無人の家で発見されなかった手記 -6ページ目

無人の家で発見されなかった手記

──ある素人小説家の陳述

 800字クトゥルー神話掌篇を何作か書きましたが、「手乗りクトゥルー」と併せてもうひとつ、詳細を書いておくべき作品があるような気がしないでもないような気がする今日このごろです。
 それは、「やれやれ、また魚か!」というお話。

 この怪作を考え出した経緯については、あまり詳細に書くと波風が立ちそうなので(とはいえ僕のブログ程度では、さざ波にもなりませんが)、ちょっとぼかしますが、以下の考えが僕の中にありました。

 某クトゥルー神話競作集、名だたるプロ作家がたくさん参加してるけど、どれもこれも魚人ばっかり出てくるな! それにこれ、ディープワン(深きもの)っていうより、ただの半漁人でしょ。本当にみんなクトゥルー神話好きなの? 魚人出しとけば神話作品になると思ってんの? また魚か! また魚か!

 はい、ぼかしました。ぼかしましたよー。某がなんなのかは、詮索しないでくださいねー。駄目ですよー。ダメ、ゼッタイ。

 それと、今回の掌篇公募でも、もしかしたら魚人ものは多いかなーという気もしてました。とはいえ、アマチュア陣のほうがむしろクトゥルー神話愛は濃いんじゃないかという予想もあったので、半漁人ではなく本格的なディープワン譚が読めるんじゃないかという期待もしていました。
 とはいえ、そんな中でディープワンもので目立つためには、こうするしかない! と知恵を絞った次第でもあります。

 こんな怨念思いが形を取って、ひとつの作品に仕上がりましたとさ。
 めでたし、めでたし。

 こうしてできた掌篇、計15作。これを全部送りましたよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、とばかりに。ここまで多くの作品を送った人って、他にいるのかしらん。いたら教えてください。
 そして間もなく、選考結果が発表されたわけです──。

 

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 ミッション:「手乗りクトゥルー」という題名の、800字掌篇小説を書け!

 そういうことになった。(陰陽師風に)

 何もアイデアは持ち合わせていないので、とりあえず風呂に入って、そのあとでゆっくり考えようということにしました。
 お風呂に入って、おちんちん等を洗いました。
 湯船につかって、おちんちん等を弄りました。
 風呂を出たときには、プロットができあがってました。
 さあ、あとは書くだけです。

 ……という感じで、本当に風呂に入っている間に話ができて、それを機械的に文字に起こした次第です。

 手乗り⇒子供のころ、手乗りインコに憧れてたなあ⇒飼っていたインコが僕にだけ尋常じゃないほど懐いて、結局手乗りになったなあ⇒子供のころといえば、よく遊んでいたトオル君は元気かなあ⇒いやトオル君は関係ない⇒手乗りといってもクトゥルーなんだからデカいはずだよなあ⇒そういえばトオル君の家では文鳥を飼ってたなあ⇒じゃあトオル君は手乗りハスターだ⇒クトゥルーとハスターは戦う運命だ⇒ウェーイ

 みたいな思考の過程だったような気がします。さすがにあまり覚えていませんが。

 書き上がった小説は、可もなく不可もなく、表題作として申し分のない、我ながら無難な作品になったな、と思いました。このときは。正直言いまして、自己評価は高くなかったのです。
 逆に自己評価が高かったのは「アイホートの迷路」でした。本当に、自己評価って信用できませんね(笑)。

 というわけで、以上、「手乗りクトゥルー」誕生夜話でした。

 次は「やれやれ、また魚か!」だよ。

 

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 続き。

 

 800字クトゥルー神話掌篇をいくつか書きました。とても楽しかったです。


 ……楽しかったはいいのですが、どうせ応募しても採用されないに違いないと確信していました。
 でも、せっかく書いた作品を無駄にはしたくない。じゃあ、ホームページに載せようか、ということになりました。
 当時、昆虫ミステリ等の作品を自分のホームページ「闇匣」に掲載していましたので、その一環として発表しちゃえばいいじゃん、と。
 で、どうせ発表するなら、全部の作品を合わせて、ひとつの掌篇集というスタイルを取ろうと考えました。
 となると、その掌篇集にタイトルをつける必要が出てきます。本の題名みたいなものですね。
 作品全体をひっくるめた象徴的なものがいいだろう、というのはすぐに思いつきますが、さて、どうしましょう。よく、短篇集なんかだと、収録作のうちひとつを表題作として、書籍タイトルにしているものがあります。これもそんな感じにしようかな、と思いました。
 以前、昆虫ミステリ短篇を6作まとめて、全体に『蟲籠の中の殺人』という題名を新たにつけて、応募したことがありました。今回はその反動です。収録作の中から、どれかひとつ、表題作を選ぼう、ということにしました。

 この800字掌篇という企画、もともとは〈ビーケーワン怪談大賞〉というものから派生したもので、優秀作は『てのひら怪談』なる書籍に収められているらしいです。
 では、パクらせていただこう!
 てのひらクトゥルー──だとそのまんまなので、さすがに捻ることにしました。私も莫迦ではありません。
 命名。手乗りクトゥルー
 ああ、いいですね。いい感じですね。まさにこの掌篇群に相応しい、象徴的な名称ではありませんか。

 さあ、では、「手乗りクトゥルー」を表題作にするために、「手乗りクトゥルー」というタイトルの掌篇を書こうか!

