多忙につき、久しぶりの記事更新になってしまい申し訳ございません。
さて最近気になるドラマと小説がありました。社会派小説の第一人者である山崎豊子さん原作の『運命の人』です。
日曜劇場『運命の人』公式サイト
小説『運命の人』(山崎豊子氏著)Wikipedia
西山事件(1972年)Wikipedia
ドラマの開始をきっかけとして、原作を一気に読んでしまいましたが、以下の観点から小説・ドラマを考えられると思いました。
①原作小説のモデルとなった西山事件の本質
②沖縄返還密約事件の実際
③日米関係のありかた
④ドラマに対する出演者やご関係者の方の受け止め方
⑤山崎豊子氏の小説に思うこと及び小説のスタイルについて
今回を契機に西山事件については、色々と調べました。まずは、その中で最も気になった、西山太吉氏の外国人特派員協会での会見内容を掲載致します。
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「違法機密の暴露はメディアの使命」 「沖縄密約」報道で西山・元記者が外国人特派員協会で会見
外国人特派員協会(The Foreign Correspondents Club of Japan)は4月26日、東京・有楽町の会議場に西山太吉・元毎日新聞記者を招き、昼食会のあと記者会見を行なった。西山氏は約1時間余、佐藤栄作政権の「沖縄返還交渉」に関する背景を詳しく説明。「日米密約の存在が米公文書公開などで明らかになっても、日本政府は一貫して『密約はなかった』と主張し続けている」と、その不条理を厳しく批判した。その論旨は筆者(池田)を含めて既に報道されているので、ここでは氏の密約報道の経緯と日本のジャーナリズムの姿勢をめぐる外国人特派員との質疑応答を紹介したい。(池田龍夫)
──西山さんの話されたことはすべてが正しいと思う。しかし、第一報(毎日1971・6・18朝刊3面)の「400億ドル密約」に関する記事は目立たず、このほか具体的記事がなかった。どうして、明快な記事にしなかったのか。社会党の横路孝弘衆院議員に電文コピーを渡して質問させた(72・3・27衆院予算委)のはよくない。これは政治活動で、正当な取材活動ではないと思うが…。
西山 「請求権疑惑」は6・18朝刊だけでなく、ほかにも書いている。当時、請求権問題を追求しているリポーターは、毎日新聞の西山1人だった。従って大々的に書けば、外務省内外で「西山の記事だ」とすぐ分かってしまう。いろいろ考えたが、(1)はっきり書けば、ニュース源がバレル恐れがある。(2)「毎日」がいくら紙面に載せても、政府は否定し続けるだろう。この2点から紙面化に慎重になった。
沖縄返還交渉をめぐって、政府に揺さぶりをかけていた社会党は私の所にしつこく情報提供を求めてきた。ずっと社会党の要請を拒んできたものの、「〝秘密〟の存在を、国民にいかに伝達するか」を考え続けていた。そして遂に(国会閉幕寸前)、横路議員への電信文コピー提供に踏み切った。「書くか書かないか以前の苦渋の選択だった」ことをご理解いただきたい。この選択には、自分自身満足してはいないが…。
──新聞社と記者の関係について聞きたい。あの事件に懲りて、新聞社は権力におもねり、自己規制に走ったのではないか。新聞社は貴方を守ろうとしたか。
西山 一審で私は無罪だったが、ニュース提供者が有罪判決を受けた。この責任を痛感して、直ちに毎日新聞社に辞表を出した。これはこれとして、新聞社の根本的姿勢はダメだった。私の逮捕・起訴によって局面は暗転し、日本のジャーナリズムは政府の秘密・不正追及を止めてしまった。ジャーナリズムの自殺行為ではないか。
ところが、米国の情報公開によって日本のジャーナリズムは大問題に気づかされ、動き始めた。柏木雄介・ジューリック日米財務担当官が合意した「密約文書」が1988年9月米国で発掘されたのを皮切りに、2000年と2002年に「密約」を裏づける膨大な米外交文書が表に出てきた。
さらに2006年2月、当時の交渉責任者、吉野文六・元外務省アメリカ局長が北海道新聞の取材に応えて、「沖縄返還密約はあった。スナイダー米代表と自分の間で作成した文書にサインした」と爆弾発言したのである。これら動かぬ証拠を根拠に「国家賠償請求訴訟」を起こしたが、07年3月27日の東京地裁判決で「除斥期間」を理由に賠償請求は棄却された。
