認知行動療法と出会ったことは僕の人生にとってかなり大きかったと思う。
- 認知行動療法に取り組んだ経緯
- カウンセリングでのやり取り
- 自分の思考を客観視するためのトレーニング(←いまココ)
そのクリニックには2年近く通ったと思う。
診察とカウンセリングというパターンはそのうち1年半くらいだろうか。
最初はカウンセリングも毎回行われ、集中的に認知療法を浴びせられたし、そのメソッドで取り組めるプリントを渡されて、日常の出来事のなかでの出来事と自分の思考・感情を書き込むように指導された。
その時のプリントはもう手元にないが、
①起こった出来事(例えば、新しい業務が増えた、とか)
②その時考えたこと(例えば、上手くいきそうにない、とか)
③その時の気持ちとその程度(例えば「不安70%」とか)
という、自分の主観を記述させる部分と、
④どうして②のように考えたのか(例えば、前も失敗したから、とか)
⑤その考えは合理的なのか(例えば、前も失敗したから今回も必ず失敗するのか、とか)
という、自分の主観を第三者になったつもりで検証していくパートに分かれていたように記憶している。
カウンセリングでは、そのプリントを基にカウンセラーと一緒に追体験したり僕の考えを検証したりするのだが、最初のころは、④や⑤は難しかった。
自分がある感情を抱いた理由を、筋道立てて客観的に説明するということはなかなか難しい。
それだけ、①⇒②⇒③と、自分の頭の中では一瞬に反応しているということだろう。
専門的には「自動思考」というらしい。
例えば、上司からある仕事を言いつけられて、
「いや、そりゃ無理でしょ」
「うまくいかないに決まってる」
「それをさせられる自分は面倒に巻き込まれる」
「いやだな、不安で仕方ないよ」
というようなっことが、頭の中で一瞬にして成立しているところを、
「なんで、あの時、うまくいかないと思ったかというと…」
「そうそう、以前、類似の事案を処理させられた時があった」
「その時、あのセクションと、こういうふうに折衝でトラブったことがあった」
「それを踏まえて、今回のことを考えると、またあのセクションからこういう反対の声に直面するだろう」
「それは多分うちのセクションとしては受け入れられない声だろう」
「その両者の板挟みになるポジションに自分は追い込まれてしまうだろう」
といったふうに分解して説明しなければならない。
さらに、これらを⑤のところでは、自ら反駁していかなければならないのだが、これがまた難しい。
自動思考というくらい、自分の頭の中では、当然のことと考えている。
それを、敢えて第三者になったつもりで反論をしていかなければならない。
自分の思考に距離を置くという事だと思うけど、なかなか離れられない。
自分のことだ思わず、
「友達がそういう状況で悩んでいたとして、どうアドバイスするか」
を考えてみるとよいとも言われた。
また、こういう視点で反論してみて、と言われた。
① ゼロか100かの二者択一みたいになってないか。
② 悪い方へ、悪い方へとマイナスのことのみ考えていないか
③ マイナスに思えたことを、さらに拡大して考えていないか
④ 絶対にこうだ、と極端に決めつけていないか
専門的には、こういうことだそうです。
例えば、
・前回上手くいかなかったからといって、今回も同じようにうまくいかないと思う根拠は、本当にそうなのか。
・反対の声が上がるとして、それは受入れる余地が全くないものだと、聞いてもいないうちから何故そう思えるのか。
・両論の板挟みになるとしても、それを自分だけで調整しなければならないと考えるのは何故か。
などを考えていく。
そうやって、細分化して検証していくうちに、自分が思っていたことが必ずしも合理的な根拠がある訳ではない気がしてきた。
他に考えようがあったかもしれないと思うようになった。
ただ、一回こういうトレーニングをしたからといって、不安や心配を持たずに済むような性格に変われるわけではない。
自動思考は癖長年染みついたクセのようなもの。
それを修正するのにも長い時間がかかる。
コツコツとトレーニングするしかない。
ただ、紙と鉛筆と時間さえあれば、いつでもどこでもトレーニングできる。
実際、世の中には、本屋でもネット上でも、セルフケアとして、認知療法を取り組む方法を教えてくれる情報は多い。
【NHK健康チャンネル】
【セルフ認知行動療法のやり方・ポイント】自分の考えを見つめ直し、心を軽くする
【ワークブック】
上記以外にも、ネットを検索すれば、ノートの無料フォーマットや動画解説などたくさんの情報が得られる。
ただ、しっかりと取り組むなら、最初の数か月は専門のカウンセラーの指導のもとで取り組んだ方がいいと思う。
独りよがりな自己検証は、かえって自動思考を固定化してしまう恐れがあるんじゃないかと思われるからだ。
あと、このトレーニングをするうちに、ストレス対応というだけでなく、理詰めで考えるというトレーニングにもなったように思う。
ロジカルシンキングみたいなもんだったと思う。
先ず現状を並べて、それを客観的に理詰めで検証していく。
検証するうちに、足りなかった部分や思い込みの部分が見えて、他のアイデアも浮かぶ。
そういうフォーマットを自分の中にインストールできたのは、よかったなと思う。