君の名は。 新海誠 ネタバレ詳細 | 怠け者のつぶやき

怠け者のつぶやき

今まで勉強してこなかった怠け者が
今更だけど本でも読もうか、ってことで色々と
本を読んだりニュースを気にしたりしてつぶやいてます。

○詳細

  電車の中で、見知らぬ女性に声をかけられた。自分の名前も知っていた。自分が女性の事を知らないと言うと、女性は泣いてしまった。電車の中だったので、彼女は次の駅で人ごみに押し流されてしまった。別れる直前、泣きながら女性は自分に髪を結っていた紐を渡して言った。

  夢にしてはシリアスだと思ったが、もうその女性が誰だったのか、思い出す事もできない。目が覚めて身体を起こした立花瀧は、身体に妙な違和感を感じた。自分の身体を見ると、女性の身体になっていた。思わず瀧は声を上げた。

  次の日、宮水三葉は朝起きてから妙な視線を目にしていた。妹の四葉、祖母の一葉だけでなく、友人のテッシー、サチも皆昨日の自分がおかしかったと言う。何の話か分からない三葉は、ノートを見て固まる。そこには「お前は誰だ?」の文字があった。

  三葉は巫女の娘だ。父親は近く行われる町長選に現職として立候補している。今の時期は毎年行われる儀式の日でもある。さらに1カ月もすれば、1200年に1度と言われるティアマト彗星が肉眼で見られるなどイベントが多い。儀式とは昔から続く豊饒際で巫女が踊った後、米を噛み唾液と混ぜた酒・口噛み酒を奉納している。巫女の三葉と四葉はこの儀式の主役だった。三葉はこの儀式が非常に嫌だったが、なんとか終わる事ができた。

  三葉は、知らない部屋で目が覚める。起きた先で三葉は、タキと呼ばれる。携帯電話には学校に遅刻しているのを心配するツカサという人物からのメッセージ。慌てて学校に行く事にした三葉は外に出て現れた憧れの東京の風景に目を奪われる。迷いながらも学校につき、放課後には糸守町にはないようなお洒落なカフェに行く。自分の生活では考えられない様な事が起きていた。バイト先からのメッセージが入り、生まれて初めてのバイトをする。これもまたお洒落なイタリアンレストランだ。あまりの忙しさに面食らい、チンピラ風の客に難癖をつけられる事件にもあってしまう。クレームは、奥寺という先輩が対処してくれた。女性も思わず見とれてしまう綺麗な女性だった。クレームの対処から返ってくると、奥寺先輩のスカートが裂かれていたので、お礼に縫ってあげた。夜寝る前に携帯を見ると、簡単な日記が書いてあったので、三葉もこれに合わせて日記をつけておいた。

  次の日瀧が目覚めると、今度はちゃんと自分の体だった。友人の高木から、今日は普通だと言われ、バイト先では奥寺先輩と一緒に帰った事を男の先輩に責められた。三葉も自分の身体で目覚めると、前日の事を聞いてびっくりするのだった。ノートに書いてあった覚えのない自分の周囲の人間の相関図を見て、さらに驚くのだが、この結果、2人は身体が入れ替わっている事が現実である事を認識する。それからは週に2、3度入れ替わるようになった。お互いに話す事はできないので、携帯電話にメモを残す事にした。

  瀧はこの日も身体が入れ替わって、祖母の一葉と話をしていた。糸守町には、組紐作りや豊饒際の儀式などがあるが、これは繭五郎という先祖が風呂場の火で家事を起こしてしまった事から文書が燃えてしまい、なぜやるかは分からなくなってしまったそうだ。しかし形だけは残っているらしい。どうやらこの日は四葉と3人で山の上のご神体へ捧げものをもっていく日だそうだ。山に行く途中で、一葉から「ムスビ」の話を聞く。他と混じり、また合流し、全体として一つに繋がったものを、ムスビというそうだ。人とのつながりや、食事もムスビだそうだ。頂上に着くと、社がありそこで口噛み酒をささげた。一葉によると、これは三葉と四葉の半分だという。帰り道に四葉が、「そろそろ彗星が見えるかな?」と聞いてきた。いつかの朝食時にも彗星が肉眼で見えるほどに近づくというニュースを見た覚えがあった。何かを忘れている様な気分だった。気付くと、一葉が覗き込むようにして見ていて、「夢を見ているな?」と尋ねてきた。

