ヨシムラは、カム屋です

この記事を読み始めたら、「何言ってるの!?ヨシムラと言ったら、まずはマフラーだろビックリマーク」と思う人がほぼ100%でしょう。私もそうでした。

しかし、ヨシムラに詳しい人に聞いたところ、「みんなさ、マフラーだと思っているだろう。でもそうじゃないんだよ。ヨシムラはカム屋なんだ」と言います。

「俺だってヨシムラに詳しいぞ。もう何十年もマフラーを使っているのに」という人もいるでしょう。ごめんなさい、そういうお付き合いではない人から聞いたのです。

ブログでヨシムラについて書いている人は多いです。数々の戦歴、歴史、伝説。"プロジェクトX"という公共放送の番組にまでなりました。

私より詳しい人はたくさんいるでしょうから、その辺はお任せして別の角度から書きたいと思います。

鍛造ピストンの記事を書くのに昔の本を開いたら、不二雄さんがお若い頃の記事があり、カムの事も書いてありました。

除電で技術協力している工業高校のN先生は大のヨシムラマニア。だから、鍛造ピストンの記事に掲載したPOP.Yの浮き出し文字がある鋳造ピストンは、今は先生の所有となっています。その先生から「またヨシムラの事は書かないのですかはてなマーク」とリクエストがあり、昔の資料も出て来たので「では、書きましょうか」となったのです。

何しろN先生は自分でスーパーカブのカムを削ってプロフィールを変えるほどのマニア。それだけではなく、通勤の電車内でポケットに潜ませたカムを撫で回しているのだそう。捕まりますよ、先生。(笑)

ご存じの通りカムはエンジンの出力や特性を決める重要な部品です。

一つ逸話を紹介します。鍛造ピストンの記事で書いたクラブトップのエンス―ジアストのS氏。

今は雑誌にも取り上げられて知っている人が増えましたが、1980年代中頃はカワサキの401仕様(北米のフルパワー)は全く知られていませんでした。カワサキの内部でも一部の人しか知らないと聞きました。

S氏はとにかくパワフルでマニア。メカニズムにも精通していて当時はまだ珍しかったプライベーターでのFiscoのレースにも参戦していました。サーキット走行会というものがまだ定着しておらず、素人はお金を払って個人でフリー走行をするかレースに参戦するかという時代でした。

そんな時代に何人もがレースに参戦していて、クラブに入会した時には「何か、凄い人達がたくさんいる」というのが印象でした。

ある時S氏が、「日本仕様と401仕様の何が違うか分かったビックリマークと話し始めました。

彼はカワサキフリークでいろいろな事を調べ上げるのが得意。ワイセコピストンもそうですが、興味がある所に突っ込んでいくのです。

違いを調べるのにまず用意したのが、カワサキの海外向けの価格表Master Parts Price Listです。ダウン

これは、海外向けで米ドル(USD)で定価が表記してあり、その国によって係数を掛けて価格を算出するもので、部品番号の変更・統一も分かる便利なもの。もちろん、国内のカワサキ特約店・ディーラーでも販売されていません。が、ある方法で購入出来るのです。それを教えてもらったので私も持っています。もう随分と古くなり汚れてしまいましたが。現在は本にはなっていませんので入手は不可。

メグロ時代から特約店をやっているショップに頼んで、その方法で取り寄せてもらったのですが、そのショップでさえこの本を見て「へぇ~、こんなのがあるの。知らなかった~。□□君(私)はよく、こういうのが手に入るのを知っているねぇ」と、しげしげと見ていたのを思い出しました。

これで、S氏は国内の部品番号と海外仕様の部品番号を突き合わせて、401仕様の部品を洗い出したのです。

例えばダウンを例に取ると、クラッチレリーズAssy.の部品番号。

車種は不明ですが、13102-1001と13102-1002、13102-1003(赤枠)の部品番号が欠品となっています。欠品と分かるのは黄色枠の”最小出荷個数(黄枠)”が書いていないので分かります。その右の欄が米ドルの標準価格で、在庫がないのでここも空欄です。一番右側には機種名が書かれています。

