「長崎の歌は忘れじ」 (1952) 前編 | All the best for them

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好きな人と好きな人に関連するあれこれ、好きな物、家族とのことを細々と、時間があるときに綴っています。





















 

夏休みももう終わりかけ。

最後を飾って、120分を超える大作の封印を解きました。

8月11日に衛星劇場で放送された「長崎の歌は忘れじ」。

見るまではテーマも重苦しそうだし、2時間以上腰を落ち着けられるか不安で、

ずっと後回しにしていたのですが、

いざ見始めると、

オープニングのあまりに壮大なオーケストラの調べに圧倒されたのと

出演者クレジットで、1頁目に京マチ子さん、アーリントン・ソールマン氏と続いて

2頁目、久我美子さんと同じ並びというgood positionに

根上淳さんの名前があったのとで、

期待に胸を膨らませて見入ってしまいました。



…大戦後のある秋のこと、

京都、広島の上空を通って、長崎に着陸した航空機から

音楽家のヘンリー・グレイが降りてきた。

旧知のブリデエヌ神父が彼を迎え、一緒に教会へ。

教会へ着くと、花屋・花菱の娘・クールビューティな春江が花を届けに来た。

父親同様陶芸のバイヤーでもあるヘンリーの今回の来日の目的は、

陶器の買い付けだけではなく、人探しであった。

~南方で米軍の勝利祝賀会に呼ばれた彼は、そこでピアノを演奏した。

兵舎の隣に捕虜の病院があり、彼の演奏を聴いていた病気の日本兵が、

楽譜と手紙を看護師を通じて託したのだ。

ヘンリーが駆けつけると、オクムラ・タカシと名乗る彼はもう虫の息で、

「心の真珠」というタイトルのそのメロディをハミングしながら死んでいった。

手紙には、日本人の心の美しさ、平和を愛する心を訴えるために作った

この交響詩曲を完成させてほしいとあった~

ヘンリーは、このオクムラの家族を探しにやって来たのだ。



ヘンリーは宿泊先のホテルロビーで、花を生けている春江に再会。

フロントには利発そうでキュートな目元が印象的な牧原桃子がいた。

ヘンリーは、ディスプレイされている陶器に目を奪われた。

この陶器は叔父・牧原宗雲の作品であると桃子に教えられ、

桃子・春江と連れ立って、ヘンリーは宗雲に会いに行く。

車中で、桃子が言った。

“Would you mind taking Harue-san to her boy friend?

(ぴぴんとひらめいた私。はは~ん、このBFというのがきっと根上さんだわね)

He lives on the way.

Her boy friend?

Yes, he is a good lover,too. しかも、He is a primary school teacher.

なんだとかラブラブ わ~お音譜 根上さんが先生?って楽しみ~

と噂をしていたら、

道を、子どもを抱えて下駄履きで走ってくる彼・野上先生の姿が~ドキドキ

「頼むよ、留守番!」と残った4人のガキンチョに声をかけて、

その子を抱えたまま大通りを走っていたら、

後ろからヘンリーの車が近づいて、振り向いた。

(髪が風になびいて、やや憂いを帯びた目にキュ~ンとなりました)

どうしたの省吾ちゃん?と春江。 「足を折ったらしいんだ」

桃子がヘンリーに病院までお願いしますと頼んで、野上さんお乗りになって。

「じゃ、お願いします」 と野上と省吾も車に乗り込んだ。

省吾は柿の木から落ちたらしい。

診察中、桃子はヘンリーと話している。

野上さんは可哀想な孤児を5人もめんどうみていらっしゃるんです。

自分のサラリーで?

もちろん小学校の先生のサラリーだけじゃ足りませんわ。

ですから、内職をなすったり、春江さんが助けたりして…

あ~そう。 ヘンリーは野上に好意を持った様子である。

そうこうしてたら、野上たちが診察室から出て来て、

「足の骨は折れてないそうです」とほっとした様子。 

ヘンリーに「ありがとうございます、色々」 と頭を下げ、

固く握手をかわす野上だった。



野上たちと別れ、ヘンリーを牧原宗雲の家へ連れて行った桃子。

原爆で家と両親を失った彼女は、姉・佐伯綾子と2人、

叔父である宗雲の家の離れを借りて住んでいるのだ。

宗雲の創る陶器に非常に感銘を受けたヘンリーは、

ある皿を手に取った。

それは、綾子の夫・道信が作曲した琴の曲「雪の幻想」の

琴の音色を表現したものであった。

離れから綾子の琴の音色が聞こえてくる。

綾子は流麗な目とふっくらした顔立ちが魅力的な、和風の艶やか美人。

原爆の光で視界を失い、

今はただ、南方へ出征した道信の帰りを、ひたすら心待ちにしていた。

その綾子の弾く「雪の幻想」が聞きたいと願うヘンリーだったが、

ヘンリーがアメリカ人と知るや否や、綾子は嫌悪感をにじませるのだった。



さて、ヘンリーが探すオクムラの手がかりは市役所でも分からず、

新聞に出した尋ね人広告で会った奥村のぶも別人であった。

のぶが帰ったあとロビーでピアノを弾いていたヘンリーだが、

ある考えが浮かび、非番だった桃子に会いに行く。



桃子はこの日、小学校の体育館でコーラスの練習中だった。

校庭では野上先生が、なんと体育の授業中。

「1,2,3,4、~」 号令をかけながら生徒たちの前で、

腕を頭上で合わせたりひらいたり。

(白いトレーニングウェア姿のめちゃスリムな根上さんにちょっと驚きにひひ


車が止まる音が聞こえて、先生が「やめ~」っと号令をかけた。

車から出てきたヘンリーを見つけ、笑顔で会釈すると、

ヘンリーも笑顔で手を振った。



I wanted to console Nogami-san's boy. (野上さんのお宅にお伺いしたい)

