演劇集団 Z-Lion
「This is a お感情博士!」
昨年11月に上演されて、
あすぴーこと高橋明日香さんがヒロインを演じたこの公演。
すっかり時間が経ってしまいましたが、
いつもの振り返りブログをようやくUPすることができます。
で・・・先に謝っておきます。
長くなりすぎた!!
これまで書いたあらくないあらすじの中でも最長、
しかも飛び抜けて長くなった気がします(^^;;;
正直これを最後まで読むのは相当なハードルですが、
良かったら、本当に良かったら、どうぞお付き合いください。
とてもとても素敵な、心がすごくあたたかくなる、
やさし~~いお話です。
☆ 「あらくないあらすじ」改め、「ただの細かいお話」w ☆
このお話は、2140年の、
今よりも科学がずっと進歩した時代のお話。
ある一軒の病院を若い夫婦が訪れました。
古い美術品がいっぱいならんだ院内を楽しむ旦那さんと、
それとは対照的に緊張した面持ちの奥さん。
そこに奥から、未来という若い医師が出てきました。
病院には初めて訪れたらしい旦那さんの雅紀さんは、
院内の様子に興味津々で、未来先生に話し始めます。
その病院はかつて、新しい時代を作った工場だったのでした。
そして奥さんのゆりなさんのお父さんは、
その工場で働いていたのでした。
未来先生もそのお父さん…水谷さんのことは良く知っているようでした。
水谷さんが亡くなって15年。
ここがかつて工場だった頃のことや、なぜ病院になったのか、
それを知らない2人は話を聞きたがりました。
それらは世に知られていないことでしたが、
「水谷さんの娘さんなら知る権利はあるか…」と、
診療の前に院内を案内しながら、未来先生は語り始めました。
「みんなが戻ってくるまで」そう言いながら。。。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
今から(劇中のね)40年前。
外見が人間と全く見分けがつかないくらいの人型ロボットが誕生し、
ロボット産業がどんどん発展して行くことになりました。
性格や感情など、今とは比べものにならないながらも備えていて、
様々な役割や機能別に活躍し始めました。
当時ロボットの工場だったこの場所。
アラタという社長と3人の技術者が、
ロボットの修理や機能の研究などをしていました。
外見などのデザインを決めるのが水谷さん。
50を過ぎても女性に縁がなく独り身のおじさん。
様々な機能を作るのが美里さん。
若い美人さんながら、ロボット研究ばかりのためこれまた独り身。
特技や感情などを作るヒロコさん。
唯一結婚経験あり、子持ちのおばさん。
そして30代そこそこ、これまた女性に縁のなかった社長のアラタ。
みんな仲が良い…のか分かりませんが、けなしあったり罵り合ったりしながら、
ワイワイここで研究をしていました。
そして彼らがデザインしたり機能を作ったりしたロボットがいました。
昭和という古い時代が好きな水谷さんの好みもあって、
その当時のものをモデルに作られていたロボットたち。
歌手や俳優をモデルにした、シンディや優作、リー。
シンディは歌を歌えるし、優作は何だかムードのある言葉が得意。
落語家がモデルの安楽師匠は、みんなを笑わそうと小噺などが得意。
ただ本当に笑えるかはまた別のお話でしたが…。
そして「ギャル」というストイックに生きた女の子をモデルにしたウララに、
さらにはお話のキャラクターがモデルのアトム。
人型ロボットは個性こそ命!そんなこだわりがあったようです。
(作中の時代からは昭和平成辺りは相当昔のことなので、
2015年現在から見て、若干解釈に誤解があるのがポイントw)
そんな彼らロボットたちは、
研究や修理の手伝いでアラタたちと一緒に働いていました。
またちょっと変わり種?
