【マンガ感想】うつヌケ | トリュフ・ラボ-アクマで4コマ-

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イラスト描き、マンガ描きが趣味のトリュフのブログ。

 最近ツイッターやニュースでも話題になっている田中圭一さんの著書「うつヌケ」の感想です。

 

 最初にこの本の基本情報です。

 

「うつヌケ」

 著者:田中圭一

 単行本:角川書店から発行、現在は多くの書店で容易に購入可能と思われます。

 

 

 以前、ブログでも話題にしておりますが、僕自身がうつ病を患っており、もうそろそろ闘病10年になろうかというところ。

 

 これだけこじらせてしまいますと・・・

 ひねくれ者になります(ため息)

 (それは病状だけではなく人生もこじらせてしまうほどの重症でした・・・

 病気で苦しんだ上で、社会的にも、人間関係的にも真に理不尽な思いをしてきました。

 もしもこれが世界を救う作品を作ろうと妄想した罰だったとしたら、神なぞ悪魔にも等しい・・・)

 

 そんな、ひねくれ者ですがフェアに感想を書きたいという程度の男気は残っております。

 それだけにきちんと拝読して感想を書こうと思いました。

 

 そして、これ"演出的な掌返し~”とか言われたくないのですが、正直に良著だと思います。

 

 

(1)著者の眼差しが暖かく、誠意が感じられる

 

 これが、いろんなところに現れているんですね。

作品は著者が、うつ病の体験者にインタビューをした内容をマンガにしたものですが、体験者のことは勿論、その関係者についても人格を尊重して描写してます。

 

 そして、安易な感動モノ(俗っぽくいうと「感動ポルノ」ってやつ)には堕ちていない。

 だから、お下劣(笑)パロディマンガで有名な田中圭一さんですけど、本作はエンターテイメントに全振りしていない。

 ともすれば退屈とも思われる、堅実なアドバイス(医学的知見に基づく対処法とか)をきちんと載せてる。

 

 読者を単に感動させたり笑かしたりするマンガを描くこともできるところを抑えて中身のある内容を盛り込んでいる。

 ただし、エンターテイメント要素もそれなりに入っている。

 このさじ加減は作品としての価値を高めていると感じます。

 

 

(2)いったい誰に向けて描かれた本なのか!

 

 確信しています。

 この本は、うつ病の当事者に向けて作られています。

 先述の通り、「感動ポルノ」ではありません。

 (感動ポルノは当事者が鑑賞するものじゃないですからね。)

 

 また、うつ病じゃない人にうつ病を理解してもらおうという意図も弱いと思います。

 もしそうだとしたら、うつ病の辛さの描写があまりにも淡白すぎる。

 これでは「うつ病ってたいしたことないじゃん?」って印象になるでしょう。

 

 (では、うつ病の辛さの実情を忠実に描いたらどうなるか?

 ・・・悲惨かつ退屈で、とても読めたものではなくなると思います)

 

 だから、この本は当事者向けに描かれていると確信しています。

 そして、うつ病の当事者は、その辛さを身をもって経験していますから、わざわざ説明する必要もないのです。

 

 なぜ、うつ病の当事者に向けて描かれているか・・・と言いますと、これも確信しています。

 うつ病は本人が治りたいという意思を持たないと、周囲がいくら働きかけても治りません・・・

 だから、うつ病の苦しみから救いたいと考えるなら本人に語りかけるしかないと思います。

 

 ただし!、本人が治りたいという意思を持つことは条件に過ぎません。

 実際には本人が治りたい!と思っても簡単には治りません。

 それどころか無理をする、治療方法を間違える、誤った選択をしてしまう・・・治りたいばかりにそんな失敗をして、ますます悪化してしまう!と言うこともあります。

 僕なんぞは、そのタイプだったかと思います。

 

 そういう人に必要なのは、つまらなくて夢がなくても「正しい知識に基づくアドバイス」です。

 

 

(3)本書の誤解を超えよう!

 

 この本には批判的な評価もあります。

 それはインタビューを受ける当事者がミュージシャンの大槻ケンヂさんを始めとして作家、編集者といったクリエイターの方々がほとんどであるため、読んだ人は「自分とは違う、参考にならない」という内容です。

 誤解だと思います。

 

 これは本書へのリスペクトを意識しながら読むとわかるのですが、たまたま著者の人脈からそのような人を取り上げたという程度に考えたほうが良いと思います。

 

 自分とは違うところもあるのは確かなのですが、病状の描写については「なるほど、自分もそうだ」と腑に落ちるところはあります。

 ならば併記されているアドバイスも参考になるものです。

 

 それでも「自分とは違う!」と感じてしまうところはあります。

 それは、うつ病を乗り越えた当事者が、再び華々しいクリエイターとして復活した(ように見える)点かと思います。

 

 これは確かに自分と違いますね!

 でも、うつ病の苦しみが軽減することと、その後に復活することはセットじゃない、という認識を持てば見え方は変わってきます。

 

 この本のテーマは「うつヌケ」です、ヌケた後の復活劇は別のお話。

 華々しい復活を期待すると目的を見失い落胆するかもしれません。

 あくまで、うつ病の苦しみからの解放がテーマです。

 そして、当事者なら想像ができると思うのですが、「苦しみから解放されるだけ」でも、これは相当な救いだと思いますよ!

 このような志で描かれたことを感じさせる本書を僕は評価します。

 

 

(4)僕は、パイオニアを目指してます

 

 ・・・先述の通り僕自身はうつヌケしておりません。

 先々週の金曜日に仕事中に体が固まって動けなくなり日曜日は寝たきりになったりしてます。

 ぶっちゃけると、うつから解放されることはないかもしれないという諦観すらあります。

 

 僕が食らった経験は、うつ病によって仕事もキャリアも反故にしてしまったことです。

 

 これについては「うつヌケ」もあまり触れていません。

 だから、ここから僕が社会復帰できれば僕はパイオニアになれます。

 うつを患った状態でも社会復帰できることが希望です。

 

 ※僕のこと、もう社会復帰してるじゃんって思う人はいるかもしれませんが、病人なりの働きをして病人なりの待遇に甘んじているっていう不満はあります。

 一筋縄では行かない、いろんな課題が関わっているんですけどね。

 

 そのためには本人の努力は必要でしょう、あまり期待は出来ないのですが社会が変化してくれることも本当は必要だと思います。

 僕の人生の現時点でのテーマの一つでもあります。

 

 

以上、長文失礼しました!

でも、きちんと感想と紹介になってると思いますよ!!

 

 


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