  唐突に目が覚めた。LINEでメッセージが入る。奥寺先輩とデートに行く事になったようだ。三葉が勝手に約束をしてきたらしい。デートに出かけるが、緊張して上手く話す事ができない。それでも三葉の作ったプランに沿い、美術館に行った。美術館では、どれも同じ様に見える風景画が並んでいた。その中に、一つだけやけに懐かしい風景を見つける。飛騨、と書かれた風景は、夢の中の三葉の町と同じだった。奥寺先輩は、美術館を出ると別れを告げ帰って行ってしまった。瀧はこの事を三葉に伝えたかった。メモを確認すると、三葉は近くにやってくる彗星を見たがっているようだ。しかしそんなニュースはない。なにげなく覚えていた三葉の電話番号に電話をかけてみるが、繋がらなかった。これ以降、2人の身体は入れ替わる事はなかった。

  瀧は身体が入れ変わらない事が心配になってきた。記憶と地図を元に町の絵を描いてみる。大きな湖と、山とそこからみえる街並みだ。瀧は、この町を探す事にした。わかっているのは、飛騨にある田舎町だと言う事だけ。3日分の準備をして出かける事にすると、東京駅に奥寺先輩と司がいた。2人は瀧の様子がおかしいと思い、付いてくる事になった。飛騨に到着したものの、そこから先は人に話を聞くしかない。ただでさえ人が少なく、電車の本数も少ないため、探しても知っている人はいなかった。諦めムードの中、入ったラーメン屋の主人に駄目もとで聞いてみると、何と町の出身者である事がわかった。しかし主人は、「昔の」イトモリという不思議な話をしている。どうしても思い出せなかったこの名前がわかった喜びもつかの間、主人から、糸守町は彗星からの隕石被害にあった町である事を聞かされる。誰もが知っている、近年でも稀にみる大事故が起きたティアマト彗星の一部が落下した町だ。落下したのは3年前で、町のほとんどの人は亡くなっていた。

  信じられない瀧は、実際に糸守町に行った。廃墟となった町には確かな見覚えがあった。町民のほとんどは死んでいた。本当の話か疑う司に携帯のメモを見せようとするが、これがなぜかどんどん消えていく。まるで2人の話がなかったようになっていった。ティアマト彗星は、1200年に1度、地球に近づく彗星で、地球から12万kmという非常に近い場所を通過する。3年前にちょうどこの日を迎えたが、この時の隕石落下により神社を中心とした広範囲が瞬時に壊滅した。町は地表ごとえぐられ、直径1kmにおよぶクレーターとなった。最終的な犠牲は500以上で、町の3分の1以上の人が亡くなった。もちろん授業でも習って知っていたが、瀧は近隣の図書館に行き再度この事故の件を調べた。犠牲者の名簿を見つけた瀧は、その中にテッシー、サヤ、そして一葉、三葉、四葉の名前を見つける。途方に暮れていたが、この日は近くで泊まる事にした。

  宿で彼女の事を考えていたが、不思議な事に名前も思い出せなくなってしまっていた。それでも考えていると、ムスビの事を思い出した。神秘的な雰囲気のあの場所なら、何かつかめるかもしれないと本能的に思った。次の日の朝、瀧は1人で山の上の社に向かう事にした。隠り世、つまりあの世に通じると言う社に到着した瀧は、中に口噛み酒があるのを見つけた。ムスビを信じて酒を口にした瀧は、慣れない酒のせいでひっくり返ってしまった。そして気を失う直前に、天井に描かれた彗星の絵が目に入った。

  三葉の子供の記憶を夢の中で見た。その中で、瀧が奥寺先輩とデートに行った日、三葉が東京に行った事を知る。その夜、戻ってきた三葉は髪をバッサリ切る。そして翌日、彗星を見に行ってそのまま犠牲になった。三葉が亡くなる瞬間を、確かに瀧は見た。

  目を覚ますと、三葉の身体である事がわかった。この日は彗星が落ちて来る当日だった。瀧はなんとか三葉を、そして町民を救おうと考えた。一葉に会うと、自分が三葉でない事がバレた。どうやら一葉も同じ様な体験をしたそうだ。一葉はもう全て忘れてしまったようで、自分の体験と同じ様だった。そこで隕石が衝突する事を一葉に言ったが、これは信じてもらえなかった。

  瀧は学校に向かい、テッシーとサヤにティアマト彗星が衝突する事を話して、なんとか2人に話を信じさせることには成功した。3人は次に町民をどうやって避難させるかを考えた。テッシーが親の会社から爆薬をとってきて爆発を起こし、防災無線は周波数を合わせて乗っ取ることで避難させるという方法を思い付いた。隕石の衝突は宮水神社を中心に約1.2kmで、糸守高校はその範囲外である。姉が役場の放送担当をしているサヤが周波数を確認、テッシーは爆薬をとり、瀧は町長である父親に協力を仰ぐという計画となった。瀧は町長の所に行って、計画を伝えた。しかしこれは冷たくあしらわれてしまう。頭に血が上ってネクタイを締めあげた瀧に、町長は「お前は誰だ?」と疑問を投げかけて来る。父親の説得に失敗し、自身をなくしていた瀧は、三葉でない自分ではダメなのではないかと考える。そして三葉に会うために、社を目指す。