工場の入り口ではミッシェルという声だけのロボットが、
来る人や出掛ける人に、出迎えや見送りの挨拶をしていました。
当時、一般的なロボットが持っていた感情は、
分野別にインプットされた、いわば作られた感情でした。
そんな時代にアラタは、ロボットが自由に感情を生み出せる装置を、
偶然にも発明してしまいました。
それが「お感情博士」。
分野の線引きなどされない、様々に入り混じった感情を、
自分自身で新たに生み出せる装置でした。
アラタたちはロボットたちにお感情博士を取り付け、
日々どんどん感情を成長させていく彼らと共に、
にぎやかに楽しく過ごしていました。
ある日、営業の小島くんが、
一体の家庭用お掃除ロボットを連れてきました。
そのロボットは「花子」と言って、
とてもとても可愛らしい顔立ちのロボットでした。
依頼内容は指の故障の修理でしたが、合わせて、
全く入っていない感情を最新のものにすることと、
そして…お感情博士を入れる、というものでした。
当時はまだ今とは違い、ロボットに余計な感情は必要ない、
人間のように自分で感情を成長させるようなものは必要ない、
そういう考えが主流でした。
お感情博士の特許は取ったものの、
世の中に広まるような状況ではありません。
だからこの依頼は、一般家庭としてはとても珍しいものでした。
こうしてお感情博士を入れられ感情が芽生え始めた花子は、
工場の人たちやロボットたちに、明るく迎え入れられます。
今まで友達なんかいなかったけれど、初めて友達ができた。
それが嬉しくて楽しかった花子は、それから毎日、
自宅での仕事を終えては、工場に遊びに来るようになりました。
みんなと一緒に「感情」にはどんなものがあるか美里さんから教わったり、
新しく生まれた感情のことをおしゃべりしたり…
そして…友達とか仲良しという感覚はできていても、
まだロボットたちにはさっぱり分からない思い…「愛情」。
お感情博士から「愛情」が生まれることがアラタやみんなの夢、
なんてお話も聞いたりして、みんな楽しみにしていました。
そんな風にアラタたちやロボットたち友達に囲まれ、
みんなと一緒の楽しい時間を過ごして、
みんなにいっぱいに愛された花子は、
どんどん感情を成長させていきました。
その早さは目を見張るほど。
夜になって一度自分の家に帰ったのに、
忘れ物をしたと嘘をついて工場にまた遊びに来てしまったり。
嘘まで覚えて…もうほとんど人間と変わらないくらいでした。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
未来先生とゆりなさん、雅紀さんが話をしていると、
ひとり、またひとりと、病院に帰って来た人たちがいました。
それは、シンディやリー、安楽師匠といった、
今まさに話していた、かつて工場にいたロボットたち。
彼らは今でもずっと、工場が病院になってもずっと、
ここを守って、一緒に働いていたのでした。
未来先生が待っていたのは彼らのことでした。
見た目は変わらないながらも、中身はすっかり成長して、
もう話し方や動きまでも、人間と全く見分けがつかないほど。
水谷さんの娘であるゆりなさんのことも知っていて、
とても懐かしい再会を喜びつつ、昔話の輪に加わって行きました。
そうしてみんな楽しく話している中でひっそりと、
安楽師匠がミッシェルに向かってつぶやきました。
「社長……元気にしてるのかなあ」
「もちろん元気にしてるさ!」
そう答えるミッシェルでした・・・・・。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
アラタの工場には、改造屋の浅井さんが、
秘書の近藤さんを伴って良く来ていました。
かつて同じ工場で働いていて、今ではともに独立したアラタと浅井さん。
浅井さんは機能やデザインの相談をしにきては、
アラタを自分の会社に招き入れる誘いをするのでした。
浅井さんはお感情博士を高く評価していましたが、
でも知名度や評価が伸びないままなのを惜しんでもいました。
大手メーカーのトヨダにも繋がりがある自分の人脈で何とかできる、
だから自分のところに来いと、誘うのです。
自動車メーカーのトヨダはロボット開発にも乗り出していたのでした。
もちろんアラタは、自分の工場もあり、みんなもいるため、
どうやらその気はなさそうでしたが。。
ただ、自分の発明が果たして本当に良かったのかどうか、
ロボットに感情を持たせることに意味があったのか、
そのことはずっと悩んで迷っていました。
そんなアラタの様子に不安を募らせる、ネガティブな性格のアトム。
社長が自分たちを捨てて浅井さんのところに行ってしまうのでは?