私の裁判(外務省機密漏洩事件)で検察側証人に立った吉野文六氏は「知らぬ、存ぜぬ」と18回も偽証し、歴代政府はその証言を唯一の根拠に、「密約はなかった」と強弁し続けてきた。その吉野氏が「密約があった」とすべてのメディアに暴露したのに、麻生太郎外相は「外務省(「密約はない」)と、吉野発言(「密約はあった」)のいずれを支持するのか。国民は外務省を支持するに違いない」と、現在も詭弁を弄している。論理的に、政府の弁明は破綻してしまっているのだが…。
読売まで、社説(07・3・28朝刊)で「『密約』の存在をいまだに否定し続ける政府の姿勢は、ちょっとおかしいのではないか」と指摘していた。
──問題の「電信文」を、どのような形で入手したのですか。これまでも「密約」はありましたか。
西山 私は当時、「秘密文書」の存在を知らなかった。「公文書」の回覧・確認のため、外務省内で各部署の事務官が書類を日常的に持ち運んでいる。私の親しい事務官がたまたま、問題の「電信文」をコピーして渡してくれた。それを読んで、初めて「日米密約」の裏取引を知って驚いた。
岸信介内閣の時に、「核持ち込み」の密約があった。このことは、『佐藤栄作日記』に記されている。また、佐藤首相も沖縄返還交渉の際、「核持ち込み」を密約していた。
──最近、中国潜水艦の火災報道をめぐって、防衛機密漏洩が問題化しました。この点をどうお考えですか。
西山 機密には、「実質秘」と「形式秘」があるが、中国潜水艦火災は実質秘ではなく、東シナ海での火災事故に過ぎない。何故あんな騒ぎになるのか。米軍の衛星探査機が火災を検知し、防衛省に流した情報がマスコミに漏洩したことを、米側が問題視して圧力をかけてきたのだろう。一般的に公開すべき情報までが、〝防衛機密〟を盾に伏せられてしまう。政府は「機密保護法強化」を狙っている。中国潜水艦報道に当たって、メディアは「この火災事故は秘密に当たらないケース」との視点からスタートすべきだった。徒に騒ぐのはよくない。今の新聞は、政府のペースにはまっているような気がしてならない。
一方、「沖縄密約」は実質秘だが、〝違法秘密〟は暴くべきだ。国家として守るべき実質秘はあるのだろうが、私が告発したような〝政府の違法秘密〟は許せない。
──最後に、西山さんの思いとアドバイスを。
西山 日本の官僚機構は異質で、完全に閉鎖社会。欧米と違って、権力構造は〝鉄壁〝だ。外務事務次官がエンペラーのような権力を持ち、都合のよい情報しか出さないのが現実だ。〝内部告発〟が最近叫ばれているが、日本では真の〝内部告発〟を期待できない気がする。だからこそ、この〝鉄壁〟を破るには、メディアの力しかないのだ。〝特ダネ〟にはイレギュラーな要素がつきまとう。〝違法機密〟のネタは並大抵のことではとれない。
日本の民主主義のレベルは低い。一方、政府権力は情報を守ろうと狂奔する。そして、機密保護法を強化し、都合のいいように情報操作して国民を誘導する。日本国民は特に外交・安保に無関心すぎる。あの沖縄・参院補選の投票率が47%台とは情けないではないか。メディアも国民も批判精神をなくして時代に流されたら一大事である。ボヤボヤしていられない。
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主張や釈明は関係双方の内容を確認する必要はありますし、当事者ご本人のインタビューという点を差し引く必要はありますが、色々と読んだ主張の中では上記内容は最も本質をついているのではないかと感じました。
1971年に沖縄返還協定において米国が支払うべき原状回復費の400万ドルを、日本政府が物品・役務で負担する基地施設改善移転費6500万ドルなどの「秘密枠」の一部として日本側が肩代わりする密約の他、日本側の支払い総額3億2000万ドルはすべてが内訳のない密約金で構成されていたと言われています。さらに協定に記載されてはいない密約分2億ドルを含めると、総額6億ドル近い金が米国に支払われていとのことです。当時は1ドルが308円なので日本円で1800億円。当時の一般会計が19兆円位だったので、日本は沖縄返還のために一般会計という国家予算の約1割を米国に渡していたことになるのです!!!しかもまだ基地や航空管制の問題が残っているのにです。これは驚きですね。
引き続き同記事(2)以降で掲載致しますのでよろしくお願い致します。