今っぽい軽く短めの小説を集めた読み物である。一つ一つが宇宙と星をモチーフにしているのは心憎い。宇宙には、太陽の何百倍もの大きさをもつ恒星がたくさんあることを再認識させられた。そのような宇宙で、我々はなんと小さな存在なのだろうか。そして小さいながらも、さまざまな思いを胸に生きているのだ。

 

 真夜中のアボカドカストルとポルックス]: 双子の主人公は、姉妹を失っている。一人暮らしの日々、アボカドの種を育てている。死んだ姉妹の命日に、姉妹の恋人だった人と会っているが、他意はない。アプリで出会った人とつきあうもその人は別居中の子持ち既婚者であった。

 

 銀紙色のアンタレス: 十六歳の主人公が海辺の町に住む祖母のところで夏を過ごしている。浜辺で会った子持ちの既婚女性に心惹かれ、幼馴染に告白されてもそっけない返事したできなかった。云々。

 

 真珠星スピカ: 主人公は学校でいじめを受けている。その母は飲酒運転の車にはねられて死んだのだが、主人公には見える。ある日、いじめの首謀者にこっくりさんをやらされ、そのお告げは「いしめたらのろう・・・」と出た。そして。

 

 湿りの海: 妻子に逃げられた男の話。出て行った妻が残していった絵がタイトル。その後いろいろな出会いがあっても、女たちは皆、彼のもとを離れ、消えていった。主人公は冥界に妻を迎えにいくオルフェウスの夢を見る。

 

 エティエンヌ・トルーベロという天文学に興味をもつ画家が描いた天体のイラストについて▼

湿りの海     Mare Humorum ↓

           

 

 星の随(まにま)に: 両親が離婚して、再婚した父の家で、新しく生まれた赤ん坊と暮らしている主人公の話。育児疲れの継母は、5時までドアガードをかけて寝ているので、主人公は家に入れない。帰宅後5時まで、マンションの老女の家で過ごすようになる。実母が恋しい。子供は星空を見ていろいろなことを想う。