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「ね・・・見たでしょ。ひっくり返っている子」
「見た見た。でも、マヤちゃん、粘土を壊されて、どうして黙っているの?」
「みんな子供だから仕方ないのよ。そういう年頃なんだから。
それに、また新しい宇宙を作ればいいだけだから」
少女はどこか大人びた表情を浮かべている。
「ねえ、マヤちゃん、悲しいことがあったら我慢しないで、泣いたって、怒ったっていいんだよ」
「別に、これは悲しいことじゃないから」
「マヤちゃん聞いて。地球で生きていくには、いろんな人と関わらなくてはいけないの。あなたが幼稚園を出てからもずっとそれは続くの。だから、今、この年頃でしかできないことをしようよ」
「わかっている。だからわたしは、粘土をしているの。
だから、幼稚園の二年間は、ずっと粘土をしているって、わたし決めたの。
ひっくり返ってる子は、周りをみんな負のスパイラルに巻き込んでゆく。
大切な人を苦しめてしまう。
きっと、これから先もずっとそう。だって反対まわりなんだから。
きれいなもの、大事なものを壊してしまうでしょ。
でも、壊されても壊されても、またつくればいいの。ただ、それだけのことよ。
だって、ひっくり返っていることに、本人が気づくしか方法はないの。
だれも真実を教えてあげることはできないのよ。
ねえ、大人になるって、ひっくり返っていることに気づくことでしょ?」
少女のまっすぐな目に射抜かれて、マヤはしばらく言葉を失っていた。
「ねえ、お姉ちゃんはひっくり返っていることに気づいている?
あなたはだれ?」
(続く)