それらは13102-1004に統一(緑枠)となっています。つまり互換性があって同じ機能を持っているという事。同じ部品なのに車種によって違う部品番号の4種類が存在した訳です。

今は無いでしょうけれど、昔のカワサキはたまにこのような事例があり、価格が違う物もあった。皆で集まっては「この部品とあの部品は部品番号は違うけれど、同じ物。そして値段が少し安い」とあら探しをして楽しみ、情報交換をしていました。

こんな事をやっているから家内から「記号の話をしている」と言われるのですね。

まだ先がありまして、この頃のクラッチレリーズはインナー、アウターとオイルシールがセットになっている物が多い。年式が古くなってくるとN/A(Not Available=欠品)となります。クラッチレリーズAssy.が欠品になると各部品を買って揃えないといけない、もちろん費用はかさみます。

それでも揃えばいいのですが、例えば-1001にセットとなるレリーズのアウターが欠品の場合、-1002のレリーズのアウターが-1001用と違う部品番号なら、まだ在庫が残っている可能性がある。パーツリストさえあれば調べられるのです。それがなければ、-1003、-1004用は無いか調べる。

各部品が同じかどうかもこの価格表で調べられるのです。

今から35年も前にこのような事をしていました。こんな事をやっていたのは4~5人だけの筈ですので、時代も移り変わったのでもう書いてもいいでしょう。今となっては懐かしい思い出です。

これをやっていたから、Iさんのヤマハ WR250の特定の年式だけ振動が極端に酷い原因をアップと同様に「年式ごとにどの部品が変更になっているか、比較して特定すればいいんですよ」とパーツリストを掲載している部品屋さんのサイトも教えて差し上げましたが、やっていないみたいです…。

S氏はこのようにしてエンジンの部品を見比べて分かったのが、401仕様はカムの部品番号が違った、確かINとEXの両方だったと記憶しています。「違うのはカムだけだから、部品を買ってカムを替えれば401仕様と同じになる」と注文していました。

車種は確かZXR-750かZZ-Rだったと思います。

カワサキは部品番号さえ分かれば、海外仕様でも部品が購入出来ます。現在では東南アジア製のものもあるので、それはどうかわかりませんが、国内に在庫している部品は買えるのです。

さて、本題のカムですが、モンキーなどでもよく”ハイカム”という単語を聞きますが、ハイリフトカムシャフトの事を指します。新造する場合はプロフィール(カムの形状)通りに切削すればいいのですが、ヨシムラではオリジナル(ノーマル)のカムにステライト溶接で肉盛りをして、そこから理想通りのプロフィールに仕上げる事もありました。昔はこれが主流のチューニングで、POPはそれに長けていたのです。

ではそれを真似れば同じ性能が出るかといえば、形に出ない”何か”があるはずです。

マジ軽ナットを真似て売っている輩がいますが、ブログには書かない何かがありますから、効果が無いのと似ています。

以前も書きましたが、集合マフラーというのはずっと以前からあります。複数気筒のエキゾーストパイプを一本にまとめれば、イメージは違いますが集合させたマフラーです。零戦等でも星形エンジンの排気管を一本にまとめた機種があり、これも集合マフラーです。

POPはエキゾーストパイプをただ集合させるのではなく、”等長”にした事で排気効率を向上させる発明をしたのです。これが1972年頃と言われています。でもその前から進駐軍の間では「彼がチューニングすると凄く速い」と噂が立っていたのはご存じの通りです。