  一方で三葉も瀧の身体で目覚める。彗星が落ちた後の社で目覚めた三葉は、自分の体では見たことのない新糸守湖を見て、ティアマト彗星が落ちてきた事を思い出す。そして、彗星が落ちる前日東京に行き、瀧に会いに行ったことも思いだした。瀧も社に向かいながら、3年前まだ中学生だった頃に三葉が自分に会いに来ていた事を思い出していた。2人は確かに3年前に会っていた。しかし三葉の事を知らない瀧は、冷たい態度をとってしまったのだ。そのため帰ってから三葉は髪を短く切ったのだ。

  社に到着した瀧は、三葉を呼んだ。三葉も瀧を呼んだ。お互いの声が聞こえる。訪れたカタワレ時(黄昏時)のおかげか、2人は出会う事ができた。瀧の腕には、3年前にもらった組紐が付いていた。瀧は三葉に組紐を渡し、2人は名前を忘れない様にお互いの手に平に自分の名前を書こうとした。過ぎていくカタワレ時に間に合わず、瀧の手のひらには一本の横線を書いた時点で2人は自分の身体に戻っていく事になってしまった。身体が戻った瀧は、三葉への感情は思いだせるのに、どうしても名前を思い出せなかった。

  身体の戻った三葉は、急いで学校に戻り計画を始める事にする。テッシーが仕掛けた爆弾が、山の中腹にある送電塔を壊す。続いて防災無線でサヤが避難勧告を行う。しかししばらくすると役場の男性が来て、防災無線で待機の指示をする。どうして良いかわからない町民は、戸惑う。そのうちに、ティアマト彗星が見え始める。三葉はどうしたらよいか、必死に考えた。焦る三葉は、名前を思い出せない身体の入れ替わった男の子の名前を思い出すために、名前を書いておいた手のひらを見る。そこには、「すきだ」と書いてあった。何としても生きなければならないと三葉は思った。彗星は、予定通り糸守町に落下した。瀧は社で目が覚める。手のひらに書きかけの一本の線を見たが、何も思い出す事ができなかった。

  瀧は、知らぬ間についてしまった癖がある。その中に、手のひらを意味もなく見てしまう事があった。電車に乗ると「彼女」を探してしまうが、その彼女が何者かは分からない。恐らく何物でもない、これもただの癖である。瀧は大学生になっていた。高校の頃から、何かの物足りなさを感じていた。魚の小骨がのどに刺さったような、なんとなく満足しない毎日であった。就活も上手くいかない。この日は、奥寺先輩と会う約束になっていた。久しぶりに会った先輩は、5年前糸守町に行った過去を思い出していた。彗星が落ちた糸守町は、偶然にも町を挙げての避難訓練があり、奇跡的に町民の大半が被害範囲の外にいた。奥寺先輩は結婚する事になったそうだ。後ろの方で、なぜか懐かしい訛りをしたカップルの声が聞こえた。瀧は図書館に行き、糸守町の資料を見た。妙に懐かしく、はっきりと風景を覚えているのだが、それがなぜだかわからない。

  朝目を覚まし、右手をじっと見る。支度をしてから外に出かける。電車に乗っていると、なぜか一つの確信めいた思いが浮かぶ。併走している電車の中に、あの人がいる。その思いに駆られ、電車からおり、彼女の姿を探していた。細い小道をかけて行くと、階段があった。そこに彼女はいた。お互いゆっくりと近づいて行く。初めて出会うはずなのに、2人はお互いの事を良く知っていた。やっと出会えた彼女に、やっと出会えた彼に、2人はお互いに同時に聞く。「君の名は」と。

 

 

登場人物

立花瀧 たちばな たき

 本編の主人公。頭に血が上ると手が出やすく、勢いに身を任せる性格。毎日の日記をつけるなどマメな一面もあり、アルバイトに明け暮れる毎日である。同じアルバイトの大学、奥寺先輩の事が好きだが、バイトの男性陣の暗黙の了解として、抜け駆けをしない様にしていた。女性と話す事は苦手。

 

宮水三葉 みやみず みつは

 本編のもう一人の主人公。糸守町というド田舎に住んでいる事から、東京の大都会にあこがれている。宮水家の巫女である事等も不満があるよう。甘いものが好きで、ケチ。祖母の一葉はから教えられているため、手先は器用。思った事をストレートに伝える性格で、無邪気である。母の二葉は既に亡くなっており、町長を務める父親とは別々に暮らしている。

 

