この本はひとつのケースに2冊に分かれた装丁となっている。分厚すぎるから。この下巻だって500頁以上あるのだ。がんばろう!!

 

第24歌: 23歌に続き、オルランドの狂気がすさまじい。動植物のみならず、牧人や村人たちまでもなぎ倒している。

wikimediaより

 やはり23歌でオルランドに救われていたゼルビーノ、捕らえられた裏切り者のオドリコに出会う[13歌で、友人ゼルビーノに託されたイザベラを襲いそうになった]。彼を殺すこともできたが、愛欲に負けたオドリコの罪を「藁にはすぐに火がつく」ことに思いを致さなかったおのれの落ち度とみなし、讒言によってゼルビーノを危機に陥れた性悪の老婆ガブリーナに1年間仕えることを命じて放免する。後日、この悪党ふたりは落命する。

 そしてゼルビーノはオルランドを探すうちに見つけた彼の武具を拾い集めて注意書きを添えて松の木の下に置く。そこにタタール王マンドリカルドが現れ、そこから名剣ドゥリンダーナを奪う。ゼルビーノ、マンドリカルドと戦い、瀕死の重傷を負う。連れのグラナダ王女ドラリーチェ(13歌)のとりなしにより休戦。
 ここで恋人ブランディマルテを探すフィオルディリージ[ボイアルドの『恋するオルランド』の登場人物]がちらりと登場。

 ゼルビーノが失血により落命すると、イザベラはその後を追わんとするが、出会った隠者に助けられ、恋人の骸を棺に入れて運びながら女子修道院へと向かう。

 話は変わり、マンドリカルド、グラナダ王女ドラリーチェのいいなづけであったアルジェの王ロドモンテと出くわし、この姫を賭けて決闘する。そこへアフリカ王アグラマンテの窮状を伝える死者が現れ、勝負を棚上げとする。

第25歌: 場面は変わる。ルッジェーロ、イスラム軍によって陥落した町の広場で、恋人ブラダマンテと瓜二つの若者が火あぶりの刑に処されつつあるのを目にし、群衆をきりひらき、救出する。町を出たところで、その若者はブラダマンテの双子の兄リッチャルデットであるとわかる。彼は火刑になった経緯を語る: ブラダマンテが男と間違われ、スペイン王女フィオルディスピーナに惚れられたという話を聞いた兄は、魔法で男に変えてもらったことにして王女のもとへ。幾月かの悦楽の後、王に知られるところとなった体という。そしてふたりは従兄弟の騎士アルディジェーロの守る城に入ると、サラセン勢に捕らえられた彼の兄弟ふたりを救出せねばならないと告げられ、翌日同行することとなる。その夜、恋か信心かで苦悩するルッジェーロ、ブラダマンテに書状をしたためる。彼は恋の成就のために改宗を心していたのである。
第26歌: ルッジェーロ、アルディジェーロ、リッチャルデットの3人は兄弟救出に向かう途上、女騎士マルフィーザ[実はルッジェーロの双子の妹]と出会い、女だとは知らずに仲間連れとする。4人のめざましい働きにより、マラジージとヴィヴィアーノは救出され、兜を脱いで女とわかったマルフィーザに皆見惚れる。一行が食事をとる泉の畔には、魔術師マーリンが刻んだ700年後の偉人たちの像が置かれている。フランソワ1世やエステ家の君主たちの像もある。そこへブラダマンテの侍女(イッパルカ)がやって来る。ルッジェーロのことを見知らぬふりをしながら、駿馬フロンティーノがサラセン武者に奪われたと話す。ルッジェーロも知らぬふりして、その馬を取り返そうと一行と別れ、侍女と別の道を行く。残ったマルフィーザが、戦利品の女の衣装を身につけたところに、イスラム騎士のマンドリカルドとロドモンテがやって来て、その美女をロドモンテにあてがおうとやり試合を挑む。リッチャルデットら男衆は歯が立たないが、女の衣装を脱ぎ捨てて物の具をつけた筋骨たくましきマルフィーザが槍をとると互角の闘い!! そこでロドモンテは、勝負を棚上げして、アグラマンテ王の救援を優先しないかと提案する。

 ルッジェーロ、ようやくロドモンテを見つけたものの、馬は返してもらえない。マンドリカルドは、ルッジェーロがもつ鷲の紋章をつけたヘクトルの楯の所有権を主張する。このようにサラセン騎士らは傲慢と不和の混乱に陥る。そこでマラジージは、ドラリーチェの馬に魔法をかけて疾駆させ、その後を追う形で一行はパリをめざす。