そう思ったアトムは、みんなと一緒にアラタに訴えに来ました。
自分たちを見捨てないで!と。
もちろんアラタにはそんなつもりは全くなかったのですが。
この時代、ロボットたちは、みんな不安を抱えていました。
それは、いつか自分は人間に捨てられてしまうのでは?という不安。
壊れたり役割がいらなくなったり古くなったり、
そうして廃棄されるロボットは、当時はたくさんいたのです。
でもアラタは、そんなみんなに向かって、
お前たちは自分の家族だ、捨てたりはしない、と約束するのでした。
自分も身寄りのなかったアラタには、
みんなは本当に家族のような存在でした。
まして世界で一番人間に近い存在のみんなでしたから。
そうしてみんなが安心して喜んでいた中で、
花子だけは、たったひとりで、不安を募らせていました。
夜、もう帰らなければいけない時間になっても、
まだ工場の中でたったひとりで思い悩んでいた花子。
それを見つけたアラタは、
ひとりで考え事なんて本当にもう人間と変わらない…
そう感じていました。
アラタと花子が話していると、そこに帰ってきた小島くん。
こんな遅い時間までいたらまた家の人に怒られる、と、
花子を家まで連れ帰ろうとします。
すると花子は帰るのを拒みました。
自分をただのお掃除ロボットとしてしか見てない、遊んでもくれない、
そんな何もしてくれない家族のところに帰りたくないというのです。
「元々花子さんはそういう役割だから…」
という小島くんの不用意な言葉に花子が気持ちを爆発させました。
自分が大量生産品だから、そう言いたいのですか?
大量生産品は笑ったりしちゃいけないのですか?
なだめようとしたアラタにまで怒りを向ける花子。
花子の初めての、人間への反抗でした。
大声に驚いてやってきた水谷さん。
年寄りに任せろと2人を下がらせ、花子の悩みに耳を傾けるのでした。
花子は…
自分だけが家族じゃない、
みんなと違ってここで作られたロボットじゃない、
そのことにとても不安を感じていたのでした。
みんなは家族で一緒に暮らしている。
でも自分は、朝起きて誰もいない家を掃除してから工場に遊びに来て、
夜にはまた、何もしてくれない家族の元に帰らなければいけない。
そんな疎外感や寂しさを、抱えていたのでした。
そう言う花子に水谷さんは答えました、みんな花子と同じなんだと。
本当はみんな、ここで作られたわけではなかったのでした。。。
水谷さんが語ったのは優作が来た時のことでした。
工場を立ち上げて間もない頃のある日、
突然アラタが一体のロボットを連れ帰ってきたのです。
壊れかけて捨てられていた、大量生産の運転手ロボット。
それを見捨てられなかったアラタは、連れ帰って直そうとしたのでした。
お感情博士を入れて、ここで一緒に暮らせないかと。
そんなアラタの気持ちを汲んだみんなは、
そのロボットが笑って暮らせるように、楽しい感情から入れて、
大量生産品とちゃんと見分けがつくように名前もデザインも変えて、
水谷さんの趣味で、昔の松田優作という俳優をモデルにして。。。
そうして今の優作が生まれたのでした。
それから師匠やシンディがやってきた。
ウララやアトムも、そして最近になってリーも、優作と同じように外から。
だから花子も同じなんだと、みんなと同じ家族なんだと、
2人も同じ気持ちだから、ちゃんと謝りなさい、、、
そう水谷さんは花子を諭すのでした。
素直に自分の不安をアラタたちに話して謝った花子。
温かくそれを聞き入れたアラタと小島くん。
こういうことがあって、花子はまた明るさを取り戻し、
楽しく暮らすのでした。。。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
新しい時代を作ったというのがどういうことか、
話を聞いていても分からなかったゆりなさんと雅紀さん。
そんな2人に、これからが本題とでも言うように説明するみんな。
今の時代と当時とで、人間とロボットの関係で異なること。
一緒に働いたり遊んだりしていたのは当時から変わらない、それでは?
