ひかりごけ
「ひかりごけ」という戯曲があります。
武田泰淳作のものです。
これは難破した船中で、次々と船員たちの死肉を喰らいながら、たった一人だけ生還した船長の話。
ちなみにこれは、1944年(昭和19年)5月、北海道目梨郡羅臼町で発覚した死体損壊事件をもとにしたものです。
様々な道徳的苦悶と生命の危機を乗り越えて救出された船長だが、彼は食人行為の一件で法廷呼び出しを受ける。
船長はその場で、自分は死刑にすら服する覚悟があること、自分は地上の人間が作った法律で裁定はされようが、しかし何人も自分を人間として裁くことは不可能なこと、ただ一人、自分に究極的な刑を宣告できうる資格を持つ者がいるとすれば、それは自分同様に人肉を嗜んだものか、でなければ人肉として食べられてしまったものであろうということを、静かに語るという内容。
この作品が結末部で掲げているこの問いは、あまりにも深すぎて頭がくらくらしそうです。
いったい人は、いかなる道徳的責任において、食人行為を攻撃し、食人体験者を法的な犯罪者として処罰したり、精神病患者として人格的に排除監禁したりすることができるのか。
人間の法律はすべての人間の行為を、あらゆる次元に置き、統括し、秩序づけることが、はたして可能なのだろうか?
あまりにも哲学フルな問題なので、考えるのがしんどいですね(笑)。
佐川君なんかは、そこまで考えずに本能の命ずるまんまに、ルネを殺して喰っちまっただけなんでしょうから。
https://www.roland.com/jp/lp/catalog_museum/pdf/NAM-2037.pdf

