「方(かた)」と「方(ほう)」 |  ときしらずのブログ◎迂闊な話         

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若い女優が、先日、テレビのインダビューを受けていました。ブロードウェイミュージカルの、日本版舞台の主役を務めることになったそうです。彼女は、次のようなことを語りました。

「数年前、ブロードウェイで舞台を見たとき、楽曲が素晴らしくて、終演後、ダッシュでサントラCDを買いに行ったのを覚えています。その楽曲を、日本のホウにも、ぜひ、聞いていただきたいと思います…」

これを聞いて私は、「日本のホウにも、ぜひ、聞いていただきたい…って何 !?」と思いました。しかし、テレビ画面に同時に、「日本の方にも、ぜひ、聞いていただきたい…」 とテロップが流れたので、すぐに事情は呑み込めました。信じ難い気もしますが、明らかに、「方(かた)」と「方(ほう)」を取り違えているのでした註1

 

推測するに、インタビューには、台本が用意されていたのでしょう。多分、ルビなしです。収録前にそれを暗記するとき、女優は、「日本のカタ(方)にも、ぜひ、聞いていただきたい…」ではなく、「日本のホウ(方)にも…」と読み取ってしまい、そして、本番でそのまま喋ってしまったのでしょう。…

 

テレビ局がテロップを付けるとき 【註2】、「日本のホウにも…」と聞いたオペレーターが、そのまま「日本の方にも…」と入力したのかも知れないし、あるいは、「日本のカタにも…」の間違いだろうと解釈して「日本の方にも…」と入力したとも思われます。いずれにしても、出来上がったテロップは「日本の方にも…」であり、テロップ作業の段階では何の問題も生じなかったということではないでしょうか〔あくまでも、推測です〕。…

 

…と、ここまで推測してみたわけですが、しかし舞台裏はどうであれ、「日本のホウにも、ぜひ、聞いていただきたい…って何 !?」 と、やっぱりひとこと言っておきたいと思ったエピソードでした。

【註 1】

「方(かた)」「方(ほう)」ともに、色々の意味がありますが、当ブログでは、以下の意味を念頭に置いています。

かた【方】

〔名〕

他人を高めていう語。

「あの方(かた)は素敵な方(かた)です」 「次の方(かた)どうぞ」

ほう【方】

〔名〕

方向、方角。また、その方向にある場所。

「西の方(ほう)に進む」 「僕の方(ほう)を見る」 「池の方(ほう)まで行く」

〔『明鏡国語辞典』第二版を引用させていだだきました。用例中の、見出し語を表す

記号( ー )は、ルビ付きの文字表記に変えさせていただきました。=引用者〕

 

 【註 2】

テレビのテロップと言えば、「世界の名画が日本で見れる」と “ら抜き言葉”で喋っても、「世界の名画が日本で見られる」と直したり、「凄いおいしい」と喋っても、終止形の“凄い”を連用形に直して「凄くおいしい」としたりしているのを見かけます。

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