それは・・・・・人間とロボットの「恋愛」でした。
今の時代では当たり前にある、人間とロボットの恋愛。
当時はまだなかったその恋愛を始めたのが、彼らだったのでした。
そうしてみんなは、この工場であった愛のお話を語り始めます。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
また明るさを取り戻し、楽しい日常を送り始めた花子。
そんな花子の様子にアラタはいつしか、少しずつ恋心を抱き始めます。
恋愛経験などほとんどなかったアラタ。
モテない職業No.1のこの仕事、研究をずっとしてきて、
そのため女っ気がほとんどなかったのは、水谷さんと一緒でした。
だから水谷さんに、自分好みのロボットを作って恋愛しろ、
なんてことも常々言われていたりしたのでした。
そんなアラタだったので、花子へのことはみんなすぐに気付きます。
美里さんから恋愛のことを教わっていて盛り上がったみんなは、
2人をくっつけてしまおうと画策します。
人間とロボットの恋愛を新規事業として立ち上げよう!
小島くんや水谷さんがそんな提案をしてみたり。
ロボットと人間で恋愛してみても良いじゃないと、
結婚経験のあるヒロコさんがアラタをからかうようにつついたり。
美里さんは花子に対して、
アラタにもっとフランクに接するようにけしかけてみたり、、
こうするとドキドキすると言って、手をぎゅっと握るようにけしかけてみたり。
当時はまだ恋愛感情が生まれていなかったロボットたち。
だから花子は何も分かっていないので無邪気なものでしたが、
アラタの方はなんだか意識してしまっていたようでした。
そうして過ごすうちに、徐々に思いが強まっていったアラタ。
工場で過ごす方が楽しい花子の、
「いっそここに住めたら、ここの掃除をする方が良いしみんなの役に立てる」
「今の家の人が困らないように替わりに別のお掃除ロボットを作ってください」
という言葉に、すっかりその気になるのでした。
そんな頃に、花子が美里さんに相談したことがありました、それは、、
「社長さんと話してると、胸の辺りがくーってなるの…」
それってもしかして…
しかもその気持ちは、優作にもまた生まれていたのでした!
ついに、ついにお感情博士から、愛情が生まれた!
それを喜んでさらに盛り上がるみんな。
花子は明らかに、アラタとの関係に、その気持ちを強めていたのでした。
そして優作が恋したその相手は・・・なんとリーでした。
しかも、リーも優作に対して同じ思いを・・・・・・。。
ロボット初めての愛情のもうひとつが、同性同士だったとは!!
思いが通じ合った優作とリーは、
周りから見て気持ち悪いくらい上手くいっていました。
ところが花子の方は、、、
花子以上の優秀なロボットをプレゼントすると言っても、
花子の家の人はダメの一点張りで、頑なに譲ろうとしません。
工場でみんなで一緒に暮らす望みは叶わなかったのでした。
でも思いだけはどんどん強まる花子とアラタ。
その叶わぬ思いの辛さに、花子が耐え切れなくなってしまいます。
こんなに辛い思いをするなら、この感情を消して欲しいと…。
花子の辛そうな姿に、他のロボット達も美里さんにお願いします。
せっかく生まれた愛情でしたが、
ついには消去してもらうことになってしまいました・・・
その頃、ひっそりと蠢いているものがありました…
ある夜、みんな寝静まった工場に入ってくる人影。
浅井さんと近藤さん、そして何故か同行している小島くん。
驚くことに、普段は秘書の近藤さんに対して居丈高な様子だった浅井さんが、
このときは平身低頭するような態度。
近藤さんも明らかに普段と違い、2人をアゴで使うような態度でした。
花子の愛情が消去された報告を小島くんから聞き、彼を叱責する近藤さん。
それならば、金庫に保管されている花子の感情データを盗み、
こっそりと花子に戻せば良い、そう言い出します。
ロボットの内部データをそっくり別の機体に乗せかえる技術、
浅井さんが開発したこの技術を利用して、
【自分が】工場のロボットの一人になりすまして盗み出す、
近藤さんはそんなことを言い出します。
近藤さんは・・・何とロボットだったのでした。
しかもさらに驚くことが近藤さんによって語られます。
それは花子が、人間とロボットの恋愛を生み出すために、
自分達がこの工場に送り込んだロボットだ、ということ…。
人間とロボットの自由な恋愛が可能になれば、
ロボットがどれだけ売れるようになるか…
そんなビジネスを、お感情博士の権利を、狙った策略だったのでした。
