やっぱり恋愛物が一番ってことで、「白蘭紅蘭」に続いてこの映画を見た。
紅蘭役で小悪魔的魅力をふりまいていた久我美子さんが、
ここでは真面目で利発な苦学生。あまりのイメチェンに驚いたのだけど、
それ以上にびっくりだったのが、根上さんだった。
舞台は大阪近郊の私立女子大ということなんだけど、
どうも関学のキャンパスが使われたそうで、ちょっと懐かしい~
あの時計台そうなのかな?(見事不合格だったけど)
で、ヒロインの小溝田鶴子は授業料滞納で掲示板に告知されていた。
落ち込む田鶴子を親友の米川水絵が励まして…という始まり。
米川水絵は、丹下先生が大好き。渋くてダンディな2枚目の先生だけど、
私から見たら女子大生とは年齢差がありすぎるような気も…
まあ、この先生、とてもモテるんだけど、
水絵の独占欲が強すぎて、ちょっと辟易って感じ。
研修旅行で先生以下仲間と奈良に行く予定なのだが、
友人からからかわれるのが嫌な水絵は、
先生と2人で京都へ行こうとわがままを言う。
そんなやりとりをしながら、
2人歩いている光景を橋の上から微笑ましく見つめている田鶴子。
バイトがあるからと先に大学を出たのだ。
バイトとは書店のプラカード持ち。通行人にからかわれながらも
黙って立っていると、そこを先ほどの2人が通りかかった。
水絵は気づかない様子だったが、
丹下は彼女をじっと見て、そのまま声もかけずに行ってしまった。
彼の態度に少し悲しくなってしまった田鶴子。
そこへ、「よお~っ」と威勢のいい声が聞こえた。えっ?根上さん?
荷車をつけた自転車をこいで、田鶴子の側に来た彼、
プラカードをちらりと見て、「な~んだ、つまんねえバイトしてやんなあ」と一言。
うそって感じの風貌でした。
まず映ったのが、ぼろぼろに穴があいて底がはがれかけのズック、
そして色あせたズボンにちんちくりんの学ラン。安っぽい綿の帽子。
ひょえ~でしたよ。
若かりし頃の根上さんと言えば、どことなくお坊ちゃま風吹かしているような
丁寧な言葉遣いのジェントルマンのイメージが私にはあったから。
目の前のいかにも貧乏ですといった学生姿は、ガテン系の香りすらして、
思い描いていたイメージとはかけ離れていたけど、
人懐っこそうな笑顔と頼りがいのありそうな男らしい雰囲気で、
いっぺんに虜になってしまった
唐木さんだって似たようなもんじゃないの?な~に、その顔、と
田鶴子に言われて炭のついた鼻の下をこする唐木さん、めっちゃ可愛い
「腹がへってかなわねえよ。飯でもどう?何か食おうか?」
ええ、今何時? 唐木の腕時計を見て、でもあと20分 という田鶴子。
「じゃあこれ置いてくから、ここで待ってくれよ」 唐木は自転車をこいで行った。
2人が入った先は、ホルモン・串カツのお店。
カウンター席に腰掛けている2人。な~に、あれ?
「豚の心臓。こっちは何だ?まさか猫の脳みそじゃねえだろうな。
(割り箸を彼女に渡して)どした?」
気持ち悪くなりそう… 「柄にもない」
主人と目が合ってお茶目な表情を見せる唐木さん、ポッケから煙草を
取り出して、テーブルにポンと置いて、酒をすすっていたら、
串焼きが運ばれてきた。山椒をパラパラかけて
「絶対うまいんだ~」と口に入れた。
わりかんね。それでなくちゃいや、と田鶴子。
「水臭いこというなよ。今日炭運びで300円入ったんだよ」
でもイヤ、ご馳走になるの 「じゃあ、どうぞご自由に」
一呼吸入れてから田鶴子が挨拶した。
どうもお久しぶりでございました。 「そう度々脅かさないでくれよ~」
でもさっきはロクな挨拶も出来なかったでしょ。びっくりなさった?
「いや。キミの勇敢なのはあの選挙の応援演説の時に分かっているけどさ。
しかしプラカード持ってたとは…」
よく逃げ出さなかったのね。 「逃げ出す?」
毎日顔合わせながら見て見ぬふりをしていく人もあるわ。
「そんな奴、軽蔑してやるよ」 そして酒をすすって
「キミ、どうして酒飲まないの?」 学生ですもの。
「学生が酒飲んじゃいけないの?」 女ですもの。
吹き出して「キミが?女?」 あらそんなに女らしくない?
「ううん」 と又酒をすする唐木。
足元の貧乏ゆすりを見た田鶴子は、唐木の足をポンとたたいて、
下品ね。だ~いきらい。と一言。
「こんなとこで上品ぶったってしょうがねえさ」 この店、男の人ばかりね。
「ふ~ん」と鼻の下をこすりながら、「なるほど、女らしいとこもある」
ふふ、でも女らしくなってちゃ生きてゆけないでしょ。
たくましく一生懸命よ。 「キミ、両親は?」
死んだの。大陸で。引き揚げ者よ、私たち。姉と2人っきり。
「大陸で散々搾取して、贅沢な暮らししてたんだろ?」
そう、父がね。会社を持って。罪滅ぼしよ。
だから今苦労して、大いに気概感じてるの。
「そうかなあ、さっきはだいぶんしょんぼりしてたけどなあ。プラカード持って」
だってほんとにお腹が空いてたんですもの。この鶏おいしいわね
微笑む田鶴子をまじまじ見つめていた唐木、
「しかしキミ…何かないの、他にバイト?」
今これ考えてんの。と彼女が出した紙片を見る唐木。
(堂島・東洋ホテルにあるMPクラブが絵画モデルを募集する広告)
「どれ、モデル募集、MPクラブ?聞いたことねえな。インチキインチキ。
何されるか分かんないんだぜ」 でもお金になるんでしょ?
