「妖精は花の匂いがする」 (1953) 前編 | All the best for them

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好きな人と好きな人に関連するあれこれ、好きな物、家族とのことを細々と、時間があるときに綴っています。





















 

やっぱり恋愛物が一番ってことで、「白蘭紅蘭」に続いてこの映画を見た。

紅蘭役で小悪魔的魅力をふりまいていた久我美子さんが、

ここでは真面目で利発な苦学生。あまりのイメチェンに驚いたのだけど、

それ以上にびっくりだったのが、根上さんだった。



舞台は大阪近郊の私立女子大ということなんだけど、

どうも関学のキャンパスが使われたそうで、ちょっと懐かしい~

あの時計台そうなのかな?(見事不合格だったけど)

で、ヒロインの小溝田鶴子は授業料滞納で掲示板に告知されていた。

落ち込む田鶴子を親友の米川水絵が励まして…という始まり。

米川水絵は、丹下先生が大好き。渋くてダンディな2枚目の先生だけど、

私から見たら女子大生とは年齢差がありすぎるような気も…

まあ、この先生、とてもモテるんだけど、

水絵の独占欲が強すぎて、ちょっと辟易って感じ。

研修旅行で先生以下仲間と奈良に行く予定なのだが、

友人からからかわれるのが嫌な水絵は、

先生と2人で京都へ行こうとわがままを言う。

そんなやりとりをしながら、

2人歩いている光景を橋の上から微笑ましく見つめている田鶴子。

バイトがあるからと先に大学を出たのだ。

バイトとは書店のプラカード持ち。通行人にからかわれながらも

黙って立っていると、そこを先ほどの2人が通りかかった。

水絵は気づかない様子だったが、

丹下は彼女をじっと見て、そのまま声もかけずに行ってしまった。

彼の態度に少し悲しくなってしまった田鶴子。

そこへ、「よお~っ」と威勢のいい声が聞こえた。えっ?根上さん?

荷車をつけた自転車をこいで、田鶴子の側に来た彼、

プラカードをちらりと見て、「な~んだ、つまんねえバイトしてやんなあ」と一言。


うそって感じの風貌でした。

まず映ったのが、ぼろぼろに穴があいて底がはがれかけのズック、

そして色あせたズボンにちんちくりんの学ラン。安っぽい綿の帽子。

ひょえ~でしたよ。

若かりし頃の根上さんと言えば、どことなくお坊ちゃま風吹かしているような

丁寧な言葉遣いのジェントルマンのイメージが私にはあったから。

目の前のいかにも貧乏ですといった学生姿は、ガテン系の香りすらして、

思い描いていたイメージとはかけ離れていたけど、

人懐っこそうな笑顔と頼りがいのありそうな男らしい雰囲気で、

いっぺんに虜になってしまった恋の矢


唐木さんだって似たようなもんじゃないの?な~に、その顔、と

田鶴子に言われて炭のついた鼻の下をこする唐木さん、めっちゃ可愛い音譜

「腹がへってかなわねえよ。飯でもどう?何か食おうか?」

ええ、今何時? 唐木の腕時計を見て、でもあと20分 という田鶴子。

「じゃあこれ置いてくから、ここで待ってくれよ」 唐木は自転車をこいで行った。



2人が入った先は、ホルモン・串カツのお店。

カウンター席に腰掛けている2人。な~に、あれ?

「豚の心臓。こっちは何だ?まさか猫の脳みそじゃねえだろうな。

(割り箸を彼女に渡して)どした?」

気持ち悪くなりそう… 「柄にもない」 

主人と目が合ってお茶目な表情を見せる唐木さん、ポッケから煙草を

取り出して、テーブルにポンと置いて、酒をすすっていたら、

串焼きが運ばれてきた。山椒をパラパラかけて

「絶対うまいんだ~」と口に入れた。

わりかんね。それでなくちゃいや、と田鶴子。

「水臭いこというなよ。今日炭運びで300円入ったんだよ」

でもイヤ、ご馳走になるの 「じゃあ、どうぞご自由に」

一呼吸入れてから田鶴子が挨拶した。

どうもお久しぶりでございました。 「そう度々脅かさないでくれよ~」

でもさっきはロクな挨拶も出来なかったでしょ。びっくりなさった?

「いや。キミの勇敢なのはあの選挙の応援演説の時に分かっているけどさ。

しかしプラカード持ってたとは…」

よく逃げ出さなかったのね。 「逃げ出す?」

毎日顔合わせながら見て見ぬふりをしていく人もあるわ。

「そんな奴、軽蔑してやるよ」 そして酒をすすって

「キミ、どうして酒飲まないの?」 学生ですもの。

「学生が酒飲んじゃいけないの?」 女ですもの。

吹き出して「キミが?女?」 あらそんなに女らしくない?

「ううん」 と又酒をすする唐木。

足元の貧乏ゆすりを見た田鶴子は、唐木の足をポンとたたいて、

下品ね。だ~いきらい。と一言。

「こんなとこで上品ぶったってしょうがねえさ」 この店、男の人ばかりね。

「ふ~ん」と鼻の下をこすりながら、「なるほど、女らしいとこもある」

ふふ、でも女らしくなってちゃ生きてゆけないでしょ。

たくましく一生懸命よ。 「キミ、両親は?」

死んだの。大陸で。引き揚げ者よ、私たち。姉と2人っきり。

「大陸で散々搾取して、贅沢な暮らししてたんだろ?」

そう、父がね。会社を持って。罪滅ぼしよ。

だから今苦労して、大いに気概感じてるの。

「そうかなあ、さっきはだいぶんしょんぼりしてたけどなあ。プラカード持って」

だってほんとにお腹が空いてたんですもの。この鶏おいしいわね

微笑む田鶴子をまじまじ見つめていた唐木、

「しかしキミ…何かないの、他にバイト?」

今これ考えてんの。と彼女が出した紙片を見る唐木。

(堂島・東洋ホテルにあるMPクラブが絵画モデルを募集する広告)

「どれ、モデル募集、MPクラブ?聞いたことねえな。インチキインチキ。

何されるか分かんないんだぜ」 でもお金になるんでしょ?