この計画は、ロボット産業に進出し始めていたトヨダによるでした。
近藤さんはトヨダのロボットであり、小島くんもトヨダの人間でした。
トヨダに多額の借金を抱えてしまった浅井さんを利用して、
彼の知人であり、お感情博士を開発したアラタに接近する。
さらに小島くんをスパイ役としてアラタの工場に潜入させる。
そうして彼らを使って花子を送り込み、
花子とアラタとの間に恋愛感情を生み出させる。
その感情と、お感情博士の権利が、トヨダの狙い。
アラタが花子に惹かれたことも、
彼の好みを良く理解している浅井さんの情報ゆえでもあったのでした。
こうして、秘かに計画は進行します。
電源を落とした夜のうちに近藤さんが安楽師匠になりすまし、
翌日、(紆余曲折はありつつも・・・・・)
まんまと花子の中に、愛情を戻すことに成功する3人でした。
再び愛情を持ってしまった花子。
みんなはそれが、消してもなお生まれた感情だと考え、
これはもう本物だと、花子の思いを喜びます。
そうして今度こそと、煮え切らないアラタの背中を押すのでした。
花子のアラタを思う言葉に、ようやく花子への思いに向き合ったアラタ。
こうして、初めての人間とロボットのカップルが、生まれました。
それからの2人は思いを深め合い、
それはもう人間同士の恋人と変わらないくらいでした。
思いが深まるにつれて、
2人はその先にあるものを意識するようになりました。
それは…結婚。
アラタと結婚したい、結婚して赤ちゃんが欲しい、
花子はそう思うようになりました。
愛し合った先に結婚があり、その先に赤ちゃんが…
花子も他のロボット達も、当然のようにそう考えていました。
みんなにそう言われて返事に困ってしまう美里さんたち。
もちろんロボットには赤ちゃんができないから。。。
ロボットには赤ちゃんができない。
その事実を知り、かえって欲しい思いが強くなってしまった花子。
その思いがまたさらなる感情を生み出させることになります。
余計に欲しくなるから行っちゃダメだと言われているのに、
病院に赤ちゃんを見に行ってしまったり、
ロボットに生まれた我が身を悲しんで美里さんに当たってしまったり、
どうして自分がこんな辛い思いをしなければならないのか…
だったらいっそまた愛情も、感情も、消して欲しい…
そんな風に思うことさえもありました。
ところがある日、そんな思いがまるで天に届いたかのようなことが。
血相を変えて工場に駆け込んできた花子がその腕に抱いていたのは、
まぎれもない、人間の赤ちゃんでした。
近くで捨てられていたところを見つけ、連れ帰ってきたのでした。
さすがにみんな最初は、警察に届けたり施設を探すこと考えます。
ですが、どうしてもその子を育てたい、自分で幸せにしたい、
そんな花子の強い思いや、
花子の顔を見ると嬉しそうに笑うその赤ちゃんの様子を見て、
ここで育てて行こうということになりました、
アラタと花子の赤ちゃんとして。
2人はその子に、人間とロボットの幸せな未来への願いを込めて、
「未来」という名前を付けます。
そう・・・未来先生は2人の子供だったのでした。
ロボットたちにわいわい囲まれながら未来を育てる2人。
花子はもうすっかり人間の母親と変わらないくらいでしたし、
アラタも最初はたどたどしかったものの、
どんどん父親として、子育てにも慣れて行きます。
未来との生活は、とてもとても、幸せに流れて行くのでした。
そうして3か月ほど経ったある日の早朝。
浅井さんと小島くんが慌てたようにやってきます。
その様子を見てみんなを奥に下がらせて話を聞くアラタ。
浅井さんが言うには、明日ここに警察がやってくる、と。
3か月前に近くの病院で、赤ちゃんが連れ去られる事件があり、
その子の特徴が未来にそっくりだというのです。
そして、未来のことを通報したのが近藤さんだと。
浅井さんと小島くんは、アラタに全てを語り謝罪しました。
借金のためにトヨダに協力せざるを得なかったこと。
近藤さんのこと、花子のこと、お感情博士の権利を狙っていること。
自分の技術で感情を盗み出したこと。
逃げ出すような状況だったけれども、謝罪したくてここに来たこと。
小島くんも、最初はスパイとして来たものの、
この工場での楽しかった日々のために、気持ちは変わっていました。
トヨダを辞め、アラタに謝罪するために、浅井さんとやってきたのでした。
2人の話を静かに聞いていたアラタは、花子を呼びます。
未来を人間の母親のように柔らかく優しくあやしながら来た花子に、
アラタはやはり静かに尋ねました。
未来は本当に捨てられていた?