奥寺ミキ

 瀧のアルバイト先の、憧れの先輩。女性も羨む美貌と整ったスタイルで、アルバイト先のマドンナ的存在である。瀧が自分の事を好きな事を知っていながら思わせぶりな態度をとったり、司もいたが泊まりで出かける等、小悪魔的な性格が目立つ。

 

宮水一葉 みやみず かずは

 三葉の祖母。宮水家の歩んできた歴史を良く知る人物で、伝統を伝えている人物。組紐の作り方や、豊饒際での踊り、繭五郎の話、ムスビの事等を日々三葉と四葉に教えている。若いころ、自身も三葉と同じ様に誰かと身体の入れ替わりを体験しているが、どこの誰だったか、どんな事をしたかはもう覚えていない。

 

勅使河原克彦 てしがわら かつひこ

 三葉の高校の友人であだ名はテッシー。愛読書は月間ムーで、オカルトな事が大好き。いつも三葉とサヤと一緒にいるが、好きな女性がいるわけではないよう。坊主頭で、ウブで素直な性格から、瀧から絶対に良いヤツ、身体が戻ってからも友達になりたい、と思われる。彗星の落下から8年後にはサヤと結婚する準備をしている。

 

名取早耶香 なとり さやか

 三葉の高校の友人であだ名はサヤちん。テッシーの自転車の後ろに乗って登校している 幼馴染。甘いものが好きで、放送部に所属している。彗星落下から8年後には、テッシーと結婚する準備する。

 

藤井司

 瀧の高校の友人。遅刻する瀧に連絡をしたり、糸守町を探す瀧について行ったりと心配性で面倒見が良い。大学に行ってからも友人出会った様子。

 

高木真太

 瀧乃高校の友人。司とともに、いつも瀧と一緒につるんでいる。大学に行っても友人である。

 

宮水四葉

 三葉の妹。三葉よりも7歳年下だが、しっかり者で寝坊する三葉を起こしに来る。三葉が嫌がっている口噛み酒にも動じないどっしりとした性格でもある。

 

○感想

 映画がヒットしていると言う事だが、見に行く事が出来ないので、本を買って読む事にした。最初にPVを見た時は、どんな話なのか分からなかったので、ほとんど情報がないままに見る事になった。

 最初に物語を読んだ時、身体が入れ替わっているだけの間はただのラブコメ臭があり、特別面白いところもない様に思う。このまま実際に2人が出会って何かが始まるのだろうと思っていた。電話をしてみたが通じない、彗星の話題が噛みあっていない、という微妙な話の食い違いが、その後物語を壮大なものにしていく布石だった事には全く気付かなかった。

 今回の物語の肝となるのは、設定に納得がいくかどうかという点と、感動をさせるための誘導が露骨なので、これに納得できるかどうかであると思う。1200年周期に落下してくる彗星から逃れるため、宮水家は代々未来の人間との精神の入れ替わりが行われてきたという設定は、面白いのだが壮大すぎてやりすぎ間はある。好きな人の事を思い出せなくなるのは切ないが、感動させたいが為の設定とも言えそうだ。自分はこういった設定のやり過ぎ感も受け入れるタイプな様で、面白いと思いながら話を進められたのは良かった。糸守町に彗星が落下したと言う事を聞いた時には、そういう話の進め方なのか?と疑ってしまったほどで、三葉達が死んでしまった記事が見られた時には結構つらい気持ちになってしまった。携帯電話に残したメモが消えていくと言うのは、ちょっとやりすぎだと思ったけれども。

 キャラクターに関しては、性格を書こうと思ったのだがイマイチ書くことができない。瀧と三葉以外のキャラクターで、一番濃いキャラクターだったのは奥寺先輩だと思った。男性の理想を具現化させた様なキャラクターで、女性受けしなさそうだ。考えてみると、誰かと何かを話しているよりも、三葉と瀧が2人で話している、または考えている時間が圧倒的に長く、サブキャラクターは入り込む余地がないようだ。高木?に至っては、モブとほとんど変わらない、かろうじて名前が付いているという記憶しかない。

 とここまで書いていて、この話の良いところはと聞かれると、テンポの良さと、瀧と三葉への気持ちを高めていく全ての演出だろうと思う。やり過ぎなくらいがちょうどいい、と開き直ったくらい突っ走っているので、付いていければ結構感動するでしょう。逆に悪いところは、付いていけない人が一定数いるはずなので、この人達の置いて行かれた感から覚めた態度に成ってしまうであろうことだと思う。

 ここまで大ヒットした映画ではあるが、ジブリ映画の様な大衆向けの話には見えない。それでも特別な青春としての一ページを見せられて、若いころはこんなに無謀だったとか思えれば、この本・映画を見た価値があると言えるのではないだろうか?映画は映像が非常に綺麗と言う事なので、それも誘因になると感じる。