フリーランスのライターになって久しいが、最近ようやくギャラの交渉を照れずにできるようになった。明らかに割に合わないと感じた仕事は請けないし、最低でもこれだけ出さないとやらない、とはっきり言う。


こういうやり方は、クライアントにとってはありがたくないかもしれない。僕もそういう風に仕事を断ったり、値段を吊り上げたりするのは決していい気分ではない。


しかし、適性な収入を前提としたほうが確実に仕事の質は上がるのだから、結果的には僕にとってもクライアントにとってもこれは正しいことなのだ。もしもこの態度のために僕が仕事を失ったとしたら、そのときは僕の力がその程度しかなかったというだけのことだ。それがプロということだ。


僕が断ったことで、困るクライアントも中にはいるかもしれない。しかし、ライターなんてこの世には腐るほどいるわけで、安い仕事は、質の低い仕事をするライターに頼めばいいのだ。そうやって、世の中の適正価格というものは保たれていく。

自己主張をきちんとしたほうが、多くの場合仕事は早く終わる。


昔は逆だと思っていた。指示や依頼に逆らったり意見をさしはさんだりすると、相手と衝突する時間のぶんだけ時間がかかる、だから言われたまま粛々と仕事をこなしたほうがいいのだと。確かにこの方法は無難である。ただし、それは指示をした人が明確な意志を持って仕事をしている場合に限る。


世の中には、適当な指示や依頼をする上司やクライアントというものが存在する。彼らは驚くほどあっさりと自分の出したAという指示を覆し、「やっぱりBでお願い」などと言い出す。言われるがままBを提出すると、今度は「やっぱりCがいい」。あとは泥沼である。


こうなる可能性が少しでもあるなら、先にこちらが主導して最善の選択肢を提示し、そこに導くよう働きかけたほうが、結果的に時間も節約できるし、できあがる仕事も良いものになる。最初に多少の摩擦は生じるかもしれないが、それぐらいしておいたほうが、相手もこちらに一目を置いてくれるようになるものだ。

Shall we ダンス? [DVD]/KADOKAWA / 角川書店

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たいていの良い映画は、なるべく若いうちに観た方がいいと考えているが、ときどき例外がある。この映画がそれだ。妻子持ちの平凡なサラリーマンが、美人の先生を目的に社交ダンス教室に通い始め、やがて本気でダンスに熱中していく過程を、ユーモラスに、感動的に描いた作品。主演の役所広司の演技はさすがに安定しているが、特筆すべきはダンス教師役の草刈民代のギクシャクした演技。科白なんかほとんど棒読みだし、表情も乏しいのだけれど、それがかえってダンス一筋に生きてきたプライドの高い女をよく表現していたように思う。それに何しろスタイルと所作の美しさはさすがに天下一品。それだけでも観る価値のある映画……というふうに感じるのも、やっぱり僕が中年になりつつあるからなんだろうなあ。