まさか勝手に連れて来てしまったのでは?と。
最初は否定した花子。
しかし、明日警察が来ること、そしてもし花子が嘘をついていたら、
ここも、住んでいるみんなも、廃棄処分になってしまうことを告げると、
花子が答えたのは、
「この子は私たちの子供
私たちが育てるのが一番幸せなんです
目が合ったときにそう言ってたから連れてきちゃいました」
という言葉でした・・・・・・
頑張って幸せにするから何とか隠して育てましょう、
そう言う花子に、アラタは毅然と伝えました。
それが犯罪であること、他に立派に未来を育てたい人がいること、
そして、自分たちが未来を育てることは、できないということを。
未来を取られてしまう、自分が子供を育てることはできなくなってしまう。
花子はまるで子供を奪われる本当の母親のように、
未来を取られまいと必死になって守ろうとします。
この子は私の子、絶対に渡さないから、その悲痛な叫びに、
それまで花子の顔を見て笑っていた未来が泣き出します。
懸命に懇願する花子、でもアラタは、花子の電源を落とすのでした。
花子と未来の声を聞いて出てきた水谷さんたち技術者3人に、
アラタは本当のことを話します。
浅井さんと小島くんのこと、
花子の愛情が盗まれて戻されたものであること、
そして花子が起こしてしまったことも。
何もかもが悲しく、残念なことでした。
そしてロボットたちには、このことを秘密にしておいて欲しいと。
ロボットたちは花子にとって、初めてできた友達であり、家族だった。
そんなみんなには花子のことを嫌いになってほしくなかったのでした。
そして3人に、後のことを託します。
この場所と、家族であるロボットたちのことを。
感情を持つということがどういうことになるかの考えが足りなかった、
お感情博士を作ってしまった自分に全ての責任がある…
アラタは花子と未来と一緒に、警察に自首することを決めていました。
ロボットたちを呼び、アラタはこれからのことを話し出しました。
それは、ロボットたちのため、花子のために、事実を隠したお話でした。
自分がどうしてもやりたい研究がある。
浅井さんがその場所を用意してくれたから、しばらくの間ここを離れる。
花子と未来はもちろん連れて行くけれど、寂しがり屋の花子が、
みんなのことを思い出して寂しがったり悲しんだりしては、
自分は研究に集中できなくなってしまう。
だから…花子の記憶は、全部消去してから行こうと思う。
ロボットたちはみんなもちろん反対しました。
いっしょにいるって言ったじゃないか、
全部忘れてしまうなんて花子が可哀想だ、
口々にアラタに抗議します。
でもアラタは、もう決めたことだからと、必ず帰ってくるからと、
そう言って聞かせました。
そしてさらにアラタが告げたのは、みんながびっくりするようなものでした。
今日でこの工場を閉める、でも、明日から新しい事業を始める!
その事業とは、ここを病院にすること、ロボットの産婦人科に!
花子と自分は初めてのロボットと人間のカップルで、
結婚して子供まで持った。そんな奇跡を起こした。
アラタはそこに、新しい可能性を見出していました。
ロボットが感情を持つ時代、それはこれから広がっていく。
ロボットだって恋愛をして結婚すれば子供が欲しくなることもある。
そんなときにロボットだから産めない、ではなく、
赤ちゃんのロボットを作れたら…というのです。
親ロボットの性格を受け継いで赤ちゃんのロボットを作る。
そして成長に合わせて徐々に身体も替えて行く。
それには浅井さんの技術、中身の入れ替えを利用する。
それで借金返しなよ、そう言って…。
ロボットのデザインは水谷さんがやって、
美里さんがいろんな機能を作って、
ヒロコさんが性格を作って。
また、出産経験があるヒロコさんの知識を活かし、
母親ロボットの出産のときには、産む痛みをロボットにも感じさせる。
この経験がロボットを「母親」にして、
簡単に子供を捨てたりしないようになれるはず。
それから美里さんが身体の温もり機能を作ったら、
赤ちゃんのロボットには母親の温もりを感じさせられるかもしれない。
ここをそういう場所にできたら、新しい時代の発信地にできたら、
それがアラタの考えでした。
そして・・・
それを小島が営業するんだ、と。
世界を変えられるかは、小島の営業力に懸かっている、と。
みんなの持っている技術や経験を活かすことができて、
アラタをこんな状況に追い込んだ2人さえも取り込んで、
それは…アラタの優しさにあふれた提案でした。。。
そして、これらはみんな花子が教えてくれたことだと、花子を讃えるのでした。
ロボットたちは大いに盛り上がりました。
花子えらい!
