「長崎の歌は忘れじ」 (1952) 後編 | All the best for them

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好きな人と好きな人に関連するあれこれ、好きな物、家族とのことを細々と、時間があるときに綴っています。





















 

重い足取りで牧原家の離れへ戻ってきた桃子を、姉の綾子が笑顔で迎えた。

ステキなことがあったらしい。

夫・道信と南方で一緒だったという人が来て、

彼が元気そうだったと教えてくれたとのこと。

その上、琴も教えることにしたらしい。

詳しい事情を聞くために、名刺を残した客人を訪ねた桃子。

長崎人形の店の倉島は、

オクムラ?佐伯が?と不審がったが、

やがて…ありえるかもしれないと。

捕虜になってアメリカ軍の身辺調査があったとき、

捕虜になったら家族の恥になると思って、皆でたらめの名前を言ったそうだ。



叔父・宗雲と妻・多津は事実を知り愕然となる。

だが桃子ともども綾子には真実を伝えられずじまい。

そして、桃子は野上のところへ相談に訪れた。

もしあたしだとしたら

お兄さまがなくなったなんて聞かされたら耐えられないと思うわ、と春江。

桃子は、なんとかして強い気持ちを持たせてあげたいと思っていた。

野上さん、どうすればいいんでしょう?

「さあ…」 さすがの野上も考え込んで上を向いてしまう。

そこへガキンチョが、お風呂が沸いたよ と声をかけた。

「君たち、先にお入り」 だめだよ、先生が先でなきゃ。 「そうかい」 そうさ

それから表に顔を出した野上は、「お~い、薪は置いとけよ。先生が割るから」

いいよ~ 「危ないぞ~、気をつけろ」 平気だ~い。

そのときふと思いついた野上は桃子に、

「今度の日曜、子どもたちを連れてお宅へお邪魔してみましょうか?」 ええ。

「それがいいと思うんだ。あの子らは綾子さんと同じくらい、

いやもっとひどい境遇を生活してきたんですから。

その子どもらが元気に生きてくのをご覧になれば気持ちが変わると思うんです」

ガキンチョに早くお風呂に入らないと熱くなると促され、

「あ~よしよし。ちょっとしつれい」 とタオルを取りに行く野上先生だった。



綾子を訪ねた子どもたちは一緒にしりとりをして遊んでいた。

子どもたちとの会話がはずみ、

すっかり明るい笑顔を取り戻したかのように見える綾子。

野上が子どもたちに声をかけた。

(この日はいつものカーディガン姿じゃなく、スーツスタイル)

「さあ、君たちは本釜に火を入れるのを見に行こう」

社会科だね。 「あ~そうだね。 じゃっ綾子さん、ちょっと行って来ます」…

釜の周りを子どもたちが走り回っている。「騒ぐんじゃない! 静かにして」

外では桃子が春江に話している。

お姉さまね、ご自分の結婚衣裳、春江さんに着せたいんですって。

あたしたち普段着のままで済ますつもりなのよ。

よかばございませんか、と多津。一生に一度のことだもの。

(おお、ついに野上先生は春江と結婚することになったのか~

良かった~クラッカー



野上の家にて、質素ながらも心のこもった宴の席が設けられた。

スーツ姿の野上と晴れ着の春江が、野上の弟の挨拶や、

子どもたちのお祝いの言葉に笑顔を浮かべている。

綾子もうるうるしていた。

そして…着替え終わった春江や桃子、そして綾子とともに、

野上・子どもたちは長崎の町を歩く、歩く。

坂を登り、石段を登り…

教会へ行き着いた綾子と桃子。(野上たちはどこかにフェイドアウトよ~)

ここは道信との思い出の場所よとベンチにたたずむ綾子…



誰も綾子に真実を告げられないまま、クリスマスがやって来た。

教会の神父の代理でシスターが綾子を訪ねた。

彼女は、ヘンリー・グレイから神父宛に届いた手紙の内容を

知らせにやって来たのだ。そこには、

彼女の夫の臨終に立ち会った縁で彼女の目のことを非常に心配していること。

知り合いの眼科が東京に来ているので是非診察を受けて欲しい。

そして「心の真珠」の作曲がほぼ出来上がりつつあるので、

1月早々に再来日できそうだということが書かれてあったらしい。

…道信が死んでいた。

その事実を突きつけられて、綾子は絶望の淵に落とされた。

(家族の誰もが告げることが出来ていない真実を、

シスターが周知のものとして話してしまったところがどうも…

知らなかったとは言え、シスターの無神経さにかなり閉口な場面だった)

姉に事実が伝わって知ってしまったことを知った桃子は、

お兄さまの心はどこかできっと生きている、

お姉さまを見ていると励ますのだったが…



年が明けて、ヘンリーが桃子のホテルにやって来た。

東京で演奏会をするので、綾子に琴を弾いて欲しいと依頼するヘンリー。

桃子が家に帰ると、離れはもぬけの殻…

雪降る中、綾子が姿を消したのだ。

野上さんのところを見てくると桃子。

「どうしました?」 うちにいないんですの。

驚いて、春江と顔を見合わせ 「探しましょう」 

野上たちも探すが、「だめだったよ」…



綾子は、道信との思い出のベンチに座っていた。

そしたら教会からオルガンの音が聞こえてくる。

はっとしてその音の方へ近づく綾子。

そう、この曲は、ヘンリーが完成させた道信の遺作「心の真珠」だったのだ。

ヘンリーのオルガンを聞き、綾子の気持ちがだんだん晴れていった。

そこへ桃子もやって来て…2人肩を震わせる。

桃ちゃん、この音楽の中に道信さんは生きている…



そして、野上たちが見守る中、東京で演奏会が行われた。

そこには、ヘンリーの指揮で琴を奏でる綾子の姿が…



2時間を越す巨編でしたが、これは音楽劇でしたね。

賛美歌やピアノ曲やら、音楽が多様されて、これに結構時間を割かれていた。

まあ根上さんがいつ登場してくるか分からないので、

音楽も全部聴いたけど、これは好みがあると思った。

それはともかく、根上さんです。

話は綾子・桃子姉妹が中心で、野上先生的には盛り上がりシーンっていうのは

特にはなかったように思うけど、

随所随所に出て来てはステキな笑顔や真摯な表情を見せてくれて、

若き新進スターとして期待を背負っていたんだなあということが伺えました。

根上さんの大映時代の映画を見ていたら、

他の俳優さんの顔と名前も随分覚えてしまいました。

久我美子さんはもうすっかりお馴染み。

道信の山内明さんは「白蘭紅蘭」の井筒だったし、

春江の杉丘毬子さんは「稲妻」での桂だったし、

小学校の体育館の松葉杖の少女は「妻は告白する」の若尾文子さんだったし。

京マチ子さんは今回初めて見たのだけど、大映の看板女優の1人だったらしい。

根上さんとは他にも共演しているみたいだし…

あ~すっかり白黒映画にはまってしまいましたね~