「ハラミ」振り返り(感想編) | 未来に向かって ~旅立ちの朝~

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応援している大切な人たちのことを中心に、日常をつづっていきます

チームまん○(まんまる)

「ハラミ」


まん○さんの旗揚げ公演であり、

2011年に再演もしていた作品の、長編化という今回。

初めてまん○さんを観たときに初演のDVDを買って、

旗揚げでこのクオリティなのか!とその面白さに驚いたのですが、

今回は間違いなく!さらなるパワーアップを遂げた作品でした。


長編化の話をタローさんから聞いたときには、一瞬、

短編(ってほど短くもないけれど)のキレの良さみたいなのが

失われちゃったりしないのかな?

なんて思ったりもしたものですが、

タローさんに全力で謝らないとですね(^^;

いやもう、さすがすぎました!



このハラミという作品は、肉の話じゃもちろんありません。

下ネタ劇団ですからねw

ひらがな表記にするか漢字表記にするか、案はあったようですが、

漢字にしたらもう捻りもへったくれもありません…「孕み」w


人間の精子についてたくさん勉強できる話。

精子が女性の体内で卵子に出会うまでの、

長く、厳しい、旅路の様子が描かれます。


まん○さんで自分が大好きな形態…

白衣の先生が講義のように語るその合間合間で、

小さな世界の話や大きな世界の話が入れ代わり立ち代わりする。


春の公演の時のブログで書いたまん○作品の特長。

そこで挙げた中では下のあたりが特に良く当てはまるかな?

・ミクロなゾーンの話だけどすごくマクロな視点

・人のあり方を考えさせられる

・感動

それとマジメに精子の働きについて勉強になる!


お話の本筋は前回までと変わりません。

でも、長編化で話の要素がふくらんだことによって、

人間を応援する力…それがものすごくふくらみました。


「生命の起源」を学ぶことを通して「人生の起源」を実感し、

誰もが生きる中で一度は向かい合いそうな悩みに対して、

そっと背中を押してくれるような、いわば人生の処方箋…



元々名作だったのをさらに進化させたというのか…そんな驚きと感動。

新たな追加要素などはない、新しい戦力はいらない。

現有戦力に少しの手を加えたことで元の魅力が実に効果的に広がり、

人の心を動かす力が見事に広がったと思うのですね。


あるものに手を加えるのはすごく大変なことだと思うのですが、

新たな要素が加わって元の魅力が薄まるなんてことも良くありますが、

こんなにも自分にとって嬉しい話のふくらませかた、

なっかなか目にしたことはありませんでしたよ。




あらためて、お話をそっと。


テレビ番組調に白衣の先生の講義が進み、

精子の役割が語られます。


精子界では…

人間サイズで考えたら地球から月までに匹敵する距離を、

しかも侵入者を撃退する様々な仕掛けがある道のりを、

命を賭けた激しい戦いを繰り広げながら進むところが描かれます。


受精以外の何にもできない非力なボンボン、

エッグゲッター。

道を拓いたり他の精子を食い止めたりする、

ブロッカー精子。

唯一他の精子を殺せる針を持つが一度使うと自分も死ぬ、

キラー精子。

そんな彼らがチームを組んでこの長距離バトルに挑みます。

多数のブロッカーやキラーが、ひとりのエッグゲッターを守りながら、

他の精子たちとの戦いを繰り広げる…


情けないボンボンだけどみんなが守る精子一郎。

ライバルとして争うのは、ブラック精子とその一味!

その強大な力に必死で立ち向かう戦いの中で、

次郎や三郎たちは命を落として行く。

命を賭して一郎を守り、先に行かせようとする彼らの姿は、

もはや涙なしではいられない。



一方人間界では…

ひきこもりや、仕事などで上手く行かないといった人たちが、

ダメな自分の姿を嘆いたり、できる人間への妬ましさを表したり。

他人の姿が見えないネット世界でだけはイキイキ会話できたり、

また、よせばいいのにネットに悩みを書き込んでしまったが故に、

ネットに良くある匿名ゆえの悪意にさらされてみたり…


そんな彼らの劣等感の矛先は?

自分を生んだのは親…何がいけない?生み方がいけない?

元は精子、精子が持つ遺伝子…

いわばダメな遺伝子によって生まれてしまったのが自分では?


テレビで講演する先生のアシスタントくんもそうでした。

できる先生に対してできない自分への劣等感。

ネットの中で暗躍しては、同じような境遇の人たちに、

半ば煽りにも似た話を説いてみたり。



そんな彼の行動や思いに気付いた先生が彼に向けた言葉は、

「一生懸命生きろ!!!」


精子たちはとてつもなく苦しい戦いに挑んでいる。

一回当たり一億を超える精子たちのうち、

受精できるのはほんの一握りどころか一匹だけ。

受精できない場合もある。

さらに相手の数、卵子の数、様々な要素によって、

受精の確率は、兆どころか京や垓という極小のものへ。

そんな極めて小さな確率でしかない、精子と卵子の出会い。

そして極めて険しく長い戦いの先にあるその出会い。

そんな道を、劣性遺伝子が乗り越えられるわけがない、

この世に生を受けていること自体が、選び抜かれた存在である証。



…この言葉が届いたのか


ネットの中だけでは饒舌な青年は…

自分が配信している放送の中で突然行動を変えた。

部屋に引きこもり背を向け続けてきた母親に対して、

作り続けてくれていた食事を食べ、その感謝を伝えようとする。

突然の事態に、聞いていた同じ境遇の皆が、懸命に応援を始めた。

その配信の様子を、母親は部屋の外で聞いていた、涙を浮かべて。


そして精子一郎は皆と共に卵管を進むうちに、

ついにキャパシテーション…受精能力を獲得する!

