ベルニーニは私をローマに足繁く通わせた愛人のようなものである。この巨匠の作品を愛でるために何十回ローマを訪れたことか!!  コロナ禍でイタリアに行けない今、2017〜2018年にボルゲーゼ美術館で催されたベルニーニ展の大きなカタログを繙くのが楽しみのひとつである。

 この胸像のことは眼中になかったが、確かに口もとはベルニーニのものである。早世したウルバヌス8世の姪の胸像を依頼されたベルニーニが、あの「アポロンとダフネ」の群像で、ダフネの指先や爪先の繊細な表現を手がけた愛弟子のGiuliano Finelliに託した作品と知られていたために、長年さほど重視されていなかった作品なのだ。430頁以上もあるベルニーニ展のカタログには収蔵されていないが、言われてみれば、おそらくベルニーニは大パトロンのフランチェスコ・バルベリーニ枢機卿(マリアの兄)に依頼された手前、粘土による原案をつくったのではないだろうか。このおよそ10年後に手がけたベルニーニの愛人コスタンツァ・ボナレッリの胸像の、桃色吐息まで漏れそうなほどの生気に及ぶべくもないが、これにしても、ベルニーニの最後の作品「救い主」にしても、埋もれていた作品が21世紀になってから再発見されているのはすごいことだ。

 

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 La Repubblica紙の画像: バルジェッロで展覧会が催された時の記事より