桃子に会ったヘンリーがまずこう切り出した。

そして、あと10日しか日本にいることが出来ない彼は、

桃子に interpreter として又musical assistantとして、

一緒に旅行してほしいと請う。

オクムラの音楽完成のためにもっと日本を知りたくなったのだ。

ホテルでの勤めがあるといったんは断った桃子だが、

ホテルの支配人には許可をもらう、

さらにサラリーもホテルよりはずむと言われ、心が揺らいだ。

そして、コーラス練習生の願いで、ヘンリーは「TREE」を披露するのだった。

彼の力強い歌声が学校中に響き渡り、

野上先生も腕を組んでじっと聞き入っていた。



ヘンリーと並んで帰る途中、桃子は通りの店で椅子を見つけた。

姉・綾子は、道信がくつろぐための、

木彫りのある足の低い椅子を欲しがっていた…

そして、野上家を訪れたヘンリーは椅子に座っている~

その椅子がガタッと壊れて…野上さん、ちょっと慌てる。

しまった~って感じの表情。

(このとき初めてドアップになった根上さんだけど、わっ若い!!

もしかして私が今まで見た中で一番若いかも…

まだ学生っぽさが残るような可愛い雰囲気なんだけど、

真っ直ぐに前を見据えたキリリとした目がとっても印象的で、

見るからに嘘のない誠実さが溢れてた)



「あ~しつれいしました」 慌てて椅子を片付ける野上に、

「柿の木じゃなくて良かった~」と省吾の頭をなでるヘンリー。



炊事場では、春江が桃子と会話中。

すみません、お客さまに手伝わせて と春江。

あ~ら、あなただってお客さまじゃないの。

まるでもう野上さんの奥さまみたいな言い方ね と桃子。

いやだわ~

でもどうなの?あなた方の結婚。お父さんやお母さんまだ反対なすってんの?

ええ、でも平気そんなこと。あたしたちの気持ちは変わらないんですもの。

まあ、ご立派、一本。



一方、ヘンリーは、野上さん、あなたのしておられることは良いことですね。

「いやあ」と照れる野上さん。

私にも援助させていただけませんか?

もう少し広い家を立てるためのお金だけでも。

「ありがとうございます。

しかし…私たちはまだあなたに助けていただく資格はないんです。

今度の戦争で

アメリカにも父や夫を失って悲しんでる人たちがたくさんいるはずです。

まずその人たちを助けてあげてください。

私たちにはまだあなたに助けていただく資格がないんです」とうつむく野上。

そんなことはもうpastのことです とヘンリー。

「いやあ、私たち日本人の罪はまだ償われていません。

私は自分の傷は自分の苦しみで治さなければならないと思うんです。

(少しはにかみ)もし、どうしてもだめなら、そのときはお願いするかもしれません」

野上の言葉に感銘したのかヘンリーは、野上の手を両手で包んだ。

野上さん、戦争のことは忘れましょう。

「ほんとに忘れたいと思います」 野上も手を添えた。

「この子どもたちはもう二度と間違ったミリタリズムの味方にはならないでしょう。

あの惨めな戦争を経験して子どもたちは徹底的な平和主義者になりましたから。

これを読んでいただければ、そのことが分かっていただけると思います」

野上は棚から一冊の文集を差し出した。

何ですか?

「子どもにあの日のことを書かせたものです」

composition? 「そうです」

子どもに読んで欲しい。

読む行為で悲しみや怒りが分かると思うからと言うヘンリーに、

「よく分かりました。おい、良吉、これ読んでごらん。

読めるだろ?お前が書いたんだから。さっ読んでごらん」

良吉が読み始めると、電燈が点滅し始めた。

天井をしばし見つめる野上さん。

ついに停電。 「台所のいつもの棚にあるでしょ」と野上の声が台所に飛び、

春江がろうそくを探して火を点けた。

「見えるかい?」

良吉は読み始めた…

戦争は恐ろしいものです。やめた方がいいですという良吉を

じっと見守る野上先生だった。

(戦争に対する冷静な思いを静かに語る野上先生が、

またまたリアル根上さんに重なって、色々な思いが交錯するシーンでした。

野上先生の子どもたちへ向ける視線がとても温かで、ジ~ンときました)



桃子は…見つけた椅子のことを宗雲に託して、

そして、反対する姉を押し切って、ヘンリーの旅に付き合うことに。

10日間の旅ももう終わるというそのとき、桃子の胸にはこみあげるものがあった。

ヘンリーもますます日本が好きになりましたと言う。

そして、オクムラが残した「心の真珠」をピアノで弾き始めた。

じっと聴いていた桃子は、はたっと気づいた。

そのメロディは?と桃子が尋ねる。

オクムラのメロディです。

このメロディをハミングしながらオクムラは死んでいったというヘンリーの言葉に

愕然とする桃子。

これは姉の夫の作った曲ですわ。

兄のほかにこのメロディを知っている方があるとは考えられない。

この曲のテーマは姉が弾く「雪の幻想」という琴の曲と同じですわ…

事実を知った桃子は、兄のことを待っている姉が可哀想だと涙をながす。

そんな桃子にヘンリーは、このシンフォニックに姉さんの琴を使うと約束し、

アメリカへ帰って行った。

そして桃子も長崎に戻った…