歴史の事を知らない上でこの本を読んで感じた事は、この時代の日本はかなり過激だったと言う事が一番印象的であった。総理大臣が暗殺される世の中なんて今では考えられない。それも、原敬、浜口雄幸、犬養毅、高橋是清(当時は首相ではない)…と1人や2人でもない事がすごい。実際に「1人1殺」なんて事を考えていた五・一五事件などもすごかったし、二・二六事件で分かった首相の影武者がいた、ということも衝撃的である。中国に対しては、満州事変や第一次上海事変など、中国人が日本に攻撃を仕掛けたと言う体で侵攻したり、上海事変の隙をついて満州国の建国を宣言したりやりたい放題である。さらには、蒋介石と会談の準備ができていたにも関わらず受けなかった近衛文麿などの失策も大きく影響している。
民衆にしても、本も読めず、テレビやインターネットどころかラジオすらなく、選挙権もないなど、今の生活とは完全に違っており、当時の人達との感覚の共有は無理なのだろう。アメリカに対する国民感情は良くなかった、という言葉も出て来る事が何度かあったが、それを今の自分が想像する事も難しい。
ともあれ第一次世界大戦後に新たにできた、現代にも通じる国際協調という考え方を日本が理解していなかった事が戦争の大きな火種だったのだろう。もしかしたら、日本やドイツは遅れてきた工業国として、広大な植民地を持っていたイギリスやフランスに嫉妬していたのかもしれず、同じ様に領土拡大をしたかっただけかもしれない。なんにせよ日中戦争、第二次世界大戦における日本の過失は非常に大きく、ここに日本の正当性などはない様に感じる。だがその中には、世論の恐ろしさ等も当然含まれているだろうし、マスコミなどに流されるとこのような間違った方向に国が動いてしまう例であると思う。自分も含め本を読まなくなってしまうと、物を見極める目、という物が身に付けられなくなってしまう。継続的に知識を吸収しなければならない。次は日本の戦争は妥当だった、という本を探してみてみるのも良いかもしれない。