同じ楽器を使った方が音は合うのでしょうか | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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部員が個人持ちで買う楽器やマウスピースの銘柄や型番を指定する吹奏楽部がある、という話を聞くことがあります。どうしてそんなことをするのでしょうか。楽器を同じにすると、はたして音は合いやすいのでしょうか。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  アンケート

 

さっそくですが、ツイッターで訊いてみました。
楽器を同じにすると、音って合いやすいの?



『合いやすい』と『どちらかといえば合いやすい』を合わせても、全体の1/4強でした。
いちばん多かったのは、『奏者による違いのほうが大きい』でした。
さて、みなさんはどう思われますか。
 

 

  同じにする意図は…

 

一部の学校吹奏楽部で、部員が買う楽器の銘柄を指定するのはなぜなのか…
その方が音が合いやすいと考えているのかもしれませんね。
あるいは、おかしな楽器を買ってこられては困ると思っているのか…
(それならなにもピンポイントで銘柄を指定する必要はないのでは?)
ある先生から聞いた話では、同じ楽器の方が楽器のクセが同じだから合いやすいのだとか…
でもそれって、楽器のクセなりに合わせるということなのでしょうか。
それってつまり、ソルフェージュ出来てないということになるのでは?
それに、ほかの楽器と合わせる時はどうするのでしょうか。
 

 

  弊害

 

以前のブログで書きましたが、同じにすることでの弊害というものもあるように思うのです。
楽器はまだしも、マウスピースやリードの番手なんかはひとりひとり違うものです。
そういうものって、服や靴のサイズと同じだと思うのです。
ひとりひとり、自分のサイズがある。
「全員25cmの靴を買ってください」とは言わないでしょう。
それでは不自由したりケガをする子が出てきかねませんよね。
マウスピースやリードも、それと同じです。
自分に合わないものを使っていると、力を発揮出来ません。
そして、自分に合うものは人と同じとは全然限らないのです。
 

 

  経験

 

では、楽器を同じにすることには意味がないのか…
以前、あるオーケストラで、ぼくは2番で呼ばれたのですが、両隣がレッチェだったのです。
ぼくはBach。
あのときは正直言って、合わなくて難儀しましたよ。
音の性格が全然違うのです。
かと思ったら、こんなこともありました。
あるところでアンサンブルして遊んでいました。
みんなアメリカンタイプの楽器を吹いていたのですが、ひとり、ドイツ管の子がいました。
でも彼は、その楽器で上を吹いても中を吹いても、きれいにサウンドさせるのです。
全然違う楽器で合うか合わないかって、やっぱり吹き手によって違うのだと実感したのでした。
ことに近年では、いろいろな楽器の違いが少なくなってきているようにも感じますしね。
 

 

  いくつかのアンサンブルを見てみると…

 

さて、ここで、いくつかのアンサンブルを見てみましょう。


東京メトロポリタン・トロンボーンカルテットは、東京都交響楽団のトロンボーンセクション。

みなさんBachでそろえられていますね。意図してそうされたのでしょうか。

なにしろ、素晴らしいアンサンブルです。

 

Sun Bones Trombone Trioは、当初はそれぞれ違う楽器を使われていたのですが、

近年そろってクルトワにチェンジされました。

では、別の楽器を使われていた頃には合ってなかったかといったら、そんなことはありません。

クルトワ以前もクルトワ以降も、やっぱり素晴らしいアンサンブルです。

楽器をチェンジされたことで、色合いが変わったように感じます。
 

読売日本交響楽団トロンボーンカルテットは、それぞれ違うメーカーの楽器を使われています。
では、音が合いにくいかといったらそんなことはなく、やっぱり素晴らしいアンサンブルです。
 

SLIDE MONSTERSは、それぞれ活動拠点も楽器も違う4人のカルテット。

それぞれの個性もとても感じられるアンサンブルです。でも、

なら合わないかといったらそうではなく、やっぱり素晴らしいアンサンブルを聞かせてくれます。
 

ワールド・トロンボーン・カルテットは、こちらもそれぞれに違うバックボーンや楽器の4人。

でもやはり、素晴らしい合いのアンサンブルです。
 

こうして見ていくと、違う楽器、違う個性だから合わないということは全然なく、

むしろ、それぞれの個が確立されているからこそ合うとすら言えそうに思います。

 

 

  結局出てくる音は

 

こんなふうに言えるように思うのです…
どんな楽器を吹いても、結局出てくる音は、その人の音なのだ、と。
合うか合わないかなんて吹き手次第なのだと思うのです。
楽器が全然違ったら合わせきれない人もいるかもしれません。
でも、その同じ組み合わせで、きれいに合わせてしまう人もいる。
いい悪いではなく、そういうことも含めて、ひとりひとりの個性だと思うのです。
ただ言えることは、銘柄までピンポイントでそろえる必要はないのではないか、ということ。

さて、楽器を同じにする意味、みなさんはどう思われますか。


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