コンピューターがあれば作編曲できるって!? | フクロウのひとりごと

フクロウのひとりごと

愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
おもに吹奏楽の活動に役立つ情報を発信中!
バンド指導をご希望の方はお気軽にご連絡ください。

楽譜を書く時って、今ほとんどの人がコンピューターを使っているのではないかと思います。

では、コンピューターと楽譜作成ソフトがあれば誰でもちゃんとした楽譜が書けるのでしょうか。
 
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 
 
finaleと編曲
 
またまたトランペット奏者の荻原明さんのブログなんですが(いつもありがとうございます)、
こんなことを書いてみえました。読んでみてください。
 
 
まさに! です。
 
 
コンピューターがないから…?
 
ある時、こんなことを聞いたのです。
「コンピューターを持ってないから編曲できないです」…
それってまるで、『コンピューターさえあれば編曲くらいできる』みたいな言い方ではないですか。
コンピューターがあれば、フィナーレなど楽譜作成ソフトさえあれば、作曲や編曲ができるのでしょうか。
誰でも楽譜が書ける魔法アイテム、それがコンピューター?
とんでもない話です!
 
 
どうして魔法の箱みいたいに思われるのか
 
『コンピューターがあれば楽譜が書ける、作編曲できる』…
そんなふうに言う人がいるのはなぜなのか…
コンピューターは、楽譜の音を出してくれる。
スコアからパート譜を作ってくれる。
この2つの理由によるのではないかと想像します。が、
楽譜の音は出してはくれますが、決して書くべき音を教えてくれるわけではありません。
パート譜は作ってはくれますが、それはそのままではとても使い物になんかなりません。
 
 
 
コンピューターの出す音なんか…
 
楽譜作成ソフト、コンピューターの出す音なんか、とても信用ならない代物なのです。
まず、ホンモノの楽器はあんな音ではありません。
複数の楽器が合わさった響きも、あんな音ではありません。
そして、ホンモノのアンサンブルや合奏ではありえないバランスで鳴ります。
さらに、人間は、あんなアーティキュレーションでは演奏しません。
人間のピアニストは、決してあんなふうには弾きません。全部の音が同じ強さだなんて…
差音なのかなんなのか、ないはずの音が鳴ったりもします。逆に、あるはずの音が欠けることも…。
あんな音を頼りにイメージづくりなんかしていたら、ほんとうにろくでもないことになりますよ!
フィナーレをディスっているわけではありません。楽譜作成ソフトとしてはいいモノです。
だからこそ、世界中でこんなに使われているのですね。
 
 
コンピューターの弊害
 
コンピューターで楽譜を書くことの弊害というのもあると思うのです。
まず、コンピューターだと、文書作成ソフトでもそうであるように、
おんなじ動きはコピペで書けてしまう。と、もし、コピー元が間違っていたら、
コピペで書いた部分もみんな間違っていることになる。しかも、パート譜も…。
間違いが発見しにくくなっているんですね。さらに…
荻原さんも書いてみえるように、
『これ、コンピューターで再生したらうまく鳴る楽譜だね』
って思えるような楽譜に出会うことがある。
たとえば、余計なアーティキュレーション(スタッカートやアクセントや…)が多い楽譜。
こんなのわざわざスタッカートなんか書かなくても、短く吹くのは当然だろうよ!
という楽譜…。
さらに、声部の流れなんか無視した楽譜…。
力が抜けますよ…。苦言…
 
 
 
ナマの現場をどれだけ知っているか
 
結局は、実際の楽器、ナマの現場、生きたアンサンブルやオーケストラ、いろいろな楽曲、
そういうものを、どれだけ肌で知っているか、だと思うのです。
どれだけ現場で、生身の音を聴いてきたのか、だと思うのです。
どれだけ現場で、いろんなものを得てきたか、だと思うのです。
昔も今もそういう意味では変わりません。紙に書いていた頃も、コンピューターの現代も…。
それがないと、ほんとうにマヌケな楽譜を書くことになります。
コンピューターを使うからこそむしろなおさらにそうかもしれません。
 
 
自分の中にある音しか書けない
 
紙の五線に書こうがコンピューターに書こうが、結局は、
自分の中にある音しか書けない、ということなんです。
両者には、なんら変わりはありません。
コンピュータのほうが、多少早く書けるでしょうか。
でも、自分の中から創造することに変わりはない。
決して、コンピューターがそこを代わってくれることはないのです。決して。
むしろ紙に向かう方が、創造的になれる気すらします(なのでスケッチは紙の五線にしています)。
 
 
 
『人間』が演奏するんです
 
スコアのひとつひとつの声部、ひとつひとつのパートは、生きた人間が演奏するんです。
ひとつひとつの声部が『歌』なんです。
優れた楽譜って、きっと間違いなく、作家は書きながら歌っていますよ。ひとつひとつの声部を。
極論すれば、歌えないものを書いたら、それはデタラメなんです。極論すれば、ね。
そして、たとえば譜めくりや、演奏のしやすさ(決して平易ということではなく)、
そんなことまで思い至って作った楽譜が、いい楽譜だと思うのです。
それは、紙に書こうがコンピューターで書こうが変わりありません。
コンピューターのいちばんの弊害って、もしかしたら、
画面の上の音符の向こうには生身の人間がいるんだということを忘れがちなことなのかもしれません。
 
 
フィナーレのオススメの使い方
 
最後に、フィナーレのオススメの使い方をひとつだけ…
どんな編成のスコアを書く時でも、全部の楽器をピアノの音にして再生するのです。
この方が間違いがわかりやすいんですよ。
ぼくも、これは確認しないとやばいという楽譜ではそうしています。めったにしませんが…
尤も、聴く耳の問題もありますけどね!
 
いろいろ書きましたが、自戒も込めて書いています。
ごめんなさい、キツい、ムズい、吹けん、とか言わないで。お願いだから…(^_^;
 
 
合わせて読みたい…