古い岩波文庫は読みにくいなあ。字が小さくて印字が薄い。

 

 第8巻: トゥルヌスはラウレントゥムのアクロポリスにて開戦態勢に入り、その傘下にプーリアのメッサープスやエトルリアのメーゼンティウスらが集まる。さらにディオメーデスのもと[アルピ: 今のフォッジャの辺り]に使者を送り、参戦を促す。

 海岸で眠りにつこうとするアエネーアースのもとにティベル河の神が現われ、樫の木下で白い牝豚が三十匹の子豚に授乳するを見る場所がそなたらの建国すべき場所だと予言する。アルカディア人の王エウアンデルに助力を頼むべし、明け方にユーノー女神に祈りを捧げるべし、とも。目覚めたアエネーアースは、その豚をユーノーに犠牲として捧げ、ティベル河を遡行する。アルカディア人たちは、ヘルクレースの祭儀を執り行っているところであった。エウアンデル王はアエネーアースをアンキーセスに生き写しだと感嘆し、饗宴に招く。ヘルクレースがカークスをいかに退治したかが四方山話に語られる。そしてアエネーアースの後裔がパッランテウムを高貴なる都とすると予言し、"ルペルカル"という崖下の洞窟を指し示す。ウェヌス神は、夫のウォルカーヌスにアエネーアースのための武具をつくるよう依頼する。リパレーに接した島[ヴルカーノ島]の下にある洞窟でこの神のために鍛冶をするキュクロープスにその武器作りの命を下す。エウアンデル王は、カエレのメーゼンティウス王があまりにも暴虐につき、異国の人を将とせよ、との占者の予言があった、タルコンからはエトルスキーの笏と王冠が届けられたが、自分は老齢であるし、息子にはサビーニーの血が入っているから、あなたが玉座につくようにと語る。その時、ウェヌスが天空より電光を送り、武器を送り届けることを告げる。タルコンとエトルスキーの軍団はアエネーアースに加勢すべく陣を張る。

 そして、火の神による盾には、イタリアとローマの未来が描かれている。狼の乳を飲む双子からサビーニー女の略奪、軍神マルスの神官サリイーらの舞、ルペルキーの神官、反逆者カティリーナ、善良なカトー、アクティウムの海戦など。こうしてアエネーアースはおのれの子孫の名声と運命を知る。

 

 第9巻: ユーノーはイーリスを遣わしてトゥルヌス王に出陣を促す。トロイア軍はしかし、アエネーアースの言い残したように、撃って出ることはせず、守りを固める。母なる女神キュベレーは、トロイア人の船舶が焼かれぬようニンフのように海へと出させる。それを見たルトゥリー族は肝をつぶす。ルトゥリー族が酔って寝込んでいる隙に、アエネーアースへの伝令としてニーススと若きエウリュアルスが陣営を抜け出すこととなり、ユールスが見送る。二人は敵兵を殺して戦利品を奪うが、敵に見咎められ、エウリュアルスが先ず殺される。連れの少年を見失って引き返したニーススも落命する。トゥルヌスらは、二人の首級を槍先に刺して進軍する。それを見たエウリュアルスの母は狂乱して嘆く。ルトゥリー人、ウォルスキー人は、全力で塔を倒壊させる。アスカーニウスは矢を放ち、悪口雑言吐き散らすレムルスの頭を射抜く。アポッローン神はその初陣を褒めるも、それ以上は慎めと、馴染みの供、老ブーテスの姿を借りて諭す。マルス神は、ラティウム軍に勇気と力を、トロイア軍には恐怖を胸に送り込むも、ユーピテルはイーリスを妹ユーノーのもとに遣わし、トゥルヌスを退かせよとの命を下す。汗と敵の血潮にまみれた体をトゥルヌスはティベル河で洗い、仲間のもとに戻る。

 

