読書 Xの悲劇 エラリイ・クイーン 詳細① | 怠け者のつぶやき

怠け者のつぶやき

今まで勉強してこなかった怠け者が
今更だけど本でも読もうか、ってことで色々と
本を読んだりニュースを気にしたりしてつぶやいてます。

○詳細

1.あらすじ(ネタバレあり)

①第2の殺人

 ロングストリート殺人事件があった9月4日から5日後の9月9日、1件の手紙が警察の元に送られてきた。手紙には、ロングストリート殺人事件の犯人についてのある事実を発見したと書いてあった。手紙が誰からかは分からないが、連絡船の発着所で水曜日の夜11時に落ち合う様に書かれていた。サム警視とブルーノは定刻にフェリー・ボート発着場に到着した。サム警視達はドルリイ・レーン氏を呼び、そこで待つ事とした。しばらくすると人が落ちたと言う声が聞こえてきた。警察は人が落ちているとされる上甲板に向かって行こうとした時、ドウィットがいるのを見つけた。警察はドウィットを含めたフェリーの乗客をその場に待機させ、落ちた人物を引き上げた。落ちた人物はフェリーと杭の間に挟まって圧死しており、顔の判別は付かなかった。目撃証言を聞いたものの、その日は霧が深く、フェリーも片道10分程度の短いものである事から、上甲板にいた者はいなかった。しかしながら舵手のサム・アダムスの証言により、チャーリー・ウッドが毎夜のごとくこのフェリーに乗っていた事、その日も乗船したのを操舵室から確認した事がわかった。特徴的な赤い髪と、ウッドが以前アダムスに見せたという足の古傷から、この死体がウッドである事を間違いないと証言した。サム警視とブルーノは、2つの殺人事件に共に一緒にいたドウィットを疑った。彼の手の傷を見ると、右手に傷を負っており、かさぶたが張っていた。扉を開くにも相当きつそうで、使いづらそうに左手を動かしていた。死体を調べると、ウッドの死体からドウィットのネーム入りの葉巻が出てきた。それでもドウィットはウッドの事を知らないと言う。またドウィットがここに来た理由を明かさない事から、サム警視とブルーノはドウィットへの疑いをますます濃くしていくのだった。

 その後ウッドへの聞き込みをしていると、同じ運転手のパトリック・ギネスがウッドは黒い提げ鞄をその日に持っていたという事が分かった。水の中からはかばんが発見されていない事から、黒い提げ鞄を持つ乗客を探すと5人いた。しかしギネスにはどの鞄か分からなかった。

②ウッドの痕跡

  翌日、シリング医師が解剖を終わらせた。報告書の中には、死体の頭部に殴られた跡があり、少量の水が発見された事から、水に落ちた際には意識不明だが息があった事が示唆されるとのことであった。肺にニコチンの形跡がある事から喫煙者である事、血液中の糖分は微量で糖尿病とはいかないが、アルコール中毒症状がみられていた。左足の傷は少なくとも20年以上は経っており、先太の指が筋肉労働者である事を示している。さらに左手首に骨折の痕跡があり、肋骨にひびの入った個所があるが、これは既に癒着している事、2年以前の盲腸手術の跡がある事が見られた。

 解剖報告書を見ると、ドルリイ・レーンはウッドの調査をする事にした。クェイシー に指示してサム警視に化けるとウッドの家を捜索する。するとウッドは毎週銀行に行っており、10ドルに満たない金だが欠かさず貯金をしていた事が分かった。金額は945ドル63セントだった。銀行に行くと担当は良くウッドのことを覚えており、続けて煙草屋、インクなどを購入した文房具屋、クリーニング屋、染物屋、靴屋、レストラン、ドラッグ・ストアも確認したが、どこも少額だが続けて来ていた常連である事が分かっただけであった。次に鉄道の人事部門を訪ねた。ウッドは人事から「勤めていた5年間1回も休まず、無事故で、報告書をきちんと書く」と好評を得ていたようだ。ここまで調査が終わると、サム警視に扮したドルリイ・レーン氏は、部下に翌日2時半に連絡するようにと伝言を残し、自宅に戻った。

