未明の砦
太田愛(著)
[角川書店2023年7月発行]
あらすじ
その日、共謀罪による初めての容疑者が逮捕されようとしていた。 動いたのは警視庁組織犯罪対策部。 標的は、大手自動車メーカー〈ユシマ〉の若い非正規工員・矢上達也、脇隼人、秋山宏典、泉原順平。四人は完璧な監視下にあり、身柄確保は確実と思われた。 ところが突如発生した火災の混乱に乗じて四人は逃亡する。誰かが彼らに警察の動きを伝えたのだ。 所轄の刑事・薮下は、この逮捕劇には裏があると読んで独自に捜査を開始。 一方、散り散りに逃亡した四人は、ひとつの場所を目指していた。 千葉県の笛ヶ浜にある〈夏の家〉だ。そこで過ごした夏期休暇こそが、すべての発端だった――。
感想
久々の太田愛さんの新刊。
かなりの大作長編600ページは、頭が痛くなるほど考えさせられ、勉強させられた…
非正規雇用の若者、過酷な労働環境はフィクションではないのでは?
日本の失われた30年。
なぜ日本に海外から大挙してやってくるのか…
日本が安いから…なぜ日本が安いのか
人件費が安いから…なぜ人件費が安いのか
基本的には大手自動車メーカーの4人の非正規工員が、労働環境の改善や労災隠しを訴えて労組を立ち上げるのだけど、そこには政治家•警察が大手会社との密な関係が渦巻いていた。この国は腐っているな!
数年前に『共謀罪』なるものが出来たけど、こういうふうに使用されたら…と恐ろしくなる裏側
ただ"疑わしい"だけで、様々な嫌疑で摘発することが可能なんだから
「規則を守ることの大切さを教える教育」→「規則に従うことの大切さを教える」
弱い立場の者には発言すること自体が悪というか、無理だから従う…
なんか人間の尊厳からくつがえされるような気持ちになりました。
相場さんの『ガラパゴス』を思い出しました。