 第10巻: オリュンポスの宮殿に集まった神々に、ユーピテルはイタリアとトロイアの衝突や戦争はならぬと言ったのに何たることだと口を切る。ウェヌスとユーノーは互いの言い分を譲らないので、ユーピテルは運に任せるしかないと言い切る。その間、ルトゥリー軍はトロイア陣営を包囲し、追い詰めていた。一方、アエネーアースは、エトルスキーの陣営に入ってタルコン王と面会し、盟約を結ぶ。コサエ、クルシウム、ポプローニア、イルワ島[エルバ島]、ピュルギー、グラヴィスカエからも援軍を得る。その勇士らは三十の船に打ち乗り、潮の原を切ると、キュベレー神によりニンフに変身していた船がアエネーアースを取り囲み、ユールスらがラティウム勢に攻囲されていることを告げると、船尾を押し進める。一方、トゥルヌスは海岸を占拠し、艦隊を追い落とせと部下たちを奮い立たせる。だがアエネーアース側が機先を制し、敵兵を薙ぎ倒し、槍を投げまくる。荒れ地のために馬を使えぬアルカディア人は馴れぬ徒歩戦に難儀する。パッラスはしかし敵中に攻め入り、めざましい働きで部下を鼓舞するも、トゥルヌスの槍によって倒される運命は決まっていたのだ。アエネーアースが荒れまくって敵を血祭りにあげていると、包囲を受けていた少年ユールスたちがにわかに打って出る。

 その時、ユーピーテルとユーノーは、トゥルヌスの死のために時間稼ぎをすることで合意する。ユーノーは幽霊をアエネーアースに似させてトゥルヌスを惑乱させて船に導き、海上へと遠ざける。

 一方、メーゼンティウスは、消えたトゥルヌスに代わって戦ったが、アエネーアースと対峙することになる。その時、メーゼンティウスの可憐な息子ラウススが父を守ろうと割って入り、落命する。メーゼンティウスも倒れ、喉に剣を受ける前に、祖国でも憎まれている我々だから、父子ともあんたに墓に葬ってほしいとアエネーアースに頼む。

 

 第11巻: アエネーアースは、部下たちを弔い、メーゼンティウスの武具で戦勝記念碑をつくる。そして、涙ながらに、戦死したパッラスの亡骸をエウアンデル王のもとに送る手筈を整える。

 そうこうするうちに、ラティウムから講和の使者がやって来る。その中のひとり、トゥルヌスと反目しているドランケスはアエネーアースを褒め上げ、12日間の停戦が成立する。

 一方、アルカディアの人々は、パッラスの亡骸を迎えて悲嘆に暮れる。

 ラティーヌスでは、ドランケスがトゥルヌスだけが戦えばよいと言うと、トゥルヌスを庇う人々もいる。そこへ、援軍を求めていたディオメーデスからの返答が届く。そのような戦にそそのかすのはやめてくれ、と。ドランケスは、ラティウムの禍難の源泉はトゥルヌスだ、われわれは泰平を求めていると言う。

 一方で、アエネーアースは陣営に戦闘を命じて軍を繰り出していた。その報に慌てたトゥルヌスらは迎え撃つ体制をとり、味方の種族にも臨戦体制を呼びかける。ウォルスキー族の女王カミッラが登場する。彼女の生い立ち、いかにディアーナ女神の愛顧を受けているか、などが語られる。勇猛なカミッラらの戦いぶりはアマゾンたちのよう。ユーピテル神はタルコンを駆り立て、各隊を鼓舞させる。アッルンスはカミッラをつけ狙うと、アポッローン神に祈り、投げ槍を構える。その槍はカミッラの乳房の下に突き刺さり、落命させる。女神ディアーナの伝令オーピスは、遠くより戦況を眺めて嘆息すると、カミッラ殺しのアッルンスに向けて矢を引き絞る。

 ラティウム軍は潰走し始めるが、トゥルヌスは敵軍が攻め寄せるのを見るに、森を出て、平野に討って出る。こうしてトゥルヌスとアエネーアースは平原で対峙する。しかるに太陽神が暗い夜を呼び戻したため、両軍はそれぞれ砦を固めることとする。

 

