この春からガイド稼業が復活していて、箱根や河口湖に富士山を見に行くことも多々ある。そこで、もう一度、『竹取物語』の別本をさらりと読み直してみることにした。先日見た、沢口靖子の『KAGUYA』がまぶたに浮かぶ。メモる。
- 竹取の翁[神事に関わる公務員: 竹は聖木]が、根元の光る竹の中に三寸(約9cm)の人を見つけ、家に持ち帰り、妻と大切に育てる。
- 以後、翁は竹から黄金を見つけるようになり、豊かになる。その娘は竹の如く三ヶ月で急速に成長した。翁は「なよ竹のかぐや姫」と名付け、成人の祝宴を開く。
- 世の若者は皆、彼女を一目見ようと群れ集まるが、相手にされず、去っていった。
- 五人の貴公子が残る。石作の皇子、庫持の皇子、右大臣阿部御主人(あべのみうし)、大納言大伴御行(みゆき)、中納言石上麻呂足(いそのかみのまろたり)である。
- 翁は姫に結婚を勧めるが、姫は容易には従わず、五人のうち、自分の望むものを見せてくれた人に嫁ぐことにすると言う。
- 姫は難題を提示する: 仏の御石の鉢、蓬莱山の玉の枝、火鼠の唐衣、竜の首に光る球、燕のもつ子安貝の五つ。
- 石作の皇子は、奈良の小倉山で見つけた鉢を持ってくるが光らず却下される。
- 庫持の皇子は、鍛治の匠にそれらしきものを作らせ、探してきたふりをする。
- そこへ鍛治の匠たち六人が現われ、労賃を請求し、嘘がばれ、皇子は「たまさかり」、姿をくらます。この人のモデルは藤原不比等とされる。
- 火鼠の皮衣は、中国商人に探させ、大枚をはたいて入手されたが、かぐや姫が火をつけたらめらめらと燃えてしまい、偽物であるとわかった。
- 竜の首の球を、大伴御行は家来に探させ、妻たちを離別して待つが、埒が開かないので、自分で船に乗り、探しに出かけ、筑紫にまで至り、時化に翻弄され、命からがら帰還し、かぐや姫を悪党とののしる。
- 家来に燕の巣を見張らせ、子安貝を探させる石上麻呂足[物部氏の実在人物]。ついには自分で探し、棟に吊り上げた篭から落下し、気絶する。手につかんでいたのは燕の糞であった[貝がない→甲斐がない]。中納言は衰弱死する。かぐや姫は「待つかいがない」という見舞いの歌を詠む。それを「かいがあった」として絶命する。
- 帝はこれらの噂を聞き及び、使者を遣わすが、姫はやはり会おうとしない。
- 翁は帝に召喚され、宮仕えさせるように命じる。だが姫は拒否する。
- 帝は狩りに出かけたふりをして、姫を垣間見る。あまりに美しいので不意を襲い、連れ帰ろうとするが、姫は発光して拒否し、帝は諦める。その後、二人は歌のやりとりをするようになる。
- 三年ほどの時が流れた頃、姫は月を見て思い悩むようになる。十五夜に近いある夜、姫は翁たちに自分は月の者だと打ち明ける。
- 三人が悩み苦しんでいることを知った帝は使者を送る。翁は帝に軍隊の派遣を請う。十五日、二千の軍隊が派遣され、屋敷を警護する。
- 午前零時頃、雲に乗った天人たちが下りてきて、中空に浮いて居並ぶ。兵たちはなす術もない。かぐや姫は置き手紙を書き、天の羽衣と不死の薬を受け取る。帝宛ての手紙もしたためると、それらを頭中将に託け、昇天してしまった。
- 受け取った帝は悲しみ、頭中将に一番天に近い山はどこかと尋ね、ならば駿河国にあるというその山の頂でそれらを燃やすように命じた。以後、その山は「富士の山」と言われることとなった。
ということで、富士山を見に行く時にこの御伽噺は必須なのである。この本にはいろいろ解説がある。物語の原題は『竹取の翁の物語』だとか、かぐやという名前の貴族の娘が二人実在したとか、成立年代は9世紀末、作者は不詳だが、反藤原の立場の者と思われる、など。
しあぽんのブログの過去スレ
静岡県では、かぐや姫は月ではなく富士山に帰る

