TRIANGLE -82ページ目
貴方を見送る
送り火代わりに
此れを一つどうぞ、
きっと僕の事を
忘れてしまうだろうから
言いたくない事も
伝え損ねた事も
全部仕舞い込んでしまって、
見たくなかったモノも
見えてしまったモノも
ひっくるめて
貴方の為を嘘を吐いた
その度に貴方の熱を失って
僕の言葉は本当を殺した
秘密だらけの僕と
真直ぐな貴方は
ちぐはぐで釣り合わないのに
貴方は僕の手を取って笑うから
煤けた頬を撫ぜて
纏わりついた闇を拭う様に
僕は意味もなく
この生に縋ってしまうんだ
嫌いたくないモノが増えるたび
怖くなって一つ手離して
その癖貴方の手だけは
どうしても離せずに
僕の代わりに
此れを一つどうぞ、
きっと
貴方を愛してくれる
いっそ死にたくて
呼吸を止める様に
首を絞めて
力を込めた掌
間違いだらけの言葉と
このまま立ち止る僕と
見開いた目蓋の先で
理性的な言葉と
感情的な行動で
矛盾だらけの僕を殺して
必要ならばこの身体さえ
全部殺めてしまって
それでいいんだ
僕はそれを望んでる
死にたくて
死にたくて
君の背を追いかけてる
それだけが本当で在る様に
僕は僕を殺していく
続かない呼吸の隙間
縫う様に歩き出して
踏み潰した答えを
芽吹く前に摘み取って
全部教えてくれよ
食い違ったままの歯車に
巻き込まれては軋んで
笑えないその表情の奥
零したままの涙が
そのまま其処に残って
傷痕を抉っていく
痛いのも辛いのも苦しいのも
僕の為だなんて嘘吐いて
そんなの要らないよ
そんな偽善なら僕を殺せよ
死んでしまいと思うたび
僕は僕を殺して
また丁寧に弔う前に
きっと愛を懺悔代わりに吐き出す
そんな黄昏の嘘を
折り曲げ燃やして
もう、いいよ。
僕が死んだなら
きっと誰もが幸せで
僕が幸せになるように
必要になるよう
手を伸ばして
掌をあてた
その頬に
触れた、
温かくて
涙が
涙が出そうで
また僕は
殺していく
僕は
一人で。
耐えがたい程の
痛みを堪える度
貴方が見失った
世界の全てを
僕は掴んだ気がした
少しずつ近付いて
また離れて、
千切れたままの糸が
解れて落ちていった
笑えよ、
そう言いたかったのに
壊れていく
小さな傷口から
滲みだした
思いも感情も
きっと伝わらない
正義なんて
語らなくていいよ
ただ貴方がいれば
僕にはそれで良かった
歩き出すには
まだ僕には
勇気がなくて
笑えない事も
泣けない事も
許してほしい訳じゃないんだ
また少しずつ痛みだして
胸を押さえては泣いて
この涙の本当の意味を
貴方が知る事があれば
きっと僕は静かに
目蓋を閉ざして
笑えないね、って
笑ってしまうんだ
遠ざかる。
声も、姿も
形を失って
貴方を消していく
世界の事を
僕は忘れないから
この糸を辿って
会いにいくよ。
きっと。
茜の街を背負って
群青の空を駆ける
イチは笑う。
僕も笑う。
それはこれになるよ、
きっとそうであってほしくて
少しだけはねた髪の
その隙間から覗いた
世界はあまりに眩しかった
軋んだ心も
歪んだ感情も
置いてけぼりの街と
少し埃被った思い出と
傘の柄に手を添えた
イチが笑うから、
僕はどうでもよくなって
小さく笑ってしまうんだ
灰色の曇天と
蒼穹の青空と
重ねたフィルタみたいな
作り物染みた街角
チカチカと色が飛んだ
間違いだらけの街灯に
君が足を揃えて
其処に立ち竦んでるから
また、何も言えなくなるんだ
瞬いた目蓋の
少し痛みを伴う睫毛の色
時間が殺されていく
その瞬間に、
僕が生まれていくから
止まない雨の中
握った柄の温度と
笑わない君が失う温度と
比べて並べて、
また少し痛みを携えて
これっきりの事なんだと
イチが泣いてしまって。
僕が残したかったのは
小さな痛みと
イチの笑顔と
忘れてしまった
閉じた時間の話
「少年は閉ざした時間を語る。」
きっと泣いてしまって
緩やかに解けた
糸の音も笑い始めて
君を置いていく
僕の時間は
小さく刻み始めて
これが最初になるんだ、
泣き始めた街の涙も
拭う事も出来ずに
一人ぼっちの僕と
背中を向けたままの君と
向き合うには幼く
小さな二人じゃ
抱え込んだ全ての声を
渇いた大地も
その手を取って
壊れていく
針の音の中で
もう一度触れてほしくて
やっぱり涙が出たけど
止まない雨の
穏やかな声に
許された様な気がした
鉛の空に
浮かんでいく
一つの風船
届かなくて
遠くになる
だけど君が
明日を迎えて
触れて、
あと少しだけ
動かないでいて
解れたその声で
罅割れた世界を包んで
もういいよ、
二人ぼっちで
世界を抱きしめようか
それでいいんだって
また笑ってよ。
それが全てあるように。
それが君であるように。