 第12巻: トゥルヌスは手負いの獅子のごとく奮い立ち、アエネーアースと一騎打ちをするとラティーヌス王に告げる。王は慎重に、ラウィーニアのことについては、神意であり、トゥルヌスがいくさで落命する前にいくさをやめたいと諭すが、トゥルヌスの逸る心は鎮まらない。王妃アマータもトゥルヌスにトロイア勢と手合わせするのはやめてほしいと縋り付くが、トゥルヌスは使者に、二人だけの血戦でいくさの始末をつけようという口上を与えると、狂気に燃えて武装を整える。

 一方、挑戦を受けたアエネーアースも武器を帯びる。夜が明けると、双方、大都城下の平原に進み出でる。それを見たユーノーは、トゥルヌスの妹ユートゥルナ(水のニンフ)に兄のためにできる何かをなすように誘う。両軍はそれぞれ神々に祈り、内臓占いを行なう。もはやトゥルヌスの敗退は定めのように見え、ルトゥリー側は不安に陥る。そこへ、勇士カメルスの姿をとったユートゥルナがルトゥリーたちを鼓舞し、鷲と白鳥を飛ばして吉兆を示し、卜鳥官の檄に応じて、兵士たちは投げ槍を敵に打ち込む。こうして一騎討ちではなく、両軍が激しくぶつかりあうこととなる。

 アエネーアースは部下に向かって、戦いは自分とトゥルヌスのみでという約が結ばれていると叫ぶが、その時、誰かの射った矢によって傷つく。一方、トゥルヌスは次々に敵を薙ぎ倒していく。医者のイアーピュクスがアエネーアースに刺さった鏃を除こうとするも効はない。そこへ母神ウェヌスが薬草と液汁をもたらし、癒やさせる。戦陣に戻ったアエネーアースはしかし、逃げる敵を追うことなく、トゥルヌスの姿のみを探し求める。そして城門の近くでラティーヌス王の二度にわたる背信を非難すれば、トロイア軍に対して城門が開かれる。城内では、トゥルヌスが落命したものと信じた王妃アマータが狂乱し、紫衣を引き裂いて首を吊る。

 その間、トゥルヌスは、妹の女神ユトゥルナの御す戦車にて人気の少ない戦場の端に逃れ、自分の姿を哀れんでいたが、もうこれ以上無様なふるまいはできないと、敵軍の真ん中を目指す。だがその剣が砕けて柄を残すのみ。出陣した時に父譲りの名剣を忘れて御者のものを使っていたのである。そのトゥルヌスに詰め寄るアエネーアース。だがその槍は、ファウヌスに献じられたオリーヴの古木の根に突っ立ち、抜き取ることができない。そうするうちに女神ユートゥルナが兄に剣を渡し、それを見たウェヌスがアエネーアースの槍を引き抜いてやる。ユーピテルとユーノーは話し合い、トロイアの者たちがイタリアびとと溶けまじり、"ラティーニー"となるようにすることで話がつく。アエネーアースの槍がトゥルヌスの腿に刺さると、討つ手を差し控えたが、その肩に少年パッラスの剣帯がかかっているのを目に留めると、怒りがこみあげてきて、敵の胸に剣を埋め込んだ。

 

 泉井久之助氏の訳はリズミカルですばらしかった。散文の訳本しか読んでいなかったが、これはとても満足できた(岩波文庫には読みやすい文字の改訂版をお願いしたい)。改めてウェルギリウスの偉大さを噛み締めることができた。この続きとして、いつか、リウィウスのローマ建国史も読んでみよう。

 

▽ブリンディシ、アッピア街道終点を示す柱の手前にある亡くなった家の碑文。19年9月21日没。アテネで詩人に会ったアウグストゥスがイタリアに連れ帰ったが、途上発病し、ブリンディシで没した。画像はsalentoacoloryのサイトより。

▽ナポリ、Parco virgilioにあるウェルギリウスの墓と言われる墓。長くナポリに暮らしていたこの詩人はナポリに葬られることを望んだとのこと。画像はwikipediaより。

 RAIの動画(1970年代のテレビドラマ)を見つけたので貼っておく。7話まである。