ヨハネ・パウロ二世とは、初めてイタリアへ行った時の特別な思い出がある。我々に声をかけて下さった西山達也神父のおかげである。映画の日本語字幕のDVDは売り切れなのだが、イタリア語のfull動画がyoutubeにupされているので、3時間もあるが気合いを入れて見てみた。このような映画があったことは、先日、エンニオ・モリコーネの映画を見て知った。2005年にイタリアの Canale 5とポーランドが共同制作したものだ。監督と脚本はジャコモ・バッティアート。

 場面はナチス・ドイツによるクラクフ侵攻から始まる(この時、主人公カロル・ボイティアはまだ学生であった)。ポーランドは近世にも列強によって分割されたりしたが、第二次大戦下ではナチスに攻め込まれ、ナチスが崩壊してからは、ロシア[いつも火事場泥棒ですね]に占領されて共産化させられた。

 この映画はヨハネ・パウロ二世の半生を扱いつつ、ポーランドの抑圧された現代史を浮き彫りにしている。ナチス・ドイツの支配下、非公式とされている地下の神学校で学び、カロルに影響を与えた勇敢なるザレスキ神父[実話では、アウシュビッツで亡くなったコルベ神父であり、後にヨハネ・パウロ二世により列聖される→聖母の騎士修道院訪問に際しての教皇のお言葉]が殺害されてしまう。ソ連に組み込まれ、共産主義政権のもとで、カロルは司祭に叙任されるも、当局から送り込まれたスパイによって監視され続けるが、いつのまにかこのスパイはカロルの人格に魅了されていく。ローマの神学校でも学び、ルブリン大学で教鞭をとり、クラクフに戻り、教皇パウルス六世のもと、若くして大司教に叙任される。この教皇が催した第二バティカン公会議での信教の自由について演説する。この教皇の没後に選ばれたヨハネ・パウロ一世は在位わずか33日でおそらくバティカン銀行の改革にからんで暗殺された[ゴッド・ファーザーIIIを思い出す]。

 大詰めは、システィーナ礼拝堂におけるコンクラベで教皇に選出される場面。続いて、実録映像により、サン・ピエトロ広場にひしめく信者を前に就任のあいさつ!! カロル・ボイティワは、ヨハネ・パウロ二世と名乗ることにした。

 

 改めて、ポーランドの民主化に思いを致し、ロシアのウクライナ侵攻を考えさせられた。ブリンケン米国務長官は言う: ロシアが侵攻を止めれば戦争は終わり、ウクライナが抗戦を止めれば国が失われる、と。

 

 なお、この映画の原作となった書物『カロル物語―ヨハネ・パウロ二世の知られざる生涯』は邦訳されていない。だが映画では、なぜコルベ神父の部分をザレスキ神父に置き換えたのだろうか? コルベ神父のアウシュビッツでの犠牲を語ると主題が大きく横道にそれると考えたからかもしれないが、コルベ神父は日本に縁があるので少し残念ではある。

 

 追記: DVDを入手した。言語は英語で、イタリア語ではない。字幕は日本語である。大きい画面で見るのはよいものだ。主役のキャストはとても良い顔をしている。知的で穏やかでまさしく若きヨハネ・パウロ二世を見ているようだ。この映画の終盤は繰り返して見る価値がある。

 ポーランドの司教としてのカロルの説教をプーティンやミャンマーの軍事政権、地球に多々ある専制支配者たちに聞かせたい。メモる: 国は人権を侵害できない。国は正義を抑圧できない。自らを貶める国は滅びる。国民の自由を奪えば道徳や社会秩序が乱れる。自由のために死んだ人ー自由のために不正に苦しむ人ーその死と苦しみを無駄にはしない。この教会はあなた方の味方だ! 戦争を起こす国は報いを受ける!国民を飢えさせ、殺し、拷問にかける国は報いを受ける!