第27歌: シャルルマーニュとアグラマンテの両軍が対峙する戦場。シャルルの軍は大打撃を受ける。そこに大天使ミカエルがイスラムぐんに「不和」をもたらす: グラダッソとマンドリカルドは名剣ドゥリンダーナをめぐって争い、ロドモンテとマンドリカルドはドラリーチェ姫を取りあい、ロドモンテとサクリパンテは馬を取りあい、マルフィーザは彼女の剣を盗んだ騎士ブルネッロを縛り首にしたい・・・王の采配で、ロドモンテとマンドリカルドの勝負はドラリーチェの好み次第となり、敗れたロドモンテ、女の性を罵りつつ陣を去る。

第28歌: 居酒屋の亭主、女性(にょしょう)についてのエピソードをロドモンテに語る: ランゴバルド王アストルフォは美貌を誇っていたが、それに劣らぬほどの美男だというジョコンドをローマから呼び寄せる。途上、忘れ物を取りに戻ったジョコンド、最愛の妻の不貞を目の当たりにして嘆きやつれ、王の城内で療養するうち、女王の不貞を目撃するにおよび、「悟り」をひらいて再び美と健康を取り戻し、女王の情事を王にばらす。そこで王とジョコンド、女性の貞操について実地調査の旅に出る。美男の彼らになびかぬ女はひとりとてなく、飽き飽きしたので、共通の女性をひとり選んで共有し、交互に抱くこととし、川の字でやすむ。そこに女の恋人が現れ、大胆にも夜這いに及ぶ。左右に寝ていた王とジョコンドは、互いに遠慮して翌朝まで気付かぬ始末。こうして「悟り」をひらいたふたりは各々の妻のもとに戻り、心安らかに過ごしたという。その後も傷心の旅を続けるロドモンテ、川沿いの村で、修道僧とともに棺桶を運ぶイザベラを見初め、一目惚れして掻き口説くが相手にされない。

第29歌: ロドモンテ、横から口を出して説教する修道士を海に放り込み、残されたイザベラは、不死身の薬草汁なるものをつくって自分のからだに浸し、彼をだまして自分を試し斬りさせ、貞節を守って落命する。これに感銘を受けたロドモンテ、恋人たちのため、川岸に巨大な墓廟[ローマのハドリアヌス帝の墓の如き、とある。それにしてもロドモンテのキャラは憎めない]を建設し、手前に狭い箸を架けると、そこを通ろうとする者からの分捕り品を墓に奉納することとする。

 その工事現場に、物狂いしたオルランドがやって来て、ロドモンテと格闘!! もろとも川に落ちる。24歌に出てきたフィオルディリージ、これを目撃する。

 川から這い上がったオルランド、その地を駆け去り、ピレネー越えの途上、アンジェリカ夫妻に出会い、男の馬を殴り殺す。アンジェリカは指輪の魔法で危難を脱する。オルランド、走らせすぎて死んだ馬を引きずりながら、狼藉を働きつつ、西へと向かう。

第30歌: オルランド、次々に奪った馬を乗りつぶしつつ、ジブラルタル海峡にたどり着くと、海に入って馬を溺死させ、対岸へ泳ぎついて、彷徨い続ける。

 一方、諍いを続けるイスラム騎士たちにアグラマンテ王、誰がマンドリカルドと戦うか、くじ引きで決めようと提案し、相手はルッジェーロと決まる。死闘の末、マンドリカルドが討ち死し、ルッジェーロは瀕死の重傷を負う。王は名剣ドゥリンダーナをグラダッソに委ね、ルッジェーロは駿馬ブリリアドーロを王に献上する。

 ところ変わり、恋人ルッジェーロを待ちわびるブラダマンテ、侍女から手紙を受け取ったものの、約束の期日は過ぎる。ルッジェーロは深傷を負って一月もの間生死の境をさまよっていたのだ。ブラダマンテ、ルッジェーロとともにあるという女騎士に嫉妬の念を燃やす。家族のもとに戻った兄リナルド、彼女を残し、兄弟たちを引き連れてパリへと出発する。

第31歌: その一行、乙女(フィオルディリージ)を連れた騎士と出会う。果し合いが始まったものの暗くなったので休戦とするうちに、その騎士が自分たちの異母兄弟グイドーネであると明らかになる。乙女は、目撃したオルランドの様子を話し、リナルドはその狂気を癒すことを心に誓う。

