静電気がオイルの粘度を高める=動きが悪い

大好評の特許開設シリーズ。技術的な知識のある方に多く読まれて読まれているようです。

当ブログでは”特許庁文学”と呼ぶべき、特許の幅を狭めないように、かつ、食い入る隙間を防ぐために回りくどく分かりにくい論法を、中学生レベルで理解出来るように噛み砕いて書いています。静電気を勉強するのは主に小学生時代、大人になると昔の事で忘れてしまっている人が多いと感じています。

私がマジ軽ナットの説明で「こう伝えれば、誰もが納得するのでははてなマーク」と思い付いたのが、”フリースやセーターを脱ぐ時に静電気が発生すると、余計な力が必要。それを帯電防止スプレーで除電すると少ない力で脱げる”おそらく日本国民の殆どが、つい先月までそうやって”除電すると少ない力で物(フリース等)が動かせる”事を自らやっていたでしょう。

静電気は導電性の高い金属等は流れ易い、プラスチックやゴム等の導電性の低い物は電気の逃げ場がなく溜まってしまう、これを帯電と呼びます。

乾燥した季節にドアノブやボディーの金属部分に触れると、パチッとなった経験があるのではないでしょうかはてなマークそれこそ車体に静電気が帯電している証拠で、人間を通して路面に放電した訳です。マジ軽ナットを付けるとそのような事はまずありません。

パチッとまでならなくてもフリース同様に、帯電で乗り物の動きに無駄に力を使っていてエネルギー効率を悪くしています。

ゴールデンウイークに入り、高速道路で渋滞が発生します。渋滞にはまっても近くにインターチェンジがあれば、そこで一般道に下りれば解決しますが、そうでないとどんどん渋滞が長くなります。この場合に当てはめるとマジ軽ナットインターチェンジに当たります。

帯電している静電気をどんどん放電し続ける。静電気の渋滞を解消すると車やオートバイのタイヤが少ない力でスムーズに回る、タイヤのクッション性も向上、そうするとハンドリングが向上したりと、様々なメリットが生まれます。

それでは前回に続き、トヨタの特許文献を青太文字で、その下に解説を書きます。

 

【0063】
  なお、本願発明者が実際の車両について行った実験により、以下の効果を確認することができた。即ち、自己放電式除電器90A~90Eが設けられていない場合には、内側シリンダ12X内のオイル76の電位は数百乃至千ボルト程度にまで上昇した。これに対し、第一の実施形態の構成によれば、内側シリンダ12X内のオイル76の電位は数十ボルト程度にまでしか上昇せず、オイル76の適正な粘性を確保することができた。

上図の赤線で囲った箇所(90A~90E)に自己放電式除電器(トヨタの除電方式の名称)を取り付けていない場合にはサスペンション内側シリンダーのオイルの電位は数百~千ボルト程度まで上昇した。自己放電式除電器を取り付けると数十ボルト程度にしか上昇せず、オイルの適正な粘度を確保出来た。

静電気とはいえオイルの静電気力の電位(静電気力 位置エネルギー)が数百~千ボルト程度までになる。それはオイルに影響が出る訳です。

今までの解説の通り、オイルやグリスが帯電すると粘度が高く(硬く)なり、動きが悪くなる。例えば#10のオイルを入れているのに、帯電すると実際にはもっと粘度の高いオイルを入れているようになる。そのため動き出すまでに余計な力が必要となるのと、動き出すとその力の分無駄に動いてしまう。つまりぎこちない動きになるので、スムースな走りにはならない。

高価なサスペンションを買ってSNSにアップする方がいますが、このような事を知っているのでしょうか。知らない友達がいたら教えてあげて下さいね。

除電でどの位変るかと言う事例があります。Dax125のフルに近い除電チューニングをを施しました。フロントフォークにはマジ軽バンドを装着。これで取り付けのあり/なしの状態で比較すると、目で見て動きが違うのが分かるのです。その時のブログです。ダウン

 

【0064】からはサスペンションの構造を文章で書いているので、しばらく飛ばします。

【0070】
  図4に示された複筒式のショックアブソーバの場合と同様に、ピストン14の本体部14Mには、伸び行程用の減衰力発生弁80及び縮み行程用の減衰力発生弁82が設けられている。減衰力発生弁80及び82は、それぞれ第一の実施形態の減衰力発生弁80及び82と同様に構成され、同様に減衰力を発生する。第一の実施形態の場合と同様に、シリンダ12の長手方向中央部の表面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Aが周方向に延在するよう接着により固定されている。しかし、シリンダ12の下端部の表面には、自己放電式除電器は固定されていない。

下図の通り、赤枠のピストンの伸び方向のオリフィス(80)/縮み伸び方向のオリフィス(82)で構成され、減衰力を発生する。シリンダーの中央部に長方形の自己放電器90Aが貼り付けられている。しかし、シリンダー下部には取り付けていない。

 

【0072】
  図8に示されているように、スプリングシートクッション部60Aの円筒状の外面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Cが周方向に延在するよう接着により固定されている。第一の実施形態の場合と同様に、ピストン14のロッド部14の上端を支持するアッパサポート18の外筒部材18Cの上面には、短冊状をなす自己放電式除電器90Eが接着により固定されている。

下図の赤枠のスプリングシート(60A)の外側には長方形の自己放電式除電器90C(緑枠)が貼りつけられている。アッパーサポートの外筒18C(青枠)の上面に自己放電式除電器90E(オレンジ枠)が貼り付けられている。

スプリングシートはゴムで出来ている為、前述の通り導電性が低いので帯電量が多い。それを除電する為に自己放電式除電器を貼り付けているのです。

 

