スピーカーの周波数応答特性の評価に群遅延特性評価を追加 | グラ山ギターのブログ

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YAMAHA NS-100の周波数応答特性のゲイン特性位相特性に新しく追加した群遅延特性

以前にインパクトサウンド補正用の周波数応答特性測定の無料プログラムの配布を開始しています。今回はバージョンアップを図り、群遅延特性もグラフ表示するようにアップデートしました。
 

ここでは、ゲイン特性と位相特性が評価できるように作成しました。色々なオーディオシステムを測定するうちに、最近ではDSPでデジタル処理したシステムがあり、それを測定すると異常な位相特性になっていることが判りました。
インパクトサウンドの補正では比較的短い時間での補正行っていましたが、DSPを使って広い範囲の時間領域で補正したので、これを原音再生に近づけるインパクトサウンド補正をするには適していませんでした。

 

大きな原理として元の波形をシステムを介してできるだけ忠実に復元するには、群遅延特性を必要な周波数帯域で揃えるということです。これは、CDやBlu-rayのピットの読みとり回路や通信システムでも同様で、群遅延特性を揃えていないと、再生波形が崩れて、ジッターの増加ひいては誤り訂正能力を低下させます。
 

そこで、現在使用しているオーディオシステムの群遅延特性が評価できるように、測定プログラムのバージョンアップをしました。

群遅延特性とは何でしょうか?オーディオシステムでは20Hz~20kHzまでの周波数を音として再現できればいいとなっています。家庭でよく使われる中型や小型スピーカーでは、50Hz~20kHz程度の再生範囲ですが、音楽を楽しむにはこれで充分です。音が伝わる時、例えば50Hzで30msecの遅れ、100Hzで5msecの遅れ、1kHz以上は0msecの遅れという風に、周波数によって遅延時間が異なれば、元の波形は崩れてしまいます。パルス波形の応答をみると、周波数毎に遅延時間が異なれば伝達される波形も崩れてしまいます。
 

インパクトサウンドの補正では、群遅延特性も揃うように補正しています。

 

群遅延特性は位相特性Φ(w)をw(=2πf)で微分して符号を逆にしたものと定義されています。スピーカーなど、等価回路でモデル化されるものは、数式で算出されます。

実際のスピーカーの特性を評価する場合には、FFTで計算した離散の伝達関数から計算しなければなりません。位相特性Φ(w)の値は、wが少し変化した時に-πから+πへ、または+πから-πへ飛びが発生するので、位相特性Φ(w)を直接微分すると、値が不連続になる周波数があちこちで発生します。

そこで、伝達関数G(w)=a(w)+b(w)jから(2)式の群遅延を直接計算する方法を考えます。

(8)式のように変形すると直接伝達関数G(w)=a(w)+b(w)jから計算することができます。
実測値ではノイズが多いので~200Hzまでは±20Hz(200Δf)、200Hz~2kHzでは±50Hz(500Δf)、2kHz~では±200Hz(2000Δf)の平均化フィルターでノイズを除去しています。

では、種々のスピーカーの周波数応答特性のゲイン、位相、群遅延を比較してみましょう。

通常のアナログスピーカーでは、50Hz~100Hzの低域で群遅延は数msec~20msec程度である。パイオニアのカーステレオAVIC-RW910を使用したスピーカーを含めた群遅延特性は-350msec~+50msecまで大きく分散している。これはpioneer独自のDSP処理によって群遅延差が大きくなっているためである。(低域が高域に比べて進みすぎ)

 

人間の時間分解能は2~3msec程度と言われているので、周波数による群遅延がこれ以上になると聴覚に何らかの影響をもたらすと思います。インパクトサウンドの補正では、瞬間的な音の変化を50Hz~20kHzで群遅延が揃うように補正していますので、体に響く打楽器やベースの立ち上がり、ギターなどの弦楽器のつま弾く音、ピアノの立ち上がりの音が濁りなく再生できます。

聴覚の時間情報処理

 

新しく提供する無料のver0.3の周波数応答特性評価プログラムは下記のurLから"8011_distortion_analyzer_v0r3_f.zip"をダウンロードして解凍し、"*.exe"を展開します。Win10,Win11パソコンで実行すれば、あなたのオーディオシステムの周波数応答特性や群遅延特性をグラフで評価することができます。
 

2wayシステムなどで、ウーハーとツイーターが数10cmも距離差がある場合は、群遅延特性でその差を見ることができます。また、数cmの距離差の場合は、位相特性の段差によって知ることができます。例えば、クロスオーバーの2kHzで60degの位相差があった場合は、
340m/s/2000Hz*60deg/360deg=0.028m=2.8cm
の距離差ということになります。この場合はツイーターとウーハーの位置関係を2.8cmだけ修正すれば、位相特性の段差を解消することを意味します。