赤ん坊をみんな笑わせてやる、子守唄歌ってあげる、
甘い言葉をささやいてやる、片っ端から真っ黒にぬっちゃおう、
みんな期待でいっぱいでした。
そして5人の人たちは…アラタの想いに、涙していました。
そして・・・お別れの時。
花子を初期化する…そう言って操作パネルを手にしたアラタは、
みんな1人1人の名前を呼んで、お礼を言うのでした。
そして花子に「さようなら…」と。
操作しようとする手が微かに震え、ためらうように止まります。
でも意を決したように、花子を初期化するのでした。
「・・・・・」
「・・・おはようございます、掃除を開始します」
再び動き出した花子は、ここに来た時のように、
感情がまったく入っていないただのお掃除ロボットになっていました…
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
花子と未来を連れて自首したアラタ。
犯罪を犯したロボットの感情の製作者として罪は免れず、
刑務所に入ることになりました。
しかもお感情博士の権利を狙うロボット業界の人間から、
あることないことでっちあげられたために、
結局40年経った今でもまだ、服役中だったのでした。
でもアラタが守ってくれたからこそ、
この場所がロボットの産婦人科として続いていくことができた。
そして未来先生は、実はそのときの赤ちゃんではなくて、
水谷さんたちが作った世界初の赤ちゃんロボット、
というわけだったのでした。
事件の後、水谷さんは奥さんロボットを作り、
娘のゆりなさんを持つことになりました。
そう、ゆりなさんもまたロボットであり、人間の雅紀さんと結ばれた、
今では当たり前にある、人間とロボットの夫婦でした。
ゆりなさんは水谷さんに、
いつか好きな人ができて、結婚して子供が欲しくなったら、
かつて自分が勤めたこの場所に行くように言われていました。
新しい時代を作った自分たちの話を聞くようにって。
ゆりなさんが今日ここに来たのはそのためでした。
そのお話がどんなものなのかということや、
赤ちゃんを持つということを考えて、
そのためにとても緊張していたのでした。
みんなとたくさんお話して、
お父さんがどれだけ立派なことをしたのか分かったゆりなさん。
そんな父を持つことができたこと、そして最愛の人ができたこと、
そのことに感謝しながら、いよいよ出産することになりました。
するとそのときミッシェルが…
「ようやく戻って来たぞ!」
と。
連絡が遅い!とミッシェルに文句を言いながら駆け込んできたのは、
それはまぎれもなく花子でした。
笑って花子を出迎えたロボットたちは、
驚き目を見張るゆりなさんと雅紀さんに説明します。
花子は自分たちがもう一度作ったんだと。
事件の後に当然のように廃棄された花子。
でも、3人がデザインと掃除機能と性格をもう一度作り、
小島くんがこっそり抜いていた感情データを埋め込んで、
そうして花子はまた、復活していたのでした。
自分たちはここで、アラタが帰ってくるのをずっと待っている、
花子というプレゼントを用意して!