③ドウィット逮捕

  翌日(9月11日)、朝からドルリイ・レーン氏はドウィット邸を訪れていた。あいにくドウィットは不在であったことから、執事のジョーゲンズに話を聞く事にした。ジョーゲンズは当初話をする事をためらっていたが、ドウィットを助ける為だというとしぶしぶ口を開いた。ドルリイ・レーン氏が変わった客はいなかったか尋ねられると、フェリーペ・マキンチャオという人物の名前が挙がった。マキンチャオは南アメリカから来た客だそうで、今年の夏に来たとのことだ。8月14日に帰ったとの事だが、ロングストリートもその時は珍しくドウィットの家にやって来ていたそうだ。それを聞くと、ドルリイ・レーン氏はクェイシーにマキンチャオの素性を探るよう指示をした。

  次にドルリイ・レーン氏は取引所クラブに向かった。そこにいるドウィットと会い、昼食を取る事にした。そこでドウィットが隠している事を話す様に、とドルリイ・レーン氏が言うのだが、ドウィットはそれでも話をしなかった。その後も説得をする事で聞きだす事ができたのは、ドウィットとロングストリートが昔掘り当てた炭鉱がウルグアイにある事で、マキンチャオはウルグアイ人の土地開発公共事業団体の渉外役員である事だった。次にドルリイ・レーン氏はモリス医師の所に向かった。モリス医師からは、ドウィットの右手の怪我が、クラブで起きた事に間違いない子と、本来は包帯を巻かなければいけない様な状態でかさぶたはちょっとでも力を入れるとはがれてしまうとの証言を聞く事ができた。

  モリス医師の所に行った後、ドルリイ・レーン氏はブルーノの地方検事事務所へ向かった。そこで昨日指示しておいた部下からの連絡がサム警視に来て、ドルリイ・レーン氏がサム警視に変装した事をばらした。するとブルーノとサム警視はドウィットをロングストリートおよびウッドの殺人犯として逮捕する事を決めたとドルリイ・レーン氏に言った。ドルリイ・レーン氏も良く考えた方が良いと言いながらもこれに賛同した。

④ドウィットの裁判

  サム警視とブルーノはドウィットを逮捕し、裁判を行う事を通達した。時を同じくして、ドウィットの妻・ファーン・ドウィット夫人がライオネル・ブルックス弁護士の元に向かっていた。ブルックス弁護士の話は、ドウィットがファーンと離婚を望んでいる事を伝える為だ。原因はロングストリートとの不倫。素直に離婚すれば毎年2万ドルを渡すが、訴訟を起こせば1銭も与えない意向だと言う。ドウィットは現在拘留されているため、釈放された後に手続きを行いたい事を最後に伝え、ファーンを帰らせた。

ドルリイ・レーン氏はドウィットの裁判での弁護士を務めるフレデリック・ライマンの元を訪ねていた。ライマンは裁判に関して相当に悩んでいたが、ドルリイ・レーン氏の一つの忠告を聞くと息を吹き返した様に喜んだ。

裁判が始まった。ブルーノは、ロングストリート事件の密告をしてきたのがウッドだった事、2つの殺人事件に共通していたのがドウィットだけだと言う事、電話で呼び出されたとあったが、その電話の相手を明かさない事からそれが事実でない可能性がある事、乗船した時刻の嘘をついていた事などから、ドウィットの有罪を主張した。これに対してライマンは、証人にモリス医師とサム警視を呼んだ。モリス医師には、ドウィットのクラブでの右手の怪我が本当である事、張っていたかさぶたが簡単にはがれてしまう事を確認し、サム警視にはドウィットとあった際にはかさぶたがはがれていない事を確認した。200ポンド(約91kg)を超えるウッドの身体を両手で落とせばかさぶたがはがれる事、ドウィットの小柄な体では片手でウッドを落とせない事からドウィットの無罪を主張した。結果ドウィットは無罪を勝ち取った。

④第3の殺人

  ドウィットは無罪を祝ってパーティーを開いた。そこでのドウィットは逮捕前とは人が変わったと思えるほどに明るくなっていた。ファーン夫人はパーティーに出席していなかった。パーティーが終わると、ドウィットは一部の親しい友人を自宅に招いた。招かれたのは、隣人のエイハーン、娘のジーン・ドウィットと婚約者のクリストファー・ロード、アンペリアル、ブルックス弁護士、ドルリイ・レーン氏の6人だ。

  ドウィットとウィーホーケン駅に到着すると電車に乗った。ドウィットは回数券の有効期限が切れている事に気付き、新しい50回の回数券を購入した。電車に乗ってしばらくすると、マイクル・コリンズがドウィットの前に現れた。ドウィットを付けていたようだ。ドウィットとコリンズは話をすると後ろの車両に移って行った。

