井上尚弥の入場曲はあれでいいのか?(前編) | 名盤アーカイヴ ~JAZZ・FUNK・FUSIONを中心に~

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管楽器が活躍するジャズ・ファンク・フュージョン・ブラスロックなどを紹介します。更新はゆっくりですが、いずれは大きなアーカイヴに育てていきたいなと思います。好きな音楽を探すのにお役立ていただければ幸いです。なお、過去記事はちょいちょい編集・加筆します。

ども、らっぱ小僧です。

 

先日はボクシングの世界スーパーバンタム級王座統一戦 井上尚弥VSマーロン・タパレス を観ておりました。試合は楽しく見たのですが、井上尚弥の入場曲について一言いいたくなったので、今日はそれをお話ししたいと思います。

 

 観るべきは試合そのもので、入場曲ごときに何かいちゃもんをつけるのは野暮なことは承知の上です。ただし、これは色んな問題を含んでいてボクシング・格闘技に限らず、音楽・エンターテインメントに興味を持つ方にも幅広く読んでいただければと思って書いております。

 

 

  井上尚弥が凄いことになっている

 

 まずはボクシング詳しくない方もいらっしゃると思うので、簡単にこの試合の位置付けから語っておきましょう(ボクシングと井上尚弥の基本的な話なので「そんなん知っとるわ!」という方はこの章は読み飛ばして頂いてかまいません)

 そもそも井上尚弥というボクサーは、現在、世界ボクシング界の最強と呼ばれるトップ・オブ・トップの一角であり、既に過去日本人が到達したことのない高みにいる「生ける伝説」なのです。それを端的にあらわすものとしてパウンド・フォー・パウンド・ランキング(以下PFP)と呼ばれるものがあります。PFPとは階級で隔てられたボクシングの中で「もし同じ体重で戦ったら誰が一番強いか」を考えて作るられるランキングです。現在、井上尚弥は 権威あるボクシング紙「リング」紙上のパウンド・フォー・パウンドランキングでテレンス・クロフォードに次ぐ2位にランキングされています(「リング」以外のPFPも概ね同等の評価)。

 

 PFPは、所詮「たられば」に過ぎません。階級に隔てられたボクシング界では軽量級の選手と重量級の選手が戦うことは無く、強さの比べようが無いからです。しかしながら色んな階級に数多くの世界チャンピオンが乱立するボクシング界の中で、競技の「顔」を決めるものとしてPFPにはそれなりの意味があります。その中で2位にランキングされていることは井上尚弥が今現在、世界最強の一角を占めていることを認められている証でもあるのです。

 また井上が戦う軽量級は世界的には中量級・重量級に比べてどうしても注目度が低く扱いも軽いのですが(例えるなら野球のMLBとNPBぐらいの差)、最近はそれを超えて評価されつつあります。井上を評価する際にはレジェンドであるマニー・パッキャオがよく引き合いに出され、井上のことを「NEXTパッキャオ」と呼ぶ声も高くなりつつあります

 

 その井上尚弥の試合が12月26日に東京・有明アリーナで行われたわけです。観客は1万5千以上、さらにはドコモ傘下のLemino独占配信して莫大な金が動いています。配信まで含めれば間違いなくアジア屈指の格闘技イベントです(正直なところ正確なデータが無いのでRAIZINやONEと比べてどの程度かという比較は私には出来ていません。詳しい方が居れば教えてください)。

 

  20年前のドラマのテーマ曲...

 

さて、やっとここからが本題です。試合の内容じゃありません。いや、試合の内容も全然話したいんですが、そっちには別に言うこと無いというか、不満は無いというか...私がこのブログでしゃべりたいのは、井上尚弥の入場曲についてです

 

 兎にも角にも、以下の曲を聴いていただければと思います(一応、違法アップロードの疑いのある動画を貼るのは控えようと思いまして、曲のみSpotifyから貼り付けています。入場シーンが観たい方はLEMINOに加入するか、「何とかTUBE」を検索してみてください)。

 

「DEPARTURE」

 

実際の入場の時のアレンジは流石にちょっと豪華にしてます。

 

「この曲なんか聞き覚えあるな~、TBSの「世界遺産」のテーマだっけか?」とか思ってたんですが、調べてみると違いました。これ、おなじTBSでもキムタクがパイロットを演じた「GOOD LUCK」(2003)のテーマ曲ですね。

 

 あらかじめ言っておくと、曲そのものに罪はないと思います(だからと言って良い曲だとはいいませんが)。映像音楽なので、それ単体で評価される必要は無く、映像の中で機能していれば十分。加えて日本のお茶の間で流れるドラマのテーマ曲ですから、高尚なもの・尖ったものでもある必要は無い。むしろわかりやすく陳腐であるぐらいがちょうどよい。

 

しかし、ですよ。令和に入って5年もたつのに、ましてや世界のボクシングファンに観てもらいたいイベントでこれを流すセンスはどーなのよ?って思いません?曲に罪はないと言いましたが、この曲を選ぶセンスははっきり言ってダサい。イベントの、ひいては井上尚弥のブランドを安くしていると思います。

 

 逆に言えば、日本国内向けのイベントでしかないことの証明かもしれません。この曲は平均的な日本人にはなんとなく聞き覚えがあって、これを聴いたときには「希望」とか「旅立ち」がふんわりと感じられるのでしょうが、海外の格闘技ファンが観たら絶対に「陳腐」「ダサい」と思うことでしょう。つまりは、そこにマーケテイングをするつもりが無くて、日本人が観てくれたらそれでいいという制作側の意思が伝わってきます。そこには興行を通じて井上尚弥という才能の価値を、ボクシングという国際的な競技の中で高めていこうとする志は感じられません。

 

 格闘技に限った話ではありませんが、日本のエンターテインメントの「自分たち(日本人)さえ感動できれば、そしてそこに向けて商売してればそれでいい」的なノリは本当に何とかしてほしいです。以前、東京オリンピックの開会式をブログでこき下ろしましたが、同じ匂いを感じます。(東京オリンピックの開会式について書いた記事はこちら

 

 …とここまでで2000字を超えてしまったので、「じゃあ、どうすればいいんだよ!」というのは(後編)として近日中にアップしたいと思います。