特注治具で面研とスキッシュエリア、溶接補強加工
空冷の2ストローク オフロードのオートバイのパワーを上げたい。とは言っても、ポートタイミング変更はデータがないからやりたくない。
ずっ~と昔ですが、にわか知識でポートタイミング変更をしたら、エンジンはかかるけれど走らなくなった苦い経験があるからです。
旋盤を使った面研&デュアルスキッシュエリア&アルゴン溶接補強加工をした写真が出て来ましたので紹介します。
これを会報に掲載したのですが、発行年数が多くていつ作ったかは分からず…。15年位前という事にしておきます。
シリンダーヘッドを持ち込んで相談したのは、もちろんヨシムラのパーツを作っている友人の工場。様々な工作機械が並んでいます。
俗称、”バイク乗りの駆け込み寺”と呼んでいましたが、いつも無理な相談をしてどうにかしてもらっています。
「これを面研してスキッシュエリア加工したい。そして、クラックが入らないようにアルゴン盛りも」と。そうしたら、「忙しい、旋盤使っていいからヘッドは自分でやりな。アルゴンは無理だからやってあげるけど」。「え~、やってくれないの~」
「芯が細いと精度が出ないから、この位の太さがいるよ」と言いながら、紙にマジックにかなり雑(適当)に寸法を書きながら、それを加工業者にFAX(笑)しました。「来週には届いているから」と、その日は加工出来ず。アルゴン盛りだけやってもらいました。
シリンダーヘッドのアルゴン盛りを「なぜそんな事するの」と、水冷のオートバイしか乗った事がない人は思うのでしょうけれど、2ストローク 空冷のシリンダーヘッドは前後左右の大きさは同じなのが理想なのです。
アルゴン盛りする理由は、このシリンダーヘッドのように、マフラーの逃げの為に切り欠きがあると、熱膨張の違いによってクラックが入る事があるんです。
それについて書いたのがです。
プラグホールから長さが短い方は放熱量が少ないから膨張率が多い、長い方は放熱量が多いから膨張率が低い。これを繰り返す事によって金属疲労が起きて、クラックが入る事があり、それを防ぐためにアルゴン盛りをして補強をしておく、という訳です。
溶接はアルミが真っ赤になる程の熱になり、そのままでは面もそうですが、フィンも曲がってしまいます。それを防ぐのがこれです。吸熱してくれる、ゆるい粘土みたいなもの。これで変形が防げます。
後日、治具が届いたというので、また工場へ。あんな適当な寸法(とても図面とは言えないので)
でも、銀色に光るを手に取り、シリンダーヘッドに装着しました。
「ちょっと、ネジが渋いね」、「加工屋さんの工具は規格通りだから」。それで、治具のネジ山を耐水ペーパーで少し慣らしました。
正直、旋盤は得意ではありません。不慣れだから時間がかかるし、手際が悪い。でも、やってくれないので自分でやるしかないのです。
なぜ自分でやりたいかというと、ビンテージのオフロード車でチューニングのデータがないのです。データがあればボーリング屋さんで「これでお願いします」と頼んだ方が早いのですが、それは出来ない。
100点満点は望まないけれど、燃焼室の容積とスキッシュエリアの角度を探りながら加工するには、いちいち外注は出来ないからです。スキッシュエリアはだいたいの見当が付いているので、その点はまぁ、どうにか…。
実際にやってみると想像以上に難しく、面研する
燃焼室の直径が狭くなる
スキッシュエリアを作ってボアに合わせる
燃焼室容積が少なくなる、を何度か繰り返しました。もちろん、ひと加工が終わったら、燃焼室の容積を測定しながらです。
スキッシュエリアはデュアルスキッシュといって、外側より内側の角度が気持ち立っていて、より効率的な形状になります。
冷や汗をかきながら、やっと良さそうな形状になりました。若干圧縮比も上がります。いろいろと計算したりして、燃焼容積は2cc少なくしました。
走ってみて、若干ですがパワーが上がったので満足してます。100点満点ではありませんが、部品がないのでこれ以上はやりません。治具はずっと眠ったまま。欲しい人がいたら売っても構わないのですが…、プラグ穴のネジ径、ピッチは昔の21mmプラグ。
こんなこともしつつ、知識も生かしながらマジ軽ナットを販売しています。ただ、物を仕入れて売っているのとは違います。
当ブログを読んで頂いている方から、某雑誌に「掲載されていたのを読んで興味がある」旨のメッセージを頂きました。雑誌などを見て真似をしている人もいると教えて頂きました。
マジ軽ナット(タイヤ用)が出来る前、少なくとも2015年には除電するナット/ボルトは販売しており、2014年に特許申請しています。
ボルト・ナットの形状になったのは実は第四世代で、私は第一世代からテストしています。
単に形状を真似ただけでは除電出来ない(というか、特許法・意匠登録の侵害で犯罪です)と思いますし、質問にも答えらません。
真似しても効果がないという理由は、放電の仕組みや理論、素材、加工技術が融合して、初めて除電効果が得れらるからです。
私はフリマでの販売の際には、企業秘密以外の様々な質問に答えています。
5年程前から、形状を真似た物が販売されているのは知っていますが、模造品は効果が期待出来ないのはもとより、模造自体が違法となりますのでご注意下さい。