追い縋ろうとするブラック精子だったが、

精子次郎とおんなじ顔の十二郎(精子は兄弟いっぱいだからね)の

一撃で命を落とす。

そして自らも命の終わりを迎えた十二郎の想いを胸に、

一郎は、ついに出会った卵子へと、飛び込んで行くのだった。。。



とまあお話はこんな感じです。





で、感想に行くのですが…


まあやっぱりとにかくおもしろいし笑えるのですけどもね。

下ネタだからの部分の楽しさもありつつ、

普通に、すごく、出来が良いというと上から目線だけど、

シンプルに言って「巧い」んだと思うわけです作り手さんが。

で、その面白い要素が、今回まったく失われていない!!

それがもうステキ!

なだけでなく!!見事にふくらんでもいる!!!


キャスト数が増えたことによって

(っていうかこのキャラ数にもかかわらず、

 前は5人しかキャストがいないとかその方が凄いわ!!!)

精子バトルはそれはもう凄いんですけども、

全員でのよーいどんのダッシュ!そして障害物競走のような動き、

さらには、白い横断幕的なもので皆が一気に巻かれてしまう…

えーつまりその日の競走は、

(スターターの号令は「よーいどぴゅーん」w)

ティッシュに対してのものだったというねwww


精子の白のやつらと黒のやつらが実はやはり兄弟で、

兄弟が多いのは、出どころが右か左かどっちからしかないからとかw

精子次郎と、ブラックのとこの、八郎だっけ?

かつての関係を思い出して兄弟?親戚?親友?同士で、

旧交を温めてしまうところもあります。

でもやはりブラック精子に忠誠を誓ったから戦わなければならない。

こんなところはなんかもうとても良いシーンだったりするのに、

それでもどこか笑えてしかたなかったり!!

ちなみにこのシーンは短編の頃よりも、

かつてを振り返って仲良さを感じさせる時間が長くなっていた!


またブラック軍団内部のギスギス感もイイ!

戦隊ものとかにありそうな、悪の組織の内紛的なのねw


あと嬉しかったのは、血縁多すぎる話での、

10000の子が女の子で出てくるやつw

7777郎とかいろいろな名前で出てくるんだけど、

10000は女の子だから「ほにゃらら子」になるからって、

名乗ろうとすると周りのみんなが一斉に止めようとするの!w

それは言っちゃダメだろ、お前は名乗るなってw

あれ大好きで、あれがしっかりあって良かったうえに、さらに、

ブラック軍団がひとりその場にいて、彼まで一緒に止めるというねww

もうたまらない話のふくらみ方!!


そんなブラックの彼が、最終的にはやはり兄弟だし、

ブラック精子を止めようとする側に回るのも胸熱でした><



そして、その流れで感動の胸熱方面の話へ!

何よりも、人間側キャラが増えたことによって、

この、人生の処方箋、人の背中をそっと押す応援物語、

というところがとても強まったと思っています!!


あらすじに書いた青年…よっくんですね、

彼のくだりは本当に感動なのですが、

まさに人間側キャストが増えたことが大きく影響したのかな。

ネットに繋げている形態だったり、それを聞いてる人が増えてたり。


お母さんに感謝を、そう言って突然もりもりおにぎりを食べ始める。

皆がそれを応援する!!

あの懸命におにぎりを食べる姿が胸アツくさせるのは、

リアルおにぎりだからなのかな?

そして飲んでいたのはちゃんと味のある吸い物だったのかな?

でもとにかくすごくいい食べっぷりで…

その様子を扉の外で聞いているお母さんの姿と合わせて、

本当に目頭が熱くなります。


でね、お皿を戻そうと扉開けたらばったりで、

びっくりしてチキン発動で引っ込んじゃうのがまた可愛く、

でもみんなの声援が届いたのか勇気を出して!!

扉を再び開けて、母の背中に声を届ける…いいシーンすぎる><


本当にね、元々あるお話を巧みにふくらませるのみで、

新しいものを追加したというわけでは決してない。

それによってこの大きな感動が生まれたのかなって思います。




そしてなによりも、


「一生懸命生きろ!!!!」


懸命に生きることなどとうに諦めた?そんな声など届かないのでは…

そう思えてしまいそうな相手なのに何のためらいもなく、

ただひたすらまっすぐな想いを真正面からぶつけたこの言葉!

それを否定している人間の心にさえまっすぐ入ってしまいそうなほど。

これだけの声の力で聴かせられたこの言葉は、

観客の心に本当にまっすぐ突き刺さったのではないかと思います。




このアツい作品を作る人がいて、

それをアツくアツく演じきってしまうキャストさんたちがいて、

皆さんが客席にぶつけてくださったこの公演は、

本当に素晴らしかったです!




次のブログからは

そんな素敵な公演を数々の写真で振り返りますw