「よしたまえ、それこそ下品だよ」 どうして?何が下品?

「そんなに金がいるなら僕が何か探す」 紙片を取り上げびりっと破く彼。

一杯飲み干し、ニコリと笑い 「ごめん」 そして串を一本彼女に差し出した。

「もう一つどう?」 田鶴子はそれを受け取り食べ、

唐木は「おやじ~、もう一つ」と酒をおかわりした…



さて、水絵の元には丹下から電話が。今回は皆と奈良へ行きましょうと。

小溝くんを見習って、自分を殺すことを考えなさいと言う丹下に、

かなり立腹の水絵。

(先生はやはりプラカード持ちをする田鶴子の心をしっかり分かっていたんだ)

そんな水絵には、名倉との見合い話が持ち上がっていた。

そして田鶴子のアパートでは、病気の姉が、

田鶴子に苦労かけっぱなしであることを嘆いている。



翌日、奈良にて…寝坊して時間に遅れた田鶴子だが、1人仏像を見ていたら、

偶然そこへ丹下がやって来た。

歓談しているところに水絵が来て、田鶴子に嫉妬する。



腹いせにか、田鶴子が滞納している授業料を、裕福な水絵が払ってしまった。

水絵のことは好きだが、変に同情してほしくない田鶴子は

お金を作るため、MPクラブの面接に望んだ。

面接官がこれまた名倉で、田鶴子に一目ぼれした名倉は、彼女を採用する。

一方、丹下もまた、困窮している田鶴子のために、

自分の翻訳原稿の清書を彼女に頼もうと、さらに授業料まで払うと申し出た。

プラカードを持つ田鶴子を見ていらないし、モデルのバイトにも反対だ と

いう丹下の言葉に、少し揺らぐ田鶴子。そして放課後、丹下宅へ招かれた。



会社にいる名倉は、例の水絵との見合い写真を見ているが乗り気でない。

そこへ田鶴子からモデルを断る電話が入った。

その後丹下宅へ向かう彼女。

だが、水絵に先を越された。

見合いすることになったと丹下に泣きついてきた水絵。

そんな彼女に奈良の2ショット写真を半かけだったよと見せる丹下。

水絵は気落ちする。

そこに田鶴子がやって来て…

丹下と水絵が一緒にいるところを見て、驚く田鶴子。

部屋に入ってきれいに写った2ショット写真はもらったものの、

原稿清書のバイトは断り、そそくさと家を出た。

水絵も後に続いて家を出て、2人並んで歩いていたが…

愛する男を巡って、2人の友情にひびが入りかけな様子。

田鶴子にやきもちを妬く水絵が立腹して、途中別れてしまう。



そんな田鶴子をアパートで待つのが…

右足は白、左足は黒の靴下を履いた彼。

ベランダの縁に腰かけて、なんとフルートを吹いています。

(もちろん音は吹き替えですよ)

曲が終わって、吹き口を拭って…

田鶴子姉が、すいませんねえ、初めていらしたのにそんなことまでさせて…

「いやあ、慣れてますよ、毎日やってますから」と鍋の火を見る。

ほんとに田鶴子は早く帰ってくればいいのに…

「小溝くん、今度の新しいバイトのこと、何も言ってませんでしたか?」

いいえ別に。もらったんですかお仕事?

「いやあ、僕もよくは…そうですか、何も相談ありませんでしたか」

田鶴子が階段を上がってきた。ただいま~、あらっ?来てらしたの?

炊事までしていただいたんですよ、と姉。

すいません、そんなことまで…

「いやあ、姉さん、もうどうぞお休みになって。(小声で)モデル実行したの?」

ううん。「それだけはやめさせたいと思ってさ」

ふふっ、みんな同じこと言うのね。

モデルってちっとも恥ずかしくないんじゃないの。

芸術の完成を助けるんでしょ。もしもモデルが…」 田鶴子の声が大きくなり、

「聞こえるよ!」と彼女の腕をたたく唐木。

あたしね、とにかくお金が欲しいのよ。 「裸になれって言われたらどうする?」

なるわ! 「なるの?裸に?」 自然の姿ですもの。

「キミは世間知らずのお嬢さんだからな~」 お嬢さんなんてイヤ!

そこで唐木のフルートを見つけた田鶴子、これ、あなたの?

「ああ、僕の恋人だよ」 

まあ、あなたにこんな趣味があったのね。見直したわ、ねっ、聞かせて。

鼻の下をこすって彼は演奏を始めた。

いい音色…曲の合間に彼女の一言を聞いて、

ちょっと照れくさそうに鼻の下をフルートの吹き口でこする彼。

おどけた表情が、とてもキュートでしたラブラブ!

そして再び演奏を続けて…

次第に感極まったのか、田鶴子はそっと部屋に入り、

ポケットに入れていた先ほどの丹下との2ショット写真を眺めて、

涙ぐむのであった。

(う~ん、どうやら田鶴子も丹下のことが気になっているようで…

唐木には友情しか感じていないような気がしてきた私。そうなんだよなあ。

今のところ唐木を見る目にラブラブ光線が溢れていないもん。

もちろん唐木が田鶴子にラブなことは間違いないんだけど…

今回は振られてしまうのだろうか…頑張れ~唐木さんメラメラ