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さて、私がT&Tに対して少々不満があるとすれば、それはこの「スタント」が何であるかを説明するのに、ルールブックが十分役に立ったことが、未だかつて一度もない、ということです。 デラックス・トンネルズ&トロールズも例外ではありません。 誰もが長い間このやり方でプレイしてきたことは明らかです。長きに渡るプレイの中で、彼らはこのプレイスタイルを非常に深く同化してきたので、それは今や第2の天性にすらなっています。 しかし、正直なところ、ルールに不慣れな人々にははっきりと説明する必要があると思います。現時点では、それを自力で解決するには少しばかり推論が必要です。「スタント」や「スタントする」という用語さえ、ルールにはありません。

 

スタントとは、セービングロールを行うことで戦闘ルールを「ねじ曲げる」ことです。 ルールの中で、重要な例は遠隔攻撃を中心に展開しています。T&Tで弓を発射するためには、あなたは器用度でセービングロールを行い、あなたがこれに成功した場合、あなたの弓のダメージは、あなたの側の陣営がその戦闘ラウンドに負けていたとしてもあなたのターゲットに与えられます。 あなたが器用度のセービングロールに失敗した場合、あなたの弓の射撃はあなたの側の総HPTにまだ加算されていますが、あなたの側もラウンドに勝った場合にのみ相手にダメージを与えます。 それは単純なメカニズムですが、プレイの全体に素晴らしく大きな効果を及ぼします。

 

私が、あなたが戦闘メカニクスの結果をどのように説明するかに「フィクション」が影響を与えると言ったことを覚えていますか? では、これはどうでしょうか。あなたは敵の武器を叩き落し、彼の顔に砂を蹴り上げ、間合いを取り、あなたの対戦相手を侮辱し、そして他にもあなたが思いつくことができるほとんどどんなことをするためにでも、セービングロールのメカニクスを利用することができます。あなたはどんな能力値でも使うことができ、どんなタレントも関連づけることができます。そして、あなたのセービングロールの結果は、あなたの対戦相手の鎧を引き裂くことから、彼を武装解除し彼の生み出すダメージを素手ダメージに限定させることまで、何でもすることができます。 相手のHPTダメージロールを半分にしたり(転倒させた場合)、ゼロにしたりすることもできます(彼が盲目になったり幻惑したりしている場合)。 システム全体はあなたがた自身の創造性に完全に依存しており、プレイしていて非常に素晴らしいものとなります。これはT&Tルールの暗黙の了解の一つであり、おそらくまたその後に登場した多くのゲームに情報を提供しているのでしょう。

 

これと対を為す要素がモンスターにも付随しています。 モンスターは能力値を持ち、スタントを行うこともできますが、しばしば彼らはただ単にモンスターレートで表され、能力値では表記されないでしょう(「MR25のオーク」というように)。

 

それではGMは、どうやってモンスターにスタント的なものを与えるのでしょうか。 DT&Tには「悪意ダメージ」と呼ばれるルールがあります。これは、ダイスロールで自然に出た「6」の目の数だけ、その戦闘ラウンドにどちらが勝ったかも装甲の防御力も無視して、対戦相手に1ポイントのダメージを与えるというものです。それは膠着状態を防ぐための手際の良い方法です - しかし、それはまた非常にクールな副作用を持っています。それはT&Tの第7版から導入され、そしてDT&Tでもまだ申し分なく実行可能です。

 

基本的に、モンスターが(「ファイヤブレス」や「恐怖の叫び」などといった)特殊な能力を持っている場合、その能力は1ポイント以上の悪意ダメージの代わりに誘発することができます。言い換えれば、GMがモンスターのダメージ(攻撃)ロールで1つ以上の6を振ると、単に噛むのではなく火を吹く、または爪で引っかくのではなく恐怖の叫びを上げる、など ――鎧を無視したり、相手のHRTを減らしたりするようなクールなスタント的効果を解き放つのです。これはとても洗練されたメカニズムで、ソロプレイにも見事に適合しています。これはT&Tでは常に重要なことでした。

 

私が上で「モンスター事典」はクールなことになるかもしれないと言ったのはこのためです。 DT&Tのルールにそれが必要不可欠というわけではありません――オークやバシリスクにどんなことができるかは誰もが知っているので、GMはその場で彼らの特殊能力のスタントを思いつくことができます――しかし、GMの想像力を溢れかえらせるために、またソロプレイでも使用できるように、時々たくさんの例を提供するのはおそらく良いことでしょう。


◆それを手に入れるべきでしょうか?

