同じにそろえることに意味はあるのか | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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学校吹奏楽部、なかには個人持ち楽器のメーカーや銘柄を指定するところがあるようですね。

いろいろなものを同じにそろえるのはなぜなのでしょうか。一体どんな意味があるのでしょうか。

 

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 

 

どんなものをそろえるの?

 

どんなものを同じにするのでしょうか。聞いた話では…

まず、楽器。メーカー、銘柄。

それからマウスピース。メーカー、型番まで。

リード。○○のいくつ。

姿勢。楽器の角度や座り方、足のポジションまで同じにそろえさせる。

奏法。マウスピースの当て方はこう、って同じにさせられる。

それから、『音色をそろえるにはどうしたらいいですか』というような質問も、よくいただきます。

正直、そのどれも、あまり意味があるとは思えないのです。

それどころか、中には弊害が大きいモノもあるように思うのです。

 

 

 

楽器をそろえる?

 

「楽器は○○社の□□を買ってください」

メーカーも、銘柄もそろえる。なぜ?

『音程の癖が同じだから合わせやすい』と言う人もいます。でも、

楽器のクセなりに吹くのでしょうか? 楽器のクセなりに合わせるのでしょうか?

では、ほかの楽器と合わせる時は一体どうするというのでしょうか。

『音色や鳴り方が同じだから合わせやすい』と言う人もいます。

一理はあるかもしれません。が、

音色というのは、個々が持っているものです。

楽器をそろえても、音は同じにはなりません。

それに、音を合わせることは、同じ音色にすることではありません。

 

 

リードやマウスピース

 

「マウスピースは(リードは)全員○○社の□番で」

ずばり、理解に苦しみます。なぜ!?

靴のサイズや服のサイズはひとりひとり違うでしょう。

「全員25cmの靴を履いてください」って言いますか?

マウスピースやリードを同じにするのって、それとおんなじことなのですよ。

その人のサイズ、その人の厚さがあるのです。メーカーにしてもそうです。

大きい方がいい、厚い方がいいなんていう思い込みなど、愚の骨頂です。

人それぞれなのです。

自分に合わない靴を履いていたら、足を痛めてしまうかもしれない。

楽器でも、それと同じことが起こり得ます。

 

 

 

姿勢をそろえる?

 

座り方や足の置き方くらいなら、まだ害も少ないかもしれません。

それすら、人それぞれだと思いますけれど…。

でも、たとえば楽器の角度をそろえるのは、害が大きいと思います。

実際それでうまく吹けなくなってしまっている子を、これまでたくさん見てきました。

自然に普通に前を向いて、心地いいところにマウスピースを当ててみる。

そのときの角度が、自分の角度なのです。これは、人それぞれなのです。

まず、自分のほんとうの角度を知るべきです。そして、普段はその角度を基本として吹くべきです。

表現としてのベルアップは、マウスピースの当たる角度を変えないで行うべきです。

 

 

奏法をそろえる?

 

奏法、たとえば金管楽器でいったら、マウスピースの当て方を同じにさせる、

これも弊害が大きいのです。

たとえば上のくちびるにたくさん当てるとか、あるいはその逆とか、楽器によって決まっているとか…

これは、楽器による違いなどではなく、ひとりひとり違うのです。

統計的な傾向はあるにしても、少数だから間違っているわけでは決してありません。

個々の骨格など身体のつくりで決まってくるのだと思います。

それを無理矢理同じにそろえるのって、潰しているのと同じなんです。

また、『マウスピースは左右のセンターに当てなければいけない』っていうのも嘘です。

これも、骨格や歯並びで決まってきます。ぼくもそうですが、真ん中じゃない人、たくさんいます。

これを無理矢理矯正させられたために吹けなくなってしまった子もいました。

骨格や歯並びがその位置を求めるのなら、絶対に、見た目の真ん中に直してはいけません。

ほんとうに、人それぞれなのです。

 

 

 

一体なにをそろえたいの?

 

さて、楽器やマウスピース、姿勢や奏法までそろえて、一体なにがしたいのでしょう。

どんないいことがあるというのでしょうか。

そのほうが音が合う? ほんとうですか?

『セッティングや奏法を同じにしたから合うだろう』っていうのって、たとえば、

『チューナーで計ったら真ん中になったから合うだろう』っていうのとおんなじなのです。

全然そうとは限らないのです。

合うということは、共鳴し合うことです。

決して、個を消すことではありません。むしろ、個があるから共鳴できるのです。

そのためには、同じ楽器にすることでも同じ音色にすることでもないと思います。

一緒に音を出して、全体の響きをよく意識に入れて、それで出来ていくものだと思います。

 

 

ひとりひとりそれぞれなのです

 

でも中学生高校生のみなさんは、たとえば楽器を買おうにも、最初はわからなくて当然ですよね。

どんな楽器があるのか、それにはどんな個性があるのか、そもそも楽器に何を求めたらいいのか、

間違った先入観で楽器やマウスピースを選んでしまうくらいなら、たとえばトロンボーンだったら、

「ヤマハかバックあたりの中から選んでみたら?」、みたいなアドバイスはありえると思います。

でも、ピンポイントでおんなじにする意味はないでしょう。

楽器も、セッティングも、奏法も、姿勢も、人それぞれ。

自分に合っているものがいちばんいいのです。

そして、音というのは個性があるから調和するのです。

 

あなたは自分のセッティング、自分のやり方、自分の個性、バンドの中で生かせていますか。