管楽器をやっていると、こんな指導に出会うことがあります。『とにかく息をたくさん吸いなさい』、『息をたくさん使いなさい』…。これって、いつでも誰にでも役に立つ教えなのでしょうか。たくさんは常に正義なの?
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
息についての教え
きっとみなさん、もしかしたら一度は言われたことがある教え…
- 「息をたくさん吸いなさい」
- 「息をたくさん使いなさい」
- 「息のスピードを速くしなさい」
さて、これって、絶対的に正しいのでしょうか。
また、この呪縛?に囚われている人、いないでしょうか。
たくさんは正義?
息を入れても…
トランペット奏者の荻原明さんが、こんなツイートをされていました。
荻原明(Ogiwara,AKIRA)@ogiwara_a[管楽器のブレスで覚えておきたいこと] 沢山吸いなさい、沢山使いなさいと吹奏楽ではとても良く言われますが、吸う量は原則これから演奏する長さに比例しますし、使う量はむしろセーブしたほうがコントロールしやすいです。そもそも楽器に息を入れても音は出ません。 #今朝の一言_ラッパの吹き方
2023年01月09日 07:30
息を吸う量は、そのあと何を吹きたいかによって自動的に決まってくるもの。
余剰な息はむしろ邪魔です。
たとえばもし、あとうちなんかで毎拍ブレスしていたら息が余ってしょうがないです。
また、欧米の指導者が「たっぷりした息で」と言ったりしますね。
『たっぷり』というのは『たくさん』ではありません。
余剰な息
息のスピードを速くしようとし過ぎたんだろうな…
息をたくさん入れようとして、こんなことになってしまったんだろうな…
と思える生徒に、じつはこれまで少なからず出会ってきました。
とってもノイジーで、鳴らない不自由な音。
音にならない息が、楽器をただ通り過ぎて行くばかりに見えます。
そんな子がもしも、『もっと息を使えば…』と考えてしまったら、さらに悪化するでしょうね。
たとえばこんなアドバイスで良くなった子がいました…
「息が音にならずに通り過ぎてしまっているから、もっとゆっくりにしてごらん」…
ただし、どんなアドバイスでうまく行くのかは、人によってそれぞれ違います。
だから、注意深い観察が欠かせないのです。
やればやるほどいいことなどない
- 『息をたくさん使わなきゃ』
- 『息をたくさん吸わなきゃ』
- 『もっと息のスピードを…』
そんな呪縛に囚われている人、じつは少なくないように思います。
『たくさん』とか『速く』とか…、そもそも息に限らずですが、
世の中には、やればやるほどいいことなどありません。
すべてのものには、ちょうどいいところがあります。
特に『息のスピード』という言葉、勘違いして使われていることが非常に多いです。
考え直してみる、捉え直してみる、試しに逆をやってみる…
そんなことも、時には必要かもしれません。
音になって初めて
息は、くちびるなりリードなりで音(の元)になって初めて、役に立つ。
金管楽器なら、くちびるを敏感にして息とバランス、反応させる。
それがない、仕事をしないでただ流れていく息は、むしろ邪魔ですよね。
(ただし、サブトーンやサブトーン的な音もひとつの技術ですが…)
特に、息を『押し込む』になってしまっているのなら、それはまったく逆効果だと思うのです。
息が仕事をするところはどこなのかを意識に置くことが、ひとつ有益なのかもしれないですね。
そしていちばん大切なことはやっぱり、自分の中に理想の音を持つこと。
さて、その息、何のために吸いますか。何のために流していますか。