「よしたまえ、それこそ下品だよ」 どうして?何が下品?
「そんなに金がいるなら僕が何か探す」 紙片を取り上げびりっと破く彼。
一杯飲み干し、ニコリと笑い 「ごめん」 そして串を一本彼女に差し出した。
「もう一つどう?」 田鶴子はそれを受け取り食べ、
唐木は「おやじ~、もう一つ」と酒をおかわりした…
さて、水絵の元には丹下から電話が。今回は皆と奈良へ行きましょうと。
小溝くんを見習って、自分を殺すことを考えなさいと言う丹下に、
かなり立腹の水絵。
(先生はやはりプラカード持ちをする田鶴子の心をしっかり分かっていたんだ)
そんな水絵には、名倉との見合い話が持ち上がっていた。
そして田鶴子のアパートでは、病気の姉が、
田鶴子に苦労かけっぱなしであることを嘆いている。
翌日、奈良にて…寝坊して時間に遅れた田鶴子だが、1人仏像を見ていたら、
偶然そこへ丹下がやって来た。
歓談しているところに水絵が来て、田鶴子に嫉妬する。
腹いせにか、田鶴子が滞納している授業料を、裕福な水絵が払ってしまった。
水絵のことは好きだが、変に同情してほしくない田鶴子は
お金を作るため、MPクラブの面接に望んだ。
面接官がこれまた名倉で、田鶴子に一目ぼれした名倉は、彼女を採用する。
一方、丹下もまた、困窮している田鶴子のために、
自分の翻訳原稿の清書を彼女に頼もうと、さらに授業料まで払うと申し出た。
プラカードを持つ田鶴子を見ていらないし、モデルのバイトにも反対だ と
いう丹下の言葉に、少し揺らぐ田鶴子。そして放課後、丹下宅へ招かれた。
会社にいる名倉は、例の水絵との見合い写真を見ているが乗り気でない。
そこへ田鶴子からモデルを断る電話が入った。
その後丹下宅へ向かう彼女。
だが、水絵に先を越された。
見合いすることになったと丹下に泣きついてきた水絵。
そんな彼女に奈良の2ショット写真を半かけだったよと見せる丹下。
水絵は気落ちする。
そこに田鶴子がやって来て…
丹下と水絵が一緒にいるところを見て、驚く田鶴子。
部屋に入ってきれいに写った2ショット写真はもらったものの、
原稿清書のバイトは断り、そそくさと家を出た。
水絵も後に続いて家を出て、2人並んで歩いていたが…
愛する男を巡って、2人の友情にひびが入りかけな様子。
田鶴子にやきもちを妬く水絵が立腹して、途中別れてしまう。
そんな田鶴子をアパートで待つのが…
右足は白、左足は黒の靴下を履いた彼。
ベランダの縁に腰かけて、なんとフルートを吹いています。
(もちろん音は吹き替えですよ)
曲が終わって、吹き口を拭って…
田鶴子姉が、すいませんねえ、初めていらしたのにそんなことまでさせて…
「いやあ、慣れてますよ、毎日やってますから」と鍋の火を見る。
ほんとに田鶴子は早く帰ってくればいいのに…
「小溝くん、今度の新しいバイトのこと、何も言ってませんでしたか?」
いいえ別に。もらったんですかお仕事?
「いやあ、僕もよくは…そうですか、何も相談ありませんでしたか」
田鶴子が階段を上がってきた。ただいま~、あらっ?来てらしたの?
炊事までしていただいたんですよ、と姉。
すいません、そんなことまで…
「いやあ、姉さん、もうどうぞお休みになって。(小声で)モデル実行したの?」
ううん。「それだけはやめさせたいと思ってさ」
ふふっ、みんな同じこと言うのね。
モデルってちっとも恥ずかしくないんじゃないの。
芸術の完成を助けるんでしょ。もしもモデルが…」 田鶴子の声が大きくなり、
「聞こえるよ!」と彼女の腕をたたく唐木。
あたしね、とにかくお金が欲しいのよ。 「裸になれって言われたらどうする?」
なるわ! 「なるの?裸に?」 自然の姿ですもの。
「キミは世間知らずのお嬢さんだからな~」 お嬢さんなんてイヤ!
そこで唐木のフルートを見つけた田鶴子、これ、あなたの?
「ああ、僕の恋人だよ」
まあ、あなたにこんな趣味があったのね。見直したわ、ねっ、聞かせて。
鼻の下をこすって彼は演奏を始めた。
いい音色…曲の合間に彼女の一言を聞いて、
ちょっと照れくさそうに鼻の下をフルートの吹き口でこする彼。
おどけた表情が、とてもキュートでした
そして再び演奏を続けて…
次第に感極まったのか、田鶴子はそっと部屋に入り、
ポケットに入れていた先ほどの丹下との2ショット写真を眺めて、
涙ぐむのであった。
(う~ん、どうやら田鶴子も丹下のことが気になっているようで…
唐木には友情しか感じていないような気がしてきた私。そうなんだよなあ。
今のところ唐木を見る目にラブラブ光線が溢れていないもん。
もちろん唐木が田鶴子にラブなことは間違いないんだけど…
今回は振られてしまうのだろうか…頑張れ~唐木さん)