さんはいまのプロレスに夢中になることを卒業したか
世の中に対して言いたいことを代弁するプロレスラー
全日本・福田社長の「バカ殿」はなぜ必要だったか
不特定多数に元気を届ける −− 筑前さんの思想
「本物の達成感を得よ」とオレは若手を洗脳する
解説 −−「プロ」としての哲学の在り処
川添 愛(言語学者)
(−A−)本書の中でTAJIRIは…
しつこいぐらいに「これはオレの考え方」といった "但し書き" をしておりまして、決して「今の日本のプロレスは間違ってる、オレの考え方が正しいんだ」と言ってはいないんですね。
例えばX(旧ツイッター)なんかでも、呟く事は基本的に「私はこう思う」という個人の意見や考え方なのが当たり前というか大前提ながらも、変に拡大解釈されて噛みつかれるのは嫌だな。という防衛本能(?)から、わざわざ「あくまで個人的意見ですが」とか但し書きしちゃうんですよねー(汗)
なので、プロレスの根本に関わるような多様な事柄を記した本書において、TAJIRIさんが何度も何度も「これはオレの意見であって、そうでないものを否定する意図はない」みたいな但し書きをしちゃうのも分かりますね…ちょっとしつこかったけど(苦笑)
(−A−)本書に書かれている内容は…
プロレスファンよりもプロレス関係者、特に "プロレスを作ってる側" の人は一読した方がいい内容な気がしますが…私のような単なるファンが読んでも充分興味深いというか、色々考えさせられる内容の一冊ですね。
(−A−)y~ムフフ