では何で早かったのかはてなマーク一番影響を与えたのがカムシャフトのチューニング。

その頃はまだ町のオートバイの修理屋だったそうです。それでも噂を聞きつけた進駐軍がオートバイを持ち込んでチューニングしてもらっていて、そして圧倒的に速かった。

だからヨシムラはカム屋なんだそうです。もちろん現在ではカムとマフラーだけで勝てる訳ではありませんが、原点はそういう事です。

ヨシムラでもステライト溶接でカム山を盛るのは一時的だったようです。時代的におそらく、アセチレン溶接で盛ったのだと思います。

自動車科のN先生から聞いたのですが、ホンダの1960年代のグランプリを制覇したマシン RC166を完全分解するというビックリマーク番組の撮影で担当者が「ここは写さないで下さい」と隠したのがカム(1番側)だった。少しだけ見えたのが通常では考えられない削り方だったそうです。先生から公共放送のYouTubeダウンを教えてもらいました。

分解していく途中でEX側の5番と6番のカム山の間あたりが画像処理されて見えなくなっています。性能には関係が無い場所なので、”何かの刻印か浮き出し文字”が書かれているのでははてなマークと想像しています。もしかしたら○○○○かも。

開始から16分過ぎにそのシーンが出て来ますが、机に置く時に1番付近を写らないように動かすシーンがあり「この辺写さないで下さい、秘密が隠れているんで」と口にしています。

N先生がこの動画を見た印象は「カムプロフィールに関しては過激な内容には見えず作用角が広く取られている事がわかり、むしろC50カブの方がカムが急斜面になっているのですが、RC166のカムはベースサークル部の肉の残り方が削ったのではないか、と思わせるポイント」との事です。

動画で観ればお分かりの通りカム山の形状は思ったよりなだらかなものの、ベースサークル(中心の円筒形)との段差がほぼないので、リフト量は多い。

この件について詳しい方がいらっしゃいましたら連絡を下さい。機会があれば、コレクションホールの人から伺いたいです。

このマシンは1970年代に一時ヨシムラに入れた経歴があるそうです。

その際にPOPがカムを削ったのかどうかは不明ですが、レースを終えたマシンをなぜヨシムラに入れたのか、深い理由がありそうです。

ストリートチューンではカム山を少し(数ミリ)リフト量を増やしてもバルブガイドはノーマルのまま、もっとリフト量を増やそうとすると、バルブガイドをカットしてバルブステム部を長くしてストロークを稼ぐ必要があります。当然下はスカスカとなりストリートユースは無理となります。

随分前に当ブログに書いたクラブのU氏のZ2改 1,105ccにヨシムラのステージIIのカムを組んで走っていて、それでも3速までホイルスピンしていました。もっとリフト量の多いステージIIIのカムを組んだらレースよりピーキーで走りにく過ぎて、ステージIIに戻したのです。その事を書いていました。ダウン下の回転数は無視しているから、それは走りづらいでしょう。

 

ヨシムラのカムにも秘密があり、マフラーも同様です。

マジ軽ナットにも秘密がありますが、それを書く事はありません。理論・材質・形状を上手く融合させないと、体感出来るようにはなりません。

また、最近お客さんがネット上にインプレッションを書いたようです。

「マジ軽ナット」で検索すると出て来るとか。体験したい方はネットショップからどうぞ。

2月18日(日)厚木市あゆみ橋で午前6時から開催されるエクスチェンジマートに出店します。

現地でエアフィルターへの除電ネットの施工をやろうかと思っています。本来はインシュレーターの除電とセットですが、とりあえずという事で。

フリマの出店中に施工するので、手間取らないように四角いエアフィルターに限ります。値段は大きさによりますが、難しい形状ではないのでリーズナブルにします。

マジ軽ナットユーザーでエアフィルターを外して持ち込んで下さる方限定で、出店中なので接客優先となる事をご了承下さい。最大2名様迄となります。

写真ダウンの通り、トランスポーターのデフの徐電を3か所から4か所に増やしました。

もちろん更なる効果は確認しました。4か所に増やしたインプレッションと評価は後ほど当ブログに書きますが、速報で知りたい方はエクスチェンジマートにてご説明します。実物を見たいという方はお声がけ下さい。

 

出典:カスタムバイク・ハンドブック