以上が私の、デラックストンネルズ&トロールズというゲームのやや長い概要です。結論ですか? 今すぐそれを買いなさい、それだけです。それは素晴らしい代物です。 PDFは非常に手ごろな価格で入手可能で、 デラックス・トンネルズ&トロールズはファンタジーRPGの良さに満ちています。 物理的なバージョンは美しく、体裁のしっかりした本です。

 

さらに重要なことに、それは素晴らしいゲームです。 それは時の試練に耐え、伝統的な方法と、より「現代的でナラティブな」方法の両方(そしてその二つの組み合わせ)で遊ぶことができます。 それはあなたの思う通りの姿になるでしょう。 そして、そこには本当に膨大な数のソロアドベンチャーがあり、それに加えて第8版のルールと完全に互換性のある「GMアドベンチャー」があります。 ゲームは素晴らしい血統を持っており、そして遊ぶのが本当に楽しいものです。 心からお勧めできます。

 

Deluxe Tunnels and TrollsはDriveThruRPGからPDFで、そしてフライングバッファロー 、 アマゾン 、そして各地のフレンドリーな地元のゲーム店から印刷物で入手できます。 (訳注:日本ではグループSNEから、「トンネルズ&トロールズ完全版」、「トンネルズ&トロールズ完全版BOOK」の2バージョンのルールブック、「T&Tアドベンチャー」シリーズとしてソロ、マルチ双方のシナリオが発売/続刊中。)

 

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B3%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%82%AF-cosaic-%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%BA-%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA/dp/B01KJVZ0HM

 

 

 

コアメカニクス2:戦闘システム

 

T&Tの第2の中心的なメカニズムは、その戦闘システムにあります。 これは伝統的なRPGのそれとは根本的に異なっています。それはHeroQuestやFateのようなゲームにおける拡張解像度システムの祖父のようなものであり、それらと非常に類似したものと考えることができます。

 

これがどのように機能するかです。

 

 戦闘において、相対する両陣営は基本的に、ダイスロールによって「ダメージ」を決定します――DT&Tはこれをあくまで物理的戦闘として描いていますが、必ずしもそれに限定される理由はなく、社会的な対立、心理的な闘争にも容易に置き換えうると私は考えています。ですが、ここでは想定されている通り、物理的な戦闘に話を絞りましょう。

 

 戦闘では、各陣営は修正値を含む各戦闘参加者による武器のダメージや攻撃をダイスロールし、それらを合計して1つの大きな「合計ヒットポイント」(またはHPT)にします。 キャラクターは武器を使ってサイコロを振り、通常、モンスターは自分の「モンスター・レート(MR)」を使います。 次に、2つのHPTを比較します。 よりHPTが高かったほうが戦闘ラウンドに「勝ち」、負けた側は(繰り返しになりますが、物理的な戦闘の場合、)耐久度から、またはモンスターであればモンスターレートから、HPTの差分をダメージとして引かなければなりません。 負けた側に複数の戦闘参加者がいる場合、そのダメージは分担されます。

 

ある戦闘の中でひとつの「陣営」がどのように配置されているかは、何が起こっているのかの描写に――物語ゲームの用語では、「フィクション」に――依存します。ダメージも同じです。

 

あなたが2人のPCを使っており、1人は弓を持って石トロールの背後に周り、もう一人は斧を持って正面から向かい合っているならば――そして、トロールがどのように攻撃し、防御側がどのように防御するのかについての特段の説明が別に無いならば―― おそらく、石トロールが与える全てのダメージは斧を振るうPCにのみ影響し、弓を持っているほうのPCには全く影響を及ぼさないでしょう。それは非常に柔軟で、何が起こっているのかについての説明へのプレイヤーの没入を促します。

 

