先日からイタリア映画祭のアーカイブ配信が始まっており、過去の話題作を1000円で見られる。歴史好きの私は、リソルジメント期を扱ったマリオ・マルトーネ監督の『われわれは信じていた』(2010年)を見てみた。

 事前知識なしで見始めた。画面は美しく重厚であり、背後に流れるヴェルディなどのオペラもいいし、キャストもすばらしい。マッツィーニ、ガリバルディ、ヴィットリオ・エマヌエレ二世、カヴール宰相のような著名人ではなく、アンナ・バンティという作家の小説をもとにして、架空の名による南部出身の男たちを主役としている。フランチェスコ・クリスピも台詞上で語られるだけである。ある程度リソルジメント[19世紀、ナポレオン体制崩壊後、一部オーストリアの支配下にあったイタリアの独立と統一を標榜した運動で、共和派と立憲君主制派に分かれていた]について知っている人ならば、それなりにわかるかと思うが、一般の日本人にはわけがわからないかもしれない。wikipediaの解説を読んで、再び視聴した。わかったことをメモる。

 

 1. Le scelte[選択]: 舞台はチレント[カンパニア州パエストゥム南の半島部]、時代はナポレオン敗退後の王政復古期。政権に返り咲いたブルボン家は、革命の結社である炭焼党員の検挙と処刑を行なっている。共和派を標榜する三人の若者、サルヴァトーレ、アンジェロ、ドメニコ、が登場。彼らは、革命思想をもつ愛国主義のミラノ貴族クリスティーナのサロン(パリのサロンかしら?)に出入りしている。アンジェロは、チレントに戻ったサルヴァトーレを裏切り者として刺殺する。

 

 2. Domenico: 1850年頃。ローマ共和国の夢が潰え、共和派の革命家たちは、カンパニア州内陸部のモンテフスコに投獄される。獄内では、共和派と王党派の対立が見られる。ドメニコは、シジスモンド・カストロメディアーノと気持ちを寄せ合う。シジスモンドは釈放されるが、再び牢に戻り、世間の情勢を仲間に伝える。それには明るい期待がもてた。

 ドメニコが大人になり、ルイジ・ロ・カーショが代わって演じているが、やはりこの俳優の存在感は主役級だ。

 

 3. Angelo: 1857年当時のロンドンが舞台。マッツィーニを見限ったアンジェロは、フェリーチェ・オルシーニによるナポレオン三世の暗殺計画に加担することになる。舞台はパリに移り、爆発物を手にしたアンジェロらはオペラ座の前に立つが、発覚して逮捕される。オルシーニとアンジェロがギロチン刑に処される。

 

 4. L'alba della nazione[国家の黎明]: 1862年、イタリアは統一されたが、南部では軍による山賊狩りが遂行されている。ガリバルディが再び義勇軍を募っているのに応じようと、ドメニコ(白髪頭になっている)は南下し、カラブリアへの途上、サルヴァトーレの忘れ形見と出会う。二人はガリバルディの軍と合流するも、アスプロモンテで義勇軍は正規軍に迎撃される。サルヴァトーレの息子は脱走兵(徴兵忌避者)として司法の場も経ずにその場で処刑される。トリノのカリニャーノ宮にて、ドメニコはシジスモンド・カストロメディアーノに語りかけ、失望を独白する[レッチェの考古学博物館はシジスモンド・カストロメディアーノ博物館というが、この人だったのか、と合点がいった]。

 

 イタリア史、特に南イタリアの近代史を勉強した私には、妥協の結果成立した統一イタリア政府が南イタリアをどんなに失望させたかよくわかる( "Risolgimento tradito" )。南イタリアには徴兵忌避者が多く出て、彼らが山賊として次々に処刑されていった。統一後の南イタリアでは毎年何千人もの徴兵忌避者が山賊として即時銃殺されたのであるが、映画ではそこのところを軽く流していたような気がする。

 まあ、革命を支援した貴族の女性クリスティーナのことなど、興味深くもあった。

 

 

 劇中で歌われる曲。南部の人々はガリバルディに期待するものがあったのだ。