パズルパレス | Happy-Gate

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半径5mのライフログです。

 「ダヴィンチコード」でブレイクしたダン・ブラウンの処女作。
 原題は「デジタルフォートレス」。98年出版と言うことで、明らかに昨今のブームに乗った訳本の出版と言うことですね。

 さすがに書かれたのが10年くらい前なので、書かれている技術的な部分は古くなっているよね。
 多少翻訳の際に、手直ししているそうだけど、それでもちょっと古く感じてしまうね。それだけ現実の世界のデジタル技術が、光の速さで進歩しているって事なのかな?
 
 それであっても、この情報量の薄っぺらさは何なんだ?この手のクライシスミステリーは、情報が本当の意味で主役のはずなんだけど、いくら何でも少なすぎるでしょう。リサーチ不足だよ。
 NSAという国家情報機関の話は、「エネミーオブアメリカ」や「スニーカーズ」という映画があったけど、それらはどちらかというと、主人公たちに立ち塞がる強大な壁として描かれていた。この「パズルパレス」は、そのNSAの諜報員ではなく、暗号解読課を舞台にしているところが、面白そうだったんだけど。実際は、それら映画と同じような暗号技術を巡る巻き込まれ型アクションサスペンスでした。
 この作品が書かれていた当時、日米関係ってそんなに悪かったのかな?って、思うんだけど、この作品でNSAの敵というか目標となるのは、一人の日本人だ。その日本人のハッカーがものすごい暗号プログラムを作ってしまい、その暗号をNSAが横取りしようと画策するところから始まる。
 この手の作品は、その後のクライシスの規模が大きいほど、細かい部分は真実っぽく書く必要があると思うのだが、その日本人からして、とても日本人とは思えない名前なのだ。読み始め中東の人間だと思っていたら、広島だのの描写があり、どうやら日本人なんだと分かるまで、少し時間がかかってしまった。執筆期間がいつだか知らないけれど、有名な日本人は結構いるし、メジャーリーグにも日本人が活躍していたよね?スズキやホンダ、トヨタでもいいじゃない?もうちょっと勉強しろよな。
 人間描写も薄っぺら。まぁアメリカでのこの小説の位置づけが分からないので、もしかしたら、少年少女が読むようなライトノベルという分野なのかな?
 冷静な上司、美人で優秀な女解読員、その恋人の語学の教授、解読課の同僚で、一癖ある男。それぞれのキャラクターが本当にステレオタイプで、読者を裏切ることもない。
 また主人公の彼氏を狙う殺し屋というのも、本当にプロなのかと思うほど、おかしな行動を取るし、元海兵隊員の男が、銃がないと何もできないような描き方をされているのも変だ。彼らはまず徒手空拳で、人を殺す術を体得させられる。ドキュメンタリーでやっていたが、何度も何度も反復し、何も考えなくても簡単に殺せるように、急所への攻撃の仕方を繰り返し、体に覚えさせられる。彼らは、銃が無くても戦えるのだ。
 ましてやその相手が、戦闘のプロということでもないのであれば、ビビルと言うことないのに。

 そして、何より諜報機関職員とは思えない、それぞれの態度だ。田舎の警察ならともかく、情報戦争の最前線にいる機関の職員がとる態度とは思えない。セクショナリズムなんかの弊害とでも言いたいのかも知れないが、この組織の描き方もステレオタイプ。
 本当の悪事が発覚した後の展開もステレオタイプ。大どんでん返しを期待して、読み進めたが、結局それもなく。なんの教訓めいた台詞もなく、時間の無駄でした。
 しかも上下巻なのに、文字数も少ないので、直ぐに読めてしまった。角川の戦略の勝利だな。
 もう二度とこいつの作品は読まない。
 
 もっと暗号について、書かれていると思ったんだけど、エニグマとかね、昨今の数学ミステリーチックなのを期待していたので、裏切られて残念だった。
 ラストの10分くらいで解けちゃう暗号っていうのも、ハラハラドキドキとはさせなかったしね。