 ……順番が逆? 本末転倒? だから何?(特攻野郎Aチームオープニングのモンキーのセリフ風に)

 そんなこんなで、「手乗りクトゥルー」という名前のお話を考える必要が出てきました。
 どうしましょう。

 

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 続き。

 

 その後も一気呵成に短期間で次々に書きました。一太郎の文書スタイルも、一画面を20字×40行にしました。
 アイデアについては、新たに思いついたものもあれば、ストックから引っ張ってきたものもあります。
 

(それでは、お手元の『リトル・リトル・クトゥルー』をご参照ください)
 

 たとえば「世界を終わらす方法」はTRPGシナリオ用のアイデアですし、「三つの鐘」はMSXのRPGコンストラクションツールで使おうかと考えていた設定です(『Dante』というソフト。懐かしい)。アイデアは出し惜しみせず、使えるときに使っておかなければなりません。どうせ自分が思っているほどたいしたアイデアじゃないんだから。


「いえきゅぶおじさん」とか「Radio Free Yuggoth」なんかは、このとき捻り出したものです。ちなみに後者は、友人のブログのタイトルから想像を膨らませて話を創りました。「一歳」もタイトルが先で、あとから内容を考えたものでした。いずれも、ほとんど一瞬で書き上げたものです。まさに水を得た魚。活き活きしてましたね。


 それと、幼少のころよりゲームブックを嗜んでいた者として、史上最小のゲームブックを書いてみようかなどとも思い、「アイホートの迷路」という作品も書きました。800字という短さの中に、神話作品としての絶望感を閉じこめ、さらに、ゲームブックならではのギミックをふたつも盛りこんだ野心作(笑)です。このアイデアも、以前からゲームブック用に温めていたものだったりします。……まあ、これは評価されませんでしたけどね。

 何作か書いてみて、ふと立ち止まり、考えました。
 ──どうせまた、採用されないでしょ。

 後ろ向きですね。弱気ですね。いじけてますね。「くるまれて」以外、いっさい陽の目を見ることのなかった作品群が、僕の脳に直接囁きかけてくるのです。
 ──どうせ駄目だよ。判ってるでしょ? お前才能ないじゃん、と。

 ですよねー。駄目に決まってるよねー。ええ、判ってますよ。判ってますとも。
 たぶんこんな囁きに耳を貸さず書き続けられるような人が、プロになるんだと思います。
 そもそも、まともな人は囁きが聞こえないんだと思います。
 僕の場合は、早々に諦めていました。
 しかしながら、この気持ちがあったからこそ、生み出された作品があるんです。
 それは、タイトルを「手乗りクトゥルー」といいます。

 

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〈史上最少のクトゥルー神話賞〉──なんと甘美な響きでしょう。
 原稿用紙2枚、改行空白含め800字という制限の中で、いかにクトゥルー神話世界を表現し、読者を楽しませることができるか?
 短い文章の中で神話世界を構築することは、決して簡単ではないでしょう。蛸のオバケや半漁人もどきを出しさえすればいいなんていうもんじゃありません。何せ、かの東雅夫さんの呼びかけによる公募です。テーマも「クトゥルー神話」と明確です。マニアが納得するものでなければなりません。繰り返しますが、蛸や半漁人では駄目なんです。クトゥルーやディープワンでなければ。
 しかも、独りよがりで難解なものはNGです。読んでくださった方を楽しませなければなりません。たった800字でそれを達成することは、想像以上に困難でしょう。

 

 一応、募集時のURLを再掲。

http://blog.livedoor.jp/genyoblog-higashi/archives/6220215.html

 これは挑戦しがいがあるぞ、と奮い立ちました。
 これは僕のために作られた賞なんじゃないのか、とも思いました。
(正確には、無理矢理そう自分に言い聞かせてモチベーションを上げました)

 どうやら、ひとりあたりの投稿数に上限はない模様。
 であれば、書けるだけかいてやれ。
 今まで自分が培ってきた「俺のクトゥルー神話」を全部出しつくせ。

 そして早速パソコンに向かって、あっという間に書き上げたのが、記念すべき(?)僕の800字小説1作目「忠実なペット」でした。
 クトゥルー神話で何か書けと言われて真っ先に書いたのが、クトゥルーでもディープワンでもナイアルラトホテップでもなく、ティンダロスの猟犬という(笑)。まあ、邪神占いの結果が猟犬だったこともあり、何かと縁のある存在です。

 

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