基礎とは何か | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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『基礎練習は大切だ』、『基礎の積み重ねがいい演奏につながるんだ』、『基礎に取り組まなければ』…、そんなことを言われること、あると思います。でも、基礎ってなんでしょう。どういうもので、何のためにやるの?

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  どっちが大事?

 

高校の頃、吹奏楽部のミーティングで、こんな議論、言い合いになったことがありました。
あれはコンクールの2~3ヶ月くらい前でした…
「今のうちに基礎をもっと固めるべきだ」
「いや、もっと曲の練習に取り組むべきだ」

練習方針や部の運営も、全部生徒が話し合って決めていたのです。
さて、みなさんのところではどうですか。
もちろん、うちは曲の練習しかしないなんていう部は少ないと思います。
では、基礎って何でしょうね…
あのころのぼくたちが、それをちゃんとわかっていたのかというと、疑問なのですが…
 

 

  何のために

 

基礎練習って、何のためにやるのでしょうか。
それはもちろんズバリ、より望む演奏をするため、ですよね。
望む音、望む技術、望む表現、それを、いつでも自由に行えるように…
そのために音を磨き、技術を磨き、探求する。
それが、基礎練習だと言っていいと思います。
そのためには、その『基礎練習』は、曲につながっている必要がありますよね。
基礎のための基礎、ではなく。

そして、もうひとつ大切なことは…
『ウォームアップ』と『基礎練習』って、違うものです。
ウォームアップは、準備体操。整え、確認するもの。
基礎練習は、いろいろな技術向上のためのものです。
 

 

  やらなければならないもの?

 

ウォームアップや基礎練習って、やらなければならないもの、なのでしょうか。
「曲ばかりやっていると吹けなくなっちゃうよ」
そんなふうに言われた人もいるかもしれません。それ、ほんと?
少なくとも言えそうなのは…
『楽譜の音をとにかくちゃんと並べるんだ』
なんていう意識で曲をやっていたら、そのうちほんとうに吹けなくなってしまうでしょう。
なら、そのために基礎練習をやるの?
いえ、むしろ、

『ちゃんと並べるんだ』なんて意識で曲に向かわなくても良くなるように、基礎をやる、
そんなふうに言った方が近いように思いますね。
『音楽』に集中できるように。
逆に言えば、曲で『音をちゃんと並べなきゃ』って意識しないと音が並ばないのだとしたら、
それは(何らかの)基礎が足りていないと言えるのかもしれません。
 

 

  何をすれば…

 

では、基礎練習って何をすればいいのでしょうか。
金管の場合を見てみると…
ロングトーン、リップスラー、タンギング(発音)、音階といったところでしょうか。
ロングトーンは、音を機械のようにまっすぐに○拍伸ばす練習、ではなくて、
健全に、自由に、望む音を伸ばす練習、息や、身体や、音と向き合う練習。
リップスラーは、いろいろな音をストレスなく自由に行き来出来るようにする練習。
これによって、息やアンブシュアもつくられていくと思います。
タンギング(発音)は、望む音(強さ、色、形)を望む瞬間にスタートし、それが連続できる。
リップスラーとタンギングは組み合わせてやるのもいいと思います。たとえばこんなふうに…



どちらも舌が(舌も)、重要な働きをしますからね。
それに、組み合わせればバランスよく練習できるし、時短にもつながりますよね。
そして音階は、いろいろな調性の音のならびを整える練習、ではないでしょうか。
 

 

  ほかにも…

 

そのほかにも、
楽器を使わず楽譜を音に変換できる(歌える)ようにする練習、つまり、ソルフェージュ。
これも、広い意味での基礎練習かもしれません。
楽譜の音を探すのを楽器に頼っていたのでは、とても練習の効率が悪いと思うのです。
そして、それでは楽器を演奏する上でのマイナスになると思うのです。なぜかというと、
自分の中に音がないのに楽器を吹くことになるからです。
それでは極端な話、目かくしをして歩いて手探りで目的地を目指すようなものだから…
 

 

  合奏のために

 

さて、では、

ひとりひとりの技量や能力が上がれば、上手い人が集まれば、それで、

いい合奏が出来るのでしょうか。
個々の技量と、合奏能力が比例しない例に、これまでたくさん出会ってきました。
人と演奏して音を合わせたりブレンドさせる、サウンドさせる技術って、

また別のものだと思うのです。
一人で吹いてばかりでは、決して培われない能力です。
こんなふうに、基礎といってもいろいろな要素がありそうですよね。
また、その中には曲の練習によってカバー出来ることも、あるかもしれません。
 

 

  見極め

 

基礎練習って、それをひけらかしたり闇雲に技術を求めるためにやるものではないです。
基礎練習のための基礎練習になってしまったのでは、あんまり意味がない…
曲の演奏、音楽につながっていなければ、一体何のためにやっているのか、

ってなってしまいますよね。
これは必要な練習なのか…
やり方や狙いは間違っていないか…
足りないものはないだろうか…
そんな視点を、いつも持っていたいですね。
そして基礎って、音楽もそうであるように、追求していけばどこまでもゴールがないもの。
『これで完成』って、ないのですね。音楽の世界には…

さて、基礎練習、どんなふうに取り組んでいますか。