7日にわたる連載,まとめです。
管楽器は,すべての音を,その瞬間瞬間につくっている。
ピアノのように,あらかじめ調律したら動かせない楽器ではない。
なので管楽器は,その瞬間のハーモニーを,
リアルタイムで純正にすることができる。
これはピアノやオルガンにはできないことです。
となりで完全五度が鳴っていたら,それを純正にしようとする,
それはもう,無意識の反応なわけです。条件反射です。
パイロットは飛行機の機首が下がったら,反射的に操縦桿を引く,
それと同じです。
純正な完全五度よりも◯セント狭く吹くなんてことは,
管楽器にはおそらく不可能なわけです。
なので,音律についての考え方も,
ピアノなどとは根本的に違って当然です。
そして,実際に演奏現場でおこなわれている純正調は,
厳密な意味での『純正律』とは違います。
そして,それがいけないわけでもないのです。
そもそも純正調というのは,ハーモニーのために,
ほかの音に対して純粋に響き合うように見つけ出された工夫です。
純正調のハーモニー,それをつくるとき…
根音はそのままで,第3音と第5音が動く,とは限らない。
みてきたとおり,根音が動かなきゃならない局面もありうる。
まず,調性が大事です。
そして,前後の流れが大事です。
ハーモニーは,連結して流れがあって,初めて機能ができる。
さて,チューナーという機械は,平均律です。
中には,純正調の第3音に目盛りがついているチューナーもあります。
でも,長三和音の第3音はいつでも14セント下げる,とは限らない。
それに,書いたように,他の音に対して合う,が大切なわけです。
ですので,それをチューナーで計ってみても,あまり意味がない。
『だいたいこのくらい下げなきゃいけないんだな…』
って認識する程度の意味なら,あるかもしれません。
楽器屋さんやチューナーメーカーは反論するかもしれませんが…
そして,『長三和音の第3音は下げる』と,知識で吹くのではなくて,
心地いい澄んだところに持っていったら,結果的に下がっていた,
これが大切です。
知識だと,やり過ぎてしまうこともある。それでは意味がない。
また,純正律の音階を一人で吹けるように,
純正律と平均律の音階を一人で吹き分けられるように…
これ,あまり意味がないと思います。
何度も書きますが,『他の音に対して…』が大切なわけですから。
もし,一人で純正律の音階を練習するのなら,
そのときは,頭の中にはハーモニーが鳴っていなければなりません。
そうではなく,単音の音階だけ,では,意味がありません。
こんなふうに吹く時には純正律になっているかも…
ひとり(上の段)が音階を吹いて,ひとり(下の段)がハモる。。
さて,しかし見てきたとおり,純正調は万能ではありません。
矛盾も破綻も生じるし,計算通りがうまくいくとも限らない。
楽器の特性,編成やオーケストレーション,並びまでもが影響する。
妥協も必要になってくる。
純正律は,コンクールで勝つためのおまじないでは決してない。
そして,いつでも純正調がいいわけではない。
たとえばジャズなどの4和音中心の厚い和声では,
純正調ではないほうがリッチでいいかもしれません。
それに,ちょっと難しい話かもですが,旋律の動きの場合…
どちらかというとピタゴラス的な音階のほうが美しかったりする。
主音に向かう導音は,少し高めのほうが気持ちがいい。
(ぼくは,音階の導音には1ポジションを使うなと教わりました)
でも,そこで鳴っている属和音の第3音は,純正調的には低め…。
導音 … 高め,属和音の第三音 … 低め。2つは同じ音(´・ω・`)
さてどうする…!?
そんなふうにいろいろとあって,ことは,そう単純ではない。
それに,何度も書きますが,
音程というのは,音が合うための要素の1つに過ぎない。
さて,では,どうしたらいい!?
とにかく聴くことです。響きに意識を向ける。
最初はわからなくていい。心地のいいところを探していくこと。
自分の吹いている音,自分たちの吹いている音に,興味を持つこと。
ハーモニーは,たくさんたくさん合わせること。
そして,たくさんたくさん歌ってみること。
歌って合わせてみること。
ハーモニーを合わせるとき,
最優先は,ユニゾン,オクターブ。
要は,おなじ音です。これは絶対。
次に大切なのは,基本的には完全五度と完全四度。
おなじ楽器の中にそれらがあったら,特にそうです。
ただ,全体の中で,時には例外もあると思います。
それらがちゃんとできて初めて,純正三度が合わせられる。
合奏の中では,同じ音をみつけよう!!
チューナーに頼らず,同じ音を合わせよう。意識を向ける。
同じ音は,誰?
それができたら,完全五度と完全四度。
上げたり下げたりするんじゃなくて,歌うんです。
ここまでがちゃんとできたら,相当いい感じでしょうね。
つまり,ある意味,純正調以前の問題な場合が多いと思うのです。
いっぱい合わせて,いっぱい響きを感じて,いっぱい歌って…
結局は,それが大事。。