【0074】
  従って、除電器90Cによる除電により、ダストブーツ60のスプリングシートクッション部60Aに帯電する正の電荷が低減されてスプリングシートクッション部60Aの電位が低下される。よって、ピストン14に帯電する正の電荷が外筒部材18Cを経てダストブーツ60へ移動することによって低減され、ピストン14の電位が低下される。ピストン14の電位は、除電器90Eによる除電により、アッパサポート18の外筒部材18Cの電位が低下されることによっても、低下される。更に、除電器90Aによる除電により、シリンダ12に帯電する正の電荷が低減され、これによりシリンダ12の電位が低下される。

90Cによる除電によりダストブーツ(60)のスプリングシートクッション(60A)に帯電する正()の電荷が低減され、スプリングシートクッション部の電位が低下される。

よって、ピストン14に帯電する正の電荷が外筒部材(18C)からダストブーツ(60)へ移動することによって低減され、ピストン(14)の電位が低下される。

ピストンの電位は、90Eによる除電により、アッパサポート(18)の外筒部材(18C)の電位が低下される、合わせ技でも低下する。

更に90Aによる除電でもシリンダー(12)に帯電する正の電荷が低減(除電)する。

このように、シャフトとオイルシール、オリフィスとシリンダーの摺動摩擦でも静電気が発生・帯電します。

 

【0075】
  よって、第二の実施形態によれば、第一の実施形態の場合と同様に、シリンダ12及びピストン14に接するオイル76に帯電する正の電荷をシリンダ12及びピストン14へ移動させ、これによりオイル76の電荷の帯電量を低減することができる。従って、オイル76に正の電荷が過剰に帯電することを防止することができるので、オイル76の粘性が過剰な電荷の帯電に起因して過剰に高くなりショックアブソーバ16の減衰力が過大になることを防止することができる。

よって、ショックアブソーバーのシリンダー及びピストンに接するオイルに帯電する正の電荷をシリンダーとピストンに移動させることで、オイルの帯電量を低減させられる。これによりオイルの粘性が過剰な帯電が原因で高くなり、減衰力が課題になる事を防止出来る。

 

【0077】
  第一の実施形態の場合と同様に、本願発明者が実際の車両について行った実験により、以下の効果を確認することができた。即ち、自己放電式除電器90A、90D及び90Eが設けられていない場合には、シリンダ12内のオイル76の電位は数百乃至千ボルト程度にまで上昇した。これに対し、第二の実施形態の構成によれば、オイル76の電位は数十ボルト程度にまでしか上昇せず、オイル76の適正な粘性を確保することができた。

この特許を出願した発明者が実際の車両で実験して以下の効果を確認する事が出来た。自己放電式除電器(90A、90D、90E)が取り付けられていない場合には、シリンダー内のオイルの電位は、数百~千ボルト程度にまで上昇したのに対し、除電器を取り付けるとオイルの電位は数十ボルト程度までにしか上昇せず、オイルが適正な粘性を確保する事が出来た。

簡単に言えば、的確な箇所で除電をするとオイルの電位の上昇を抑えられるので、オイルの粘度の上昇も抑えられ、サスペンションの設計通りの動きになる。サスペンションのスムースな動きは、そのまま良い走りに直結します。これを否定する人はいないでしょう。

高価なサスペンションに交換するのも良いですが、何百万キロもメーカーがテストしたサスペンションを、除電によって低コストで性能を向上させるという選択肢もあります。

Dax125でフロントフォークの滑らかな動きを経験したS先生はその後、リアサスペンションの徐電もしたくなり、サスペンションに取り付けるマジ軽バンドも追加購入されました。フロントフォークやリアサスペンションにはこのようにして使う事もあります。

ネットショップダウンでは除電チューニングの入口のタイヤ用とその少し先、ミッション用とチェーン用の一部だけ販売しています。

ゴールデンウィーク中に開催される奈良カブミーティング。スーパーカブにマジ軽ナットとミッション用マジ軽ボルト装着車が遠路はるばる向かいます。大きな変速ショックと振動を軽減し、スムースなシフトは相当有利になるでしょう。

タイヤの先はサイズやネジピッチがあるので、特注となります。マジ軽ナットシリーズは車両を乗り換えてもサイズさえ合えば使い回しが可能で、とてもリーズナブルです。

中東情勢でエネルギー価格は高騰する一方、更に円安が止まらず追い打ちをかけています。それなのに財務省の言うがままの政権は、燃料価格のトリガー条項の凍結を解除しません。再生しないのに再エネ付加金は増える一方、子育て支援と称し更に徴収され、ステルス増税は増え続けるでしょう。

乗り物のエネルギーを効率化すれば、乗り心地が良くなり部品も長持ち、そして楽しめる、家計も助かります。

静電気の除電は走行性能が向上するだけではなく、家計も助かる技術なのです。

トヨタのサスペンションの除電特許の解説は次回位で終了になると思います。

特許文献続きでは飽きてしまうと思い、飛び飛びで書いています。

お知りおき頂きたいのは、トヨタ自動車がこの特許を出願したのは2015年7月

製造元が金属製の放電素子で除電するアイデアは、2013年の後半か2014年の初めに発明していて、当時から一部のトヨタディーラーで販売。特許を出願したのは2014年4月です。除電方式は違えど同じことを考えていたのです。

もうお分かりの取り、静電気の除電の効果、は科学的に日本国が認めている技術。効果を信じるか信じないかではなく、認めるか認めないかという事です。特許より自分の方が正しいと言うなら、そうなんでしょう。そっとしておきます。

次の特許解説は何にしようかはてなマークエンジンも面白いですね。エンジンは2012年か13年に既にやっています。お楽しみに。