子供の頃、『不思議の国のアリス』(Alice's Adventures in Wonderland)(1865)を読んだ覚えはあるが、これが安部公房の愛読書だと知り、河合祥一郎の訳文と、ジョン・テニエルの挿絵で読み直したかった。なんだか、安部公房の児童文学を読んでいるような感じであった。アリスは親父ギャグみたいなナンセンスな言葉遊びが好きなのだが、この翻訳ではそこをうまく処理していた。さすが!!  言葉のギャグをいちいちメモすることもできないのでこのメモは意味がないとも言える。

 

 巻頭の詩: 黄金の、光輝く、昼下がり〜ボート遊びをしながら三人娘に不思議の国の話を語り、黄昏れる。

 

 第1章 ウサギの穴に落ちて: アリスが暑い日に土手でぼうっとしていると、白ウサギが傍を駆け抜ける。そのウサギは服を着て、懐中時計を持っていた。それを追ってアリスは穴に飛び込み、延々と落ちていく。墜落した所には、通路があり、ドアが並んでいるがどれも開かない。小さな鍵を見つけ、それのささる小さな扉を開けると、すてきな庭がある。テーブルの上に見つけた瓶の中身を飲むと体が縮む。テーブルの下の箱の中のケーキを食べてみるが、変化なしか・・・

 

 第2章 涙の池: ところが、今度はぐんぐん体が伸びて[アリスが縮小拡大する場合、衣装も変化する]、頭が天井にぶつかる。泣くと、涙の池ができる。ウサギに話しかけるも逃げられる。そのうちにまた縮まり、自分の流した涙の池に落ち、ネズミを見つけて話しかけるが、ネコとイヌの話をして怒らせる。

 

 第3章 党大会レースと長い尾話: 涙の池には鳥たちもいたが、岸に上がる。濡れた羽根を乾燥させるためにネズミが話をするが、乾燥しないので、党大会レースをすることになる。その賞品として、アリスは砂糖菓子を配り、アリスには自分の指ぬきが与えられる。またネズミの尾話が始まる。アリスが自分の猫のダイナの話をすると、誰もが動揺して立ち去り、アリスはひとりぼっちになり、また泣き出す。

 

 第4章 ウサギのお使い、小さなビル: 白ウサギが現われ、扇子と手袋の落とし物を探し、アリスに家に取りに行けと言う。人違いをしたようだ。その家で見つけた小瓶の中身を飲むと、アリスはまた大きくなり、家から出られなくなる。やって来たウサギに、アリスは窓から大きくなった手を出し、煙突から下りて来たビルという動物(トカゲ)を蹴っ飛ばす。今度は窓から小石が投げ入れられる。その石は床でケーキに変わったので、それを食べたアリスは再び縮小する。ドアから抜け出すと動物の群れが押し寄せてきたので、森へ逃げ込み、かわいくも巨大な子犬と出会うが、逃げる。辺りを見まわすと、キノコが生えていて、その上に水キセルをふかす青虫がいた。

 

 第5章 青虫が教えてくれたこと: その青虫は横柄な物言いである。アリスが、小さくなったのがみじめだと訴えると、キノコの一方をかじると大きくなり、もう一方をかじると小さくなると告げて去る。キノコは丸いので悩んだが試してみたところ、伸びたり縮んだり・・・首がヘビのように伸びたり・・・ハトにヘビと間違えられたりした挙句、キノコのあちこちをかじりながらようやく普通の大きさに戻る。だが結局、あのきれいなお庭に入りたくて、二十センチくらいに縮まる。

 

 第6章 ブタとコショウ: 魚のような召使いが「女王陛下より公爵夫人へ、クロッケーのゲームのご招待」状をカエル顔の召使いに渡す。その家の中では、コショウ入れすぎのスープが煮え立ち、公爵夫人が子供を赤ん坊をあやしていた。暖炉の前にはニヤついたネコがいる。チェシャーネコである。公爵夫人は「みんながよけいなおせっかいを焼かなければ、世界は今よりずっと速くまわるだろうよ」と言い、赤ん坊をアリスに投げてよこす。アリスはそれをあやしていると、ブタに変わったので森へ逃す。近くの木の上にチェシャーネコがいて、帽子屋あるいは三月ウサギを訪ねるようアリスに言う。両方とも狂っているとのこと。ネコはニヤニヤ笑いを残して消える。

 

 第7章 おかしなお茶会: 三月ウサギの家の前の木陰ではお茶会が開かれており、眠るヤマネをクッションがわりにして、三月ウサギと帽子屋が長いテーブルの一隅に座っていた。招かれざる客のアリスは空いた席に座り、意味不明の会話を聴く。しまいに、二人はヤマネをティーポットに押し込む。アリスは木に扉を見つけて入ると最初の広間に戻り、ついにあのお庭に出ることができる。

 

 第8章 女王陛下のクロッケー場: その庭では、三人の庭師が白バラを赤く塗っていた。女王様の口癖は「この者の首をはねよ!」である。クロッケーの試合は、玉は生きたハリネズミ、クラブは生きたフラミンゴなのでとても難しい。空中にチェシャーネコが現われたのでアリスはぼやく。王様と女王様はそのネコが気に入らない。胴体のないネコの首をどう切れるか処刑人が困っているうちにネコは消える。

 

 第9章 海ガメもどきの話: 醜い公爵夫人と再会し、いろいろ教訓を聞かされる。女王の脅しにあい、公爵夫人は姿を消す。女王はアリスに海ガメもどきを見せようと会場を後にし、処刑宣告を受けた人々は王様により全員釈放される。女王はグリフォンのもとにアリスを残して立ち去り、グリフォンはアリスを海ガメもどきのところに連れていく。海ガメもどきはアリスに学校生活について話す。

 

 第10章 ロブスターのおどり: 海ガメもどきは次に、ロブスターのおどり、タラの歌などについて語る。そして裁判が始まるという声が聞こえる。

 

 第11章 タルトをぬすんだのはだれ?: 二人は、タルトの置かれた法廷にやって来る。裁判官は王様で、陪審員は十二匹の生き物である。裁判はナンセンス

 

 第12章 アリスの証言: アリスはまた大きくなり、立ち上がった時に陪審員席をひっくり返してしまう。大きすぎるので退席させられそうになるが抵抗する。白ウサギにより拾われた文書が提出され、中にあった詩が読み上げられる。アリスは意味がないと言う。トランプに「あなたたちみんな、トランプじゃないの」と言うと、トランプがこぞって飛び掛かってきたのでアリスは払いのけようとする。

 ここで、川べりで姉の膝枕で寝ていたアリスは目覚め、へんな夢の話を話して聞かせる。アリスがいなくなった後、姉は目を閉じて不思議の国の夢を見る。

 

◁おかしなお茶会

 

 ▽ティム・バートンの ALICE IN WONDERLAND トレイラー

 

 

 

 ▽河合祥一郎の訳ではありませんが、ネットでも読めます。