そう誇らしげに語るロボットたちでした。
自分をまた作ってくれた水谷さん。
その娘さんが赤ちゃんを産むために、今日ここに来る。
お礼を言うために、その場に立ち会うために、慌てて戻ってきた花子。
何とかその瞬間に間に合うことができました。
いよいよ出産へ。
産婦人科医としての未来先生が、
ゆりなさんに母親としての責任を語りながら、陣痛を起こさせます。
ピークに達したところで、今や出産の手伝いをしているロボットたちが、
ゆりなさんを分娩室へ連れて行きました。
残った未来先生と、花子とシンディ。
ゆりなさんが今日来たことで久しぶりに話したあの頃のこと。
当時を懐かしみつつ改めて感じるのは、
早く未来をアラタに会わせてみたいという思い。
そんなことを花子とシンディが楽しそうに話していると突然、
「花子・・・」
ミッシェルの声が。
何だろう?とミッシェルがいる入り口の方を振り向く3人。
すると
「たった今、アラタが・・・・・」
「・・・・・・・刑務所で、息を引き取ったと」
「・・・・・・・・・・」
「そっか…」
長い沈黙からようやく、何かを納得したように呟く未来先生。
事件から40年。
父の帰りを待っていた母子は、ついに会うことが叶わないまま、
永遠の別れを迎えてしまったのでした。
「未来、あなたがこの場所を守りなさい
あなたのお父様が作ったこの場所を、ずっと守るのよ」
今や立派な母親の風格さえ感じさせるようになった花子は、
自分の息子にそう告げるのでした。
あの工場で一緒に働いていた人たちは、みんな亡くなってしまった。
かつてアラタがロボットたちに言っていたことがありました。
ロボットよりも人間たちの方が先に死んでしまう。
そうなったときに辛いのはお前たちだ。
人が死ぬ悲しみを感じるようになる…と。
シンディは…自分の目から何かが流れているのを感じました。
それは、涙でした。
「これが、人を亡くす悲しみなのかな…」
アラタや美里さんに教わって、でもあの頃は知らなかったもの、
それを今アラタを失って初めて、感じていました。
大きな声で、シンディは泣き出していました。。。
その後ろから、別の泣き声が重なります。
それはゆりなさんの赤ちゃんが、産まれたことの証。
その泣き声が少しずつ大きくなって、大きくなって、
気が付くとその声は泣きじゃくるシンディの、花子と未来先生の、
真後ろにまで来ていました。
3人が振り向くと・・・・・・
赤ちゃんを抱いてそこに立っていたのは、
アラタでした…40年前のあの時の姿で。
何も語らず、赤ちゃんを未来先生に抱かせるアラタ。
そして未来先生を、花子を見て、去って行くのでした。
アラタが去った病院では
赤ちゃんの泣き声と、シンディの泣き声が、
ずっと響いていました。。。
☆ End ☆
とみせかけて…
このお話には、エピローグがありました。
それはカーテンコールでキャストの皆さんが挨拶した後のこと。
お辞儀する皆さんの背後、工場の奥(分娩室)から赤ちゃんの泣き声が。
ハッとするみんな。
ゆりなの赤ん坊置いてきちまった~~!といって、
師匠たちが慌てて走って行ってしまいます。
あ~あ何やってるの、とばかりにそれを見送りつつ、
他の連中は仕事しろと、3人の技術者さんはそれぞれ、
手伝いのロボットを伴って出て行きます。
それは40年前のあの時と変わらないような光景でした。
そして残ったのは、アラタと花子でした。
「あいつら一緒だから、大丈夫」
『はい』
「そろそろ行かないと」
『また・・・会えますか』
「また来る」
『待ってます、ずっと・・・・』
短いけれど、想いの込められたやり取り。
そしてアラタは、再び去って行きました。
それを見届けた花子の目には涙がありました…
すると奥の分娩室の方から花子を呼ぶみんなの声が。
なにやってんだ~!!と、花子がなかなかこないので、
みんなが大騒ぎしています。
今行く~!
花子は涙をぬぐって、みんなの方へ走って行くのでした。。。
☆ END ☆
というわけで、これで本当に終わりです!!
どうですか、尋常じゃなく長かったでしょう!!
書いてる自分でさえ長いと思えた物量、
こんなのこれまでで初めての経験ですよ(^^;
正直、公演時にメモったやつをほぼそのまま乗っけても、
この量の半分以下で、しかも結構ちゃんとしたあらすじに、
なったような気もしています(^^;
ちょっと、この公演への想いが強すぎたせいかなあ←自分を美化しすぎw
次は作品の感想編ですが、
さて、こちらはどういう長さになるのやら(^^;;;
これからかくのでわかりません!!(笑)