 翌日、リナルドの軍勢はサラセンぐんを蹴散らす。恋人フィオルディリージと再会したブランディマルテ、彼女とともに、オルランド救出の旅に発つ。例の墓廟の近くの橋でロドモンテと決闘をし、川に落ちて溺れそうになるが、恋人の願いを聞き入れたロドモンテに引き上げられ、その塔内に幽閉される。彼女は恋人を救出してくれそうな騎士を探しに行く。

 一方、パリではリナルド軍が圧勝する。マラジージの魔法でゾンビの大軍に加勢させるという作戦が大成功したのだ。アフリカ王アグラマンテ、重傷を負ったルッジェーロを運ばせてアルルへと退却する。翌朝、名剣ドゥリンダーナと駿馬バイアルドを賭けてリナルドとグラダッソの決闘が行なわれる。

第32歌: 城に残っていたブラダマンテ、ルッジェーロの傍らにいるという女騎士マルフィーザへの嫉妬に苦しむ。そのマルフィーザは、盗人騎士ブルネッロの身柄をアグラマンテ王に委ね、王はその罪人を首吊りに処し、屍を荒れ地に晒す。

 ブラダマンテは嫉妬に苦しみつつも、23歌で従兄弟アストルフォから預かった名馬ラビカーナにまたがり、同じく無敗の「王獄の槍」を手にしてパリへと向かう。その道中、出会った騎士にルッジェーロの負傷についてのみならず、女騎士との噂を聞かされ、さらなる絶望を味わう。そして一夜の宿を借りるべく、トリスタンの城へ。最も強い騎士と最も美しい女性だけが泊まれるという掟に従い、他の宿泊希望者(スウェーデンなど、北国の王3人と、シャルルに黄金の楯を献上しようというアイスランドの女王の使いの乙女)とやり試合をして破り、宿泊権を得る。食事の折、その掟の由来を尋ねる。ブラダマンテが女性だということで、野宿させられそうになる乙女を慮り、自分を男の騎士とみなすよう交渉する。

第33歌: その白の広間を飾る絵は、予言者マーリンが後世にフランス勢がアルプス以南で起こす戦の模様を魔法で描いたものだという。各場面の説明。その晩、ブラダマンテの夢にルッジェーロが現れ、しばし悦びをもたらすが、目が覚めればもと通り。城を出ると、前の晩、彼女に敗れて野宿した3人の王が再度試合を挑んでくる。ブラダマンテ、これらを三突きでけりをつけ、乙女はその騎士が女であると明かし、王たちに屈辱を与える。3人は武具を投げ捨て、馬にも乗らないと誓う。

 ここで31歌のつづき: リナルドとグラダッソの決闘。激しい戦いの最中、名馬バイアルドが怪鳥に襲われて逃げ出し、決闘は棚上げとなる。グラダッソは馬を見つけ出したが、決闘の場に戻らず、名剣と名馬を手に入れてアルルから船に乗り、何処かへ。

 話はがらりと変わり、22歌で天馬を手に入れていたアストルフォに。天馬にまたがり、スペインじゅうを飛びまわり、アフリカへと渡り。エチオピアに至る。豪華な城に住まうその王は、盲目で飢えに苦しめられていた。驕慢の神罰により、悪臭を放つ怪鳥ハルピュイアに絶えず飲食を邪魔されていたからである。アストルフォは、これらの怪物を例の角笛で冥界へと追い払う。

第34歌: アストルフォ、怪鳥の逃げ込んだ洞窟の中に入る。そこで苦しむ霊魂の素性を聞かされる。彼女はリディアの王女であったが、自分に惚れた男を手玉に取り、非情な仕打ちをして死に至らしめた咎で罰せられているのだという。アストルフォ、ひどい黒煙にいぶされ、それ以上進むことを諦め、洞窟を出るとその穴をふさぐ。泉でからだを洗い、天馬に乗って月をめざそうと最も高い山の頂にのぼる。そこにある宮殿にて白髭の翁と出会う。彼は福音者ヨハネであり、オルランドの受けた罰は、異教徒の女への恋に血迷い、信仰を守るという力を疎かにしたことによるものだと語る。その正気を取り戻させる薬を得るには月に行かねばならない、とも。使徒とアストルフォは四頭立ての馬車で月に向かう。そこにはたくさんの正気があり、「オルランドの正気」は一番大きな壜に入れられていた。アストルフォは自分の正気も嗅ぎこむと、オルランドの壜を手に取る。地球へと戻る前、運命の糸を紡ぐ老婆パルカの宮殿を見せられる。(つづく)