さて、この仕組みはそれ自体はいいのですが、かなり早く平均的な結果しか出ないゲームに集約されていくようになるでしょう。それに、あなたがあなたを凌駕する敵に直面しているならば、攻撃が「二段階」(攻撃のためのロール、ダメージのためのロール)であるD&Dのようなゲームより、はるかに確実に負ける傾向があります。

 

 

 

しかし、T&Tのルールには、非常に賢いもの、見落とされがちですが理解することが不可欠なものがあります。 「スタント」です。

 

コアメカニクス1:セービング・ロール

 

最初のメカニクスはセービング・ロールです。 古いルールゆえのこの名称は正直言ってちょっと古風で、今ではその役割はもっと拡大しています。いにしえの時代には、セービングロールまたはセーヴィングスローは、あなたのキャラクターに降りかかる厄介事を回避するためのものでした。 T&Tのセービングロール(または「SR」) はそのように使用することもできますが、それはまだその役割の一部に過ぎません。それは本質的には、あなたが何かをすることに成功したかどうかを判定するために行われるダイスロールであり、「解決ロール」、「アクションロール」、または「タスクロール」でさえあります。それらはほとんどの場合、能力値に明確に結び付けられています。なのであなたは、「体力度のSR」や「知性度のSR」などを行うことができます。

 

SRを行う際には、2d6を振ってあなたの能力値を追加し、目標値を上回ろうと試みます。 セービングロールにはレベルがあり(たとえば、基本的な幸運ロールは「幸運度のレベル1セービングロール」です)、目標値は15プラス(レベルx 5)として計算されます。レベル1のSR(「L1SR」)目標値は20、L2SRは目標値25、というようになります。 2d6を振ると振り足しになり、またダイスを転がすことができます。つまり、運が良ければ、一見不可能なSRでも成功する可能性があります。

 

あなたがSRを用いてどれだけのことができるのかは、それが依って立つ能力値の値、そしてあなたが自分が何をしているかをどれほど上手く説明するかによって変わってきます。 この後者の点は、T&Tを理解する上で極めて重要です。SRが何をカバーしているかについて厳密な一連の規則はありませんが、それは解釈と交渉のプロセスです。 どちらが腕相撲コンテストに勝つかを決めるために判定を行うことになったなら、たいていの場合あなたは体力度のSRを行うことでしょう。しかしあなたがあなたの対戦相手にウィンクして彼を誘惑すると自分の行動を説明するのなら、多分あなたは代わりに魅力度でのSRを行うことができます。 創造的であれ――ゲームはそう歌いかけているのです。

 

DT&Tは第7版ゲームで導入されたルール、すなわち『タレント』を取り入れています。 タレントは、あなたのキャラクターが特に得意なこと、あなたのセービングロールに修正を与えるそのキャラクターの専門分野です。 DT&Tのルールはタレントの例を提供しており、それらの例はかなり具体的なものとして提示されています。例えば、 鍵のピッキング 、 歴史知識 、 動物飼育などです。他のゲームでは、これらはスキルに相当します。 しかし、それはスキルではありません。 タレントを特別な能力、あるいは性格特性として定義するのを阻むものは何もありません。 あなたはタレントとしてSmells Metal(鉱物探知)を持つドワーフ 、またはHates Dwarves(「ドワーフへの嫌悪」)を持つゴブリンを作ることができます。 タレントの修正値は、適切なとき(つまり効果的にそれを記述できるとき)にセービングロール( 任意の能力値のセービングロール)に追加することができます。 デフォルトのタレントによる修正値は+3ですが、+ 7、+ 9などに増やすことができます。 あなたは少なくとも1つのタレントを持ってプレイを開始します。そしてあなたのキャラクターが成長するにつれ、あなたはより多くのタレントを得ることができます。

 

つまり、タレントは他のゲームではしばしばスキルによって占められるスペースを占めはしますがそれにとどまらず、たとえばあなたがこのゲームをFate(訳注:海外TRPG、未訳)のようにプレイしようと思うならば、advantages, special abilities, relationships, personality characteristics, そしてaspectsのようにすら使うことができます。 それは意図的に多用途であり、あなたのプレイスタイルに合わせて簡単に調整することができます。あなたの好きなように、より具体的かつシミュレーション的にも、あるいは抽象的かつ物語主義的にも。