  しばらくしても戻ってこないドウィットの事を心配したドルリイ・レーン氏は、ドウィットを探しに行く事にした。すると、電気の付いていない暗い車両の椅子に座らされて、ドウィットの死体が見つかった。死体は心臓を拳銃で撃ち抜かれており、即死であった。ドウィットの死体には、ダイイングメッセージと思われる、左手の中指を人差し指の内側に引っかけるポーズをしていた。周りからは邪教にて使う魔除けのポーズである事が指摘された。

⑤ドウィット殺人の聞き込み

  サム警視達は聞き込みを開始した。まずは、一緒に乗車をしていたドルリイ・レーン氏達に行った。だれもこの事には気付かなかったようだ。クリストファー・ロードに話を聞いている時、彼はフェリー・ボートの所でチェリー・ブラウンとポラックスを見かけたとの証言を聞く事ができた。サム警視達はチェリー・ブラウン達の元へ部下を向かわせた。また恐らく最後にドウィットと会っていたであろうマイクル・コリンズの所にも警察を向かわせた。またファーンは11時頃に車を走らせてどこかへ行ったというが、理由はわからないということだった。

  ドルリイ・レーン氏は結局ドウィットから話を聞く事ができなかった。そのためドウィットの部屋を調査していると、金庫の中に重要なものが入っている事が推測されたので、ジョーゲンズに金庫を開けられないか尋ねた。ジョーゲンズは、ブルックス弁護士が知っていると言うので彼に頼みなんとか金庫を開けた。するとそこには、「償いの用意をしておけ」と書かれたマーティン・ストープスという署名がされた手紙を発見する事ができた。

  チェリー・ブラウンとポラックスはホテル・グラントの同じ部屋に泊まっていた。中に入り、2人に話を聞いた。2人はフェリーに乗った事は認めたものの、目的等は話さなかった。荷物を捜索すると、チェリーのカバンからレヴォルヴァーが見つかった。一瞬これは凶器かと考えたが、ドウィット殺害に使われたのは38口径に対し、チェリーの拳銃は22口径だった事から、この日は帰る事にした。

  マイクル・コリンズの部屋には、警察が行くと「とうとう捕まえに来たか」という言葉を発し銃声が響いた。警察達は慎重に突入機会を伺い、中に入るとコリンズは倒れていた。自殺しようとしていたようだ。目を覚ますとコリンズにドウィット殺害を認めるように言うが、コリンズは知らないと言う。コリンズが持っていたのは、38口径の拳銃であった。

 

⑤マキンチャオの正体

  クェイシーに指示していたマキンチャオの捜索は、ウルグアイの領事に連絡する事によって分かった。あいにく領事が不在であった事から、1カ月程度の待つ事となってしまった。領事のホアン・アーホスは、マキンチャオの正体を語りだした。マキンチャオは、法務省の一員であり、マーティン・ストープスを追いかけてニューヨークに来ていた。マーティン・ストープスは、ドウィットとロングストリートが炭鉱を掘り当てた当時に、2人と彼の仲間のウィリアム・クロッケットに、ストープスが妻の殺害した所を見たと通報されたことから逮捕されていた人物である。ストープスは服役後12年が経過したころ、脱獄を行っており、ニューヨークに潜伏しているとの事を聞いた。マキンチャオはその後結局ストープスを逮捕するには至っていない。

  ドルリイ・レーン氏は最後にドウィットの殺害を行った凶器を探しに行った。サム警視に手伝ってもらい、コリンズが降りたと主張する駅から5分ほど行った川の底で見つかった。コリンズは駅から降りた後列車とは逆方向のホテルに向かっており、タクシーからもその証言は裏付けされている。ドルリイ・レーン氏は、これで全ての謎が解けた様であった。

 

⑥犯人逮捕

 ドルリイ・レーン氏は、サム警視に依頼をして、犯人を捕まえに行く事にした。サム警視がハムレット荘に迎えに行くと、準備をして出てきたドルリイ・レーン氏は何とロングストリートの格好で出てきた。これはもはや変装というレベルではなく、誰もが本人と間違えるほどの高度なものであった。

  ドルリイ・レーン氏はサム警視にブルーノ、それに何人かの警察とウィーホーケンのローカル線列車に乗り込んだ。すると検札に来た車掌が、死んだはずのロングストリートの姿を見て、驚きのあまりに動けなくなってしまった。サム警視達は彼に手錠をはめた。真犯人マーティン・ストープスは良く見知った人物であった。