どちらの楽譜が読みやすい? | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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昨日のブログ『調号?臨時記号?』で書いた、2パート一緒の楽譜に書く書き方について、

ツイッターでアンケートしてみたら、とても多くの回答や深い意見などをいただいたのでした。

 

こんばんは。

トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 

2種類の書き方

1つのパート譜に2つの音(2つのパート)を書くには、2種類の書き方があります。

ツイッターで、どちらで書いてある方が読みやすいでしょう、という質問をしました。

さて、みなさんはどう思われますか。

ツイッターのアンケートでは、こんなふうになりました。

有効投票数 1,141票。

思いのほか多くの回答をいただきました。ありがとうございます。

それだけ関心があるということなのでしょうね。

結果的には、『2の方が見やすい』という答えがいちばん多かったです。

そして、多くの意見をいただきました。

 

演奏する立場から

まず、演奏する立場からの意見。

『2パートの音程が離れているところは、2の書き方のほうが読みやすい』

棒が長くなると、旗や連桁が音符から離れてしまいますからね。でも、

これはスコアの話でしょうけど、ベーレンライターのモーツァルト全集では2を原則としていて、

逆に音程が離れているところは1なのだそうです。

『1のほうが、リズムやアーティキュレーションが同じであることがわかりやすい』

という意見もありました。たしかにそうです。

 

弦楽器などの場合

弦楽器など、1人で複数の音を出せる楽器の場合、また意味が変わってくるのです。

1の書き方だと、重音(両方の音を1人で奏する)と取られる場合がある。

だからディビジ(2人でそれぞれ奏する)で弾いてほしい場合、楽譜に『div.』を書く必要がある。

どちらの書き方で書くのかで、意味が変わってくるのですね。

管楽器の場合は1人で1つの音しか出せませんから(特殊奏法は別)、

どちらで書いても必然的に『div.』になるのですけども…。

 

記譜する立場から

記譜をする、楽譜を書く立場からの意見もいろいろいただきましたが、総じて、

『1のほうが記譜がらくだ』という意見でした。同感です。

鍵盤を使って入力される方は、特にそうでしょうね。

極力、1で記譜するという方が多いです。ぼくもそうです。

それには、ただ書きやすいというだけではなく、別の理由(スコアの場合/後述)もあるのです。

ただ、音が交差するところ、上下の音が入れ替わる場合はもちろん、2で書くしかないですね。

2の場合、たとえばフィナーレだと、レイヤーという機能を使って書く必要があるのです。

さて、レイヤーとはなにか…

 

レイヤー

レイヤーって何でしょう。

レイヤーとは、層とか階層構造とかの意味があって、たとえばフィナーレの場合だと、

1つの五線に4つのレイヤーに分けてそれぞれ独立した声部を書くことができるのです。

こんなふうに…

黒がレイヤー1、赤がレイヤー2、緑がレイヤー3、青がレイヤー4です。

もちろん、こんなヘンテコな書き方はしませんが、実際にはたとえばどんな時に使うのかというと、

ガーシュインのラプソディ・イン・ブルーの一部です。

これなど、基本的にはレイヤーを3つ使わないと書けません。

なにしろ、冒頭の2の書き方だと、この機能を使わないと書けないのですね。

 

スコアでは

最初の画像の2種類の楽譜、もちろんベートーベンの第九、4楽章の一部なのですが、

同じ部分のスコア、管打楽器の部分を、2つの書き方で書いてみました。

1の書き方で書いた場合…

2の書き方で書いた場合…

おんなじことが書いてあるのですよ。さて、どちらが読みやすいでしょう…。

2は、とっても煩雑で、しかも各五線がとても幅を取る。見にくさが増しますよね。

だから、少なくともスコアでは極力、1の書き方で書くのですね。

 

これをパート譜にするときに、もし、1stと2ndを別々の楽譜にしようと思ったら…

それぞれのパートについて2つのパート譜を作って、1stの場合なら下の音を、2ndの場合なら上の音を、

それぞれ最初からいちいち全部消していかなければならないのです。

その後、いろいろな記号の配置をそれぞれ整えて…、これ、とても大変なのですね。

だから、『2パート一緒に書くけど許してね』となるのです…。ご協力感謝。

なにしろコンピューターを使っても、パート譜ってそう簡単にはできないのです。

 

より音楽的なのは

こんな意見もありました。

『音楽とは和音の連続ではなく声部の重なりなのだから、2のほうが音楽的である』

たしかにそうです。

和音というのは、いろいろな声部、それぞれの動きが重なり合って、結果的に生まれたもの。

決して、その逆ではないのです。決して。

それから、ピアニストの方の意見で、2の方がパート(声部)が認識しやすい、というのもありました。

ピアノに限らず、各声部の流れを認識することは大切ですよね。その意味では、2がいいのでしょうね。

音楽の成り立ちにまでさかのぼる、深いテーマなのでした。

 

さて、みなさんはどう思われますか。