それは美しく在れと

 

それは等しく在れと

 

願うことを厭うなと

 

祈ることしか出来ない私を

 

赦す貴方の言葉を待っていた

 

それはずっと

 

それはきっと

 

貴方を望む私の声を

 

貴方が聞いてくれたから

 

そうで在れと

 

そうで在ってくれと

 

願う張り裂けた声を

 

ただ一つの標にしながら

 

大丈夫

 

一つ呟いて立ち止まった道の真ん中で

貴方は笑って手を振っている

繰り返し呟いた言葉は

いくつも足元に転がっては

積み重なっていく

 

大丈夫

 

そう言ってくれた貴方は

振り返らないで走っていく

いつだって先を行くその背中は

遠く遠く遠ざかって

戻れないことも分かっていて

 

大丈夫

 

力強く踏み出した足と

大きく吸い込んだ呼吸と

迷いを断ち切った瞳と

その全てを抱えて

貴方は歩むことを選んだ

 

大丈夫

 

なら今度は僕は届けよう

貴方に祈りと祝福と

貴方がくれた言葉を捧げよう

 

お門違いの寂しさを抱えて

転げ落ちる世界を眺める

貴方が忘れた事も全て

私が覚えていれば

世界から切り捨てられても

生きていくことが出来るから

 

それでもと願う事も

それではと祈る事も

そしてと手折る事も

 

それは私が決める事ではなくて

貴方が伸ばした腕の先で

それを望む人の為に

許された手段である事を

誰よりも何よりも私が赦そう

 

貴方が抱えた物も

私が抱えた物も

貴方が携えた声も

私が置いていった声も

 

その温度も

その応えも

呼吸を一つ含んで

そう在るべきと

そう、在るべきと

 

願う、祈る。そして赦そう。

 

それでいいのだと

誰よりも、何よりも

私が愛そう

 

漏れ出した物を思い出した

それが良い事なのか

悪い事なのか

未だに分からないまま

向き合う術も忘れたまま

僕は呆けたままに眺めていたのだ

 

言える事なんてないだろう?

それが全てだったんだ

全てで、正しくて、僕で

消えてしまいたい程の

正しく僕であった物だ

漏れ出したままの物が

僕の喉を通り過ぎて

臓腑に落ちていったとしても

僕には何も伝えられないまま

 

吐き出す言葉も

千切れた言葉も

散らばるそれも

切り裂かれたこれも

僕から溢れた物たちで

心なんて大層な名前をつけられた

正しくはない正しさの証明だ

 

だから僕は向き合おうと背を向けたまま

自分の汚いところを見ないで

好き勝手な言葉ばかりを零すんだ

 

不安を押し殺した

心を遠くへ押しやった

正しさを身に着けよと

僕の心が叫んだ

 

正しさが凶器になると

貴方が差し出すその言葉が

血に塗れて見えた

正しく『そう』であろうと

怒りにも似た形相で

その言葉を差し出す

 

追い付けない僕の心と

吐き出す声を刺し殺す

 

『そう』であれ

『そう』であれと

正しさにかまけた偽善で

僕の全てを押し潰す

 

不安が追いかけて

僕の足を掬う

僕を追いかける凶器は

誰にも裁かれないのに

僕の心は死ぬことに慣れてしまった