トロンボーン吹きのみなさん、トロンボーンの難しさって、なんだと思いますか。もう意識すらしない、
でも、これって考えてみたらすごいことだよなぁ…、っていうこと。トロンボーンってすごいんですよ。
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
トロンボーンの重さって
まずクイズです(クイズかい!)。
トロンボーンって、重さはどれくらいあると思いますか。
もちろん、楽器の種類や銘柄によっても違うでしょうけど、たとえば平均的なテナーバスでは…
ぼくの楽器(ヤマハYSL-882GOR)で、ちょうど2kgくらいです。
それを、左手1本で顔の高さまで上げて演奏するのですよ!(右手はスライド用だから)
これって、考えてみたらすごくないですか?
だから、楽器の重心は、だいたい左手の位置(薬指か小指の位置)にあるのです。
楽器によっても違いますが。
もちろん、実際には、スライドを動かさない時には右手でも支えていたりはしますけどね。
音程
さて、初心者がトロンボーンを難しいと思ういちばんの理由って、きっと、
自分で音程を調整しなければならないところ、ではないでしょうか。
ほかの管楽器だと、運指が決まっていて、そこを押せばその音が出せる…
そんなふうに思いがちですよね。
スライドには目盛りもなければ目印もない。勘。
自分で調整しなければならないから、耳が悪いととっても音痴なことになる。
そんなふうに思われがちですよね。
さらに…
重心
あまり注目されないし意識もしないことですが…
トロンボーンって、運指、つまり、スライドの動きによって、楽器の重心が変化するんです。
考えてみれば当たり前のことですよね。
あれだけのものが、演奏中に移動しているわけですから。
スライドの外管だけを持ってみると…、軽いですよね。ここ、ポイント。
おそらく多くの人が思っているよりも、軽いんです。
だから、重心の移動は、せいぜい数センチです。
それでも、数センチ重心が動くことで、身体のバランスは影響を受ける。
そして…
気圧
これもあまり注目されないことですが…
スライドって、瞬間的に動きますよね。と…
管の中の気圧が変化するのです。微妙に。
こんな楽器、ほかにありますか!
その気圧の変化に揺らがないだけの、その音に見合ったエアフローが必要なんですね。
これ、たとえばグリッサンドがうまくいかない原因のひとつになると思うのです。
グリッサンドの練習をするのには、こういう意味もあると思うのですよね…
トロンボーンの難しさ、トロンボーンの良さ
さてどうですか。トロンボーンって大変な楽器でしょ!
でもね、いいところもありますよ。
どんなに音が動いても、決して管が途切れないのです。
ほかの金管楽器って、ピストンやロータリーで管を切り替えて長さを変えるでしょ。
と、瞬間的には管は途切れているのです。特にピストンは。だから、
トロンボーン吹きがピストン楽器を吹いてみたりすると、意外とレガートが難しかったりする…
ところがトロンボーンは、決して管が途切れる瞬間がない。
だから、最もレガートが美しい金管楽器なのです。上手にやれば、ね。
そして、その音は、人間の声に近い。
さらに、音程が自由自在だから、ハーモニーも美しいのです。
自分の中の歌が
トロンボーンは自分で音程をつくらなければならない、と書きました。
でも、ほんとうはそれはトロンボーンだけではなくて、
すべての管楽器は、自分で音程をつくらなければならないのです。
押さえれば、その音が出る?
いえいえ、楽器に丸投げしていては、ろくな音程や音色は出てきやしませんよ。
自分の中の歌が、楽器から出てくるのです。それが、管楽器。
そのことをいちばん最初から思い知らされる楽器、それが、トロンボーンなのかもしれません。
さて、トロンボーンの大変さ、そして素晴